第3話
「ということは、
運転手がいなくてもこのバスは
動いてるってことですよね」と岩寺が言う。
確かに現状このバスは70km程か、
結構な速度で動いている。
添西が突然、こんなことを言い出した。
「根本的に解決策を探そう」
「そんなことわかってるわ」と
堀江は怒鳴るように言う。
同時に前方の添西の席を蹴り上げる。
「ちょっとやめてよ」と岩寺が止める。
「一番最初に起きたのって誰なんだ?」
と前方の石井が聞く。
確かにと数人が頷いた後に、志摩が言う。
「おそらく一番初めは自分だ」
その時は、と後ろの席の力石が聞く。
「目が覚めたらずっとこの状況だった。
添西を叩き起こそうとしても
死んでいるように動かなかった」
「その時、水瀬くんはいたの?」と臼井が聞く。
「いや、いなかったかな」
私はあることに気がつき、それを口に出した。
「もしかしたら、生きてるんじゃないか」と。
この理屈からすると我々は運悪くあの時、
事故で亡くなってしまうが、
彼は運良く一命を取り留めたと。
「そんなことあるわけねえだろ」
と堀江が言う。
「いやでも、それは一理ある」と田中は言う。
「次に起きたのって誰になる?」と続いて水野が問う。多分私だと思うと臼井が言う。
「その時は志摩くんと私だけだから、
ほんとこんなような話をしてた、
何が起きたのか?って」
頷く志摩と目が合った。
ところで、自分を刺したのは誰だ?
と私は思った。
仮に運転手の水瀬だとして、
運転席からは距離はある。
それよりもなによりも
それどころではないだろう。
自分の運転してる車が
大きな事故を起こしてしまったのだ。
しかしながら気になるのだ。
最終回の犯人と同等に。
もうおそらく死んでいるので同等だ。
「この事故、計画されていたとしたら」
と添西が言う。
「何らかの恨みが俺たちに向けられて」
「そうだとしたら、
水瀬くんは何故助かったの?」
「わからない」と岩寺は言う。
「あのさ、」
と堀江が何かを話そうとしている。
「気づいてないんだったらそれはいいんだけど誰か一人怪しい人物がいる」と。
しばらく考える一同。
「え、誰?」と志摩は聞く。
「旅行の前にある文庫本を渡された。
シャーリイ・ジャクスンが書いた
『ずっとお城で暮らしている』」
志摩がその本を借りていたらしいので、
鞄からその文庫本を取り出した。
「この文庫本を渡したのは教授だ」
どういうことだ?と頭に浮かべると
前方の石井がわあと声を上げる。
どうした?とそちらを見る。
「水野さん、いなくなった」
Skeleton's 雛形 絢尊 @kensonhina
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