flos

@Kapy0820

第1話


1

「はぁはぁ、ふぅ」

廃ビル4階のとある冷凍食品庫までたどり着いた。

ハチノス居住区から地上までは約3キロ。地上には

白い浮遊している物体がわんさかいる。その中をかいくぐり必要な物資を調達するのだ。


「どうする茜、全部は運べないよ。」


「とりあえず量子化できる分だけ運ぼう、透子。大きいのはまた今度。」


「そうだね。」


そういうと化学繊維でできたポンチョの後ろにあるポケットの中からキューブ状の青白い物体を食品コンテナに当てた。そうするとキューブが様々な形に変形しながら少しだけ大きくなった。片手で何とか持てるくらいの大きさになったくらいで変形は止まった。


「ちっ、こんなもんか、早くずらかるよ。ちんたらしてたらアブラムシがくる。」


「わかってる、てかもう来ちゃったよ。」


「うわぁ、さすがに戦闘は避けられないか、ほぃ」


「サンキュ、1発閃光弾を打ち込んで逃げ道を確保しよう。」


「了解。」


透子の右手にはバズーカ型レールガンが握られていた。弾種は炸裂閃光弾。ホログラムサイトを覗き、対人中型ドローンアブラムシに向かって引き金を引いた。弾は一直線に打ち出され、ドゴン!という音をたて発射された。


弾は目標着弾前に十数個に分裂し、分裂した弾一つ一つがこちらも目を潰されるような閃光がビジッと弾けた。こちらにまっすぐ飛行するアブラムシは動きを数秒止まった。その隙にビルから飛び降りる。幸いビルはパイプがむき出しの旧式だったのでそれを使って降りれた。そのまま裏路地をダッシュして抜けていった。


「さっきのでわらわらやってくるよ!気をつけて!」


「わかってる、あのバイク借りよう!」


そう言って路地に置きっぱなしの電動バイクのバッテリーを取り外し、ポケットに入っていた四角いバッテリーをはめ込んだ。幸いアダプタは必要なく、すぐに起動した。キュイーン!!というアクチュエータ音が頼もしさを掻き立てる。そのまま2人はバイクにまたがり一気にアクセルを踏み込む。透子の真っ白い髪が後部座席の後ろへたなびく。その後ろから軽自動車くらいのサイズで白銀色の正四面体が追ってくる。

カーブに差し掛かる時僅かに減速したがそれをアブラムシは見逃さなかった。4枚ある面のうちひとつが開き、緑色のレーザーを天使の叫びのような轟音とともに打ち出した。が、バイクはギリギリまで横に倒れ、光線の真下をくぐり抜けた。抜けたレーザーは前方のビルに大穴を開け、その後大量の瓦礫を撒き散らした。


「しっかり捕まってろよ!」


ギアをあげる、モーターのアクチュエータが悲鳴をあげるがお構い無しにアクセルを踏み続ける。


瓦礫が頭上にメキメキと嫌な音を立てながら落下してくるが、間一髪高架橋の下にある細い災害時用の通路に入った。

だがアブラムシはさらに追ってくる。ついにバイクの後ろに憑かれ、一本道のトンネルのようなこの通路ではすぐに追いつかれるだろう。


「ちょっと、どうすんの。結構おってくんじゃん!」


「大丈夫大丈夫。次奴がレーザーを打つ瞬間に徹甲弾を打ち込め。」


「簡単に言ってくれるね。」


すぐに正八面体のアブラムシは上部4つの面を展開する。

内側に赤い光が反射していた。正確にはそれぞれの面が光を増強、収束させ指向性を持たせ操作しており、4枚展開するのは所謂、最大出力モード。かすれただけで戦車がドロドロに溶けるほどのエネルギーを持っている。しかし、狙いをつけるまでに約2秒かかる。通常アブラムシは郡をなして行動するタイプなのでそれほどアドバンテージにはならのだが、1体1では少しの隙になるのだ。


それを狙いエネルギーの溜まったアブラムシ内部に炸裂式エネルギー徹甲弾を打ち込む。バイクは300キロオーバー、標的は既に25メートルほどに接近されていたので打ち込むのは相当難しいのだが、サイトを覗かず、純粋な視覚に頼り類まれなる集中力でアブラムシの内部に着弾させた。


アブラムシ内部に反射していたエネルギーが指向性を失い、そのまま拡散した。反射板に乱反射したレーザーがまるで叫び声に似た甲高い音を立てた。


エネルギー徹甲弾はその名の如く熱エネルギーを持った粒子を弾丸に込め、重力波を内側からかけることで、粒子を拡散させる。着弾と同時に粒子が赤く球状に広がるのでこのような名前が着いた。


「いやっほーーい!!」


「笑ってる場合じゃないでしょ!私が当てたんだからね?!」


「わりーわりー!ほら!帰るよ!」


「んもう!」



2


「水と食料だ!お前たちよくやった!!これで2週間は持つぞ!!」

ハチノスの住人はまるで減ってしまった。鉄板とコンクリートでツギハギになった部屋、鉄パイプで出来た通路。元々は災害時の緊急避難場所だったのだが、GGS一斉粛清が始まった時、その様子は一変した。虫たちが入れないように入口は強固に閉じ、配管1本残さず全て塞ぎ空気さえ満足には吸えなかった。

「マギーはどうなった?13番通路で合流だったはずでしょ。」

「いっちまったよ。シブヤで人狩りにやられた。」

「あっそ。まぁいいわ。ブツはあるんでしょうね。」

「ああ。仕事はしたさ。」

マリクはそっとボロボロの赤いジャンパーの右ポケットから圧縮粒子キューブを取り出す。見る見るうちにそれはとても大きいトランクケースのような形に変形する。

「マギーのやつ。弾は240でいいと言ったのに。360もあるぜ。」

開くとライフルが一丁。2mはあるかと見える巨大なスナイパーライフル。

「アンチグラビティライフル。型式はAGR-15-4-3マーキア。シブヤの地下にあった公安の秘蔵の品さ。」

茜はそっと銃を手に取る。見た目程の重さは無かったがそれなりの重量感がある。

「あいつらに対抗できる切り札だ」



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