とある夏の怪談話

@masamune-4

第1話 始まりは突然に

僕は、花園(はなぞの)高等学校に通うごく普通の男子生徒、一川努(いちかわつとむ)。今年からこの花園高等学校こと通称花高(はなこう)に入学した。暑い夏の真っ只中、夏休みに入っているのだが・・・課題をするのに必要なものを学校に忘れてしまった。だからこんな暑い中自転車を漕いで、自分の教室に来ている。


努「ふぅ・・・」


課題をするのに必要なものを回収。帰ろうとした時だった。夏だというのに冷たい空気が僕の背筋を流れた気がする。恐らく自転車を激漕ぎした反動が来たんだろう。そう思いたいのだが、間違いなく風が吹いたように感じる。汗ならびったりと肌にくっついていて既に気持ち悪いことになっている。風の吹いてきた方を見ると、そこにあるのは美術室だった。ここで帰るべきだと思うのだが、好奇心には逆らえず近寄ることにした。誰もいないであろう廊下を一人歩いて行き、気がつけば美術室は目の前だった。一呼吸置き、ドアノブを回す。すると・・・




努「・・・え?」



僕は唖然とした。ドアを開けた先に待っていたのは、男女6人の生徒が椅子に座っていてこちらを一斉に見てきたからだ。ニヤリと笑う人、怪訝そうに見ている人、興味なさそうに視線を下に戻す人など様々だ。居たたまれなくなった僕は


「失礼しました」


と一言言ってから美術室を後にしようとしたが


「待て」


僕の背中から間違いなく聞こえた。金縛りにでもあったかの如く体が前に動かない。続けて声の主は語ってきた。


「お前が最後のメンツなんだ。帰るとは言わねぇよな?」


まるで意味がわからなかった。さっと後ろを振り返ると腕組みをしてこちらを見据えている一人の男がいることに気付いた。この集まりに召集された覚えはないが、この威圧感におされて返答が出来なくなっていた。


「おい隆司。新入りが固まっちまってるぞ。もう少し言葉を選んでやれよ」


ケタケタと笑いながら隆司と呼ばれた男にめがけて注意する。確かに僕はガチガチに固まっていてどうすることも出来なくなっていた。


努「あ、あの・・・僕はここに呼ばれた覚えがないんですけど、何かお知らせみたいなの届いてました?」


ダメ元で僕は彼らに聞いてみる。するとその答えはあっさり返ってきた。


「ごめんね。努くん・・・だったよね?私があなたの下駄箱に招待状を置いてきたんだけど、その様子じゃ見てないだろうね」

努「え?そうだったんですか?確認不足ですみません・・・」


下駄箱だったのか。机がわからなかったのだろうか?いずれにせよ、済んだことは仕方ない。僕は空いている席に着いて、彼らの動向を窺うことに。招待された覚えも何もないが。

あれこれ考えても仕方ない。腹をくくろう。僕が着席をすると黒髪が長い女の人が口を開いた。


「これでみんな揃ったわね。それじゃあ、始めましょうか」

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