第40話 こうして俺は幸せに生きることへと進む



残る王国は魔導王国のみだ。


魔導王国は王国とあるが実際は辺境都市くらいの大きさしかない。人口も1000人に満たないくらいだ。規模としてはかなり小さい。


しかし住民のほとんどが魔法使いだ。例外は魔導王国で生まれた子供くらいのものだ。その子供も将来は魔法使いになることだろう。


魔導王国は空に浮かぶ、天空の要塞。魔法使いたちが住む、空の楽園。


禁忌を恐れぬ、真理の探究者たちの集まり。


それが魔導王国である。元々は大地にある国だったが、魔法の研究で作った天空要塞で研究を始めたのが切っ掛けで生まれた国だ。


優れた魔法使いが空に昇り、大地の国が滅びた国だ。


俺たちはそれを滅ぼすために空に飛ばなければならない。


色々考えたが、結局俺が変身して飛んでいくことになった。


俺は体の大きさをかなり大きくする。その上で密度を低くする。そうすることで空に飛び易くする。


大きな浮力を得るために体を大きくし、飛ぶために軽量化する。結果密度が低くなるわけだ。


最低限の強度は残しているため、シズクたちが上に乗ることは問題ない。


俺は全長が50メートルの四肢と翼を持つ竜に変身する。鱗は金属でできており、それなりの強度を持っている。


魔法でしたから風を受けて空に浮かび、魔導王国を目指す。


俺は魔導王国を目指して、空を飛んでいく。背中にはシズクたちが乗っており、攻撃などの対応はシズクが行うこととなっていた。



******



魔導王国がどこを飛んでいるかの情報は、王国で処分した『十大仙人』の一人から教えてもらっていた。


それを利用しても、すぐに魔導王国は見えてこない。しばらくの間、空の上を楽しむことになった。


鳥たちは俺を警戒して、近付くことは無い。空飛ぶ魔物がいたとしても、俺を襲うということは無いだろう。


空の上は順調であった。空の旅を十分に楽しんだ結果、目的地である魔導王国が見えてきた。


それと同時に魔導王国から発せられる魔力も確認できた。これは天空の要塞の動力となっている魔力だろう。


確実に『竜』のものだ。『竜』の魔石を使い、天空要塞を作成したに違いない。


そしてそれ自体が『魔法障壁』となっていた。これは恐らく俺たちを警戒して張られたものだろう。そうでなければ、あんな高出力の『魔法障壁』を常時発動しているとは考えにくい。


『竜』の力で守られた要塞か。少し面倒だな。


俺は『念話』を魔法で使い、シズクたちに話しかけた。


《あれは『竜』の力で空を飛んでいるな。さらに『竜』の力で守られている。

 正面突破はかなり面倒なことになりそうだ》


《『竜』の力は魔導王国全体を囲んでおり、特に弱点らしきものもありません。

 残念ながら、正面突破しかないと思いますよ。

 もしくは何時になるか分かりませんが、『魔法障壁』が消えるのを待ちますか?》


シズクが状況を判断し、『念話』で回答した。


《……待つのは無理だな。本当にいつ消えるかは不明だ。

 消えるかどうかも分からない。

 なら正面突破しかないか》


《ですね》


『竜』の力は巨大だ。その力に果てがあるのかも不明である。そのため長期戦は無駄だと判断する。


現在の状態を力づくで突破する。それしかない。


強力なシズクの『魅了』もあそこまで防御を固められていたら、流石に通用しないだろう。もし通用するとしても、こちらが無事である保証がない。むしろこちらのほうが危険かもしれない。


《全力で突撃する。全員、防御を固めろ!》


俺はシズクたちに告げると、自らの後方へ魔力を集中させる。後方から炎を噴射させて、スピードを出して突撃する予定だ。同時に前方へ『結界』を生成する。


これで準備は整った。恐らく全力でぶつかれば、魔導王国の『魔法障壁』を突破できると思う。


《行くぞっ!!》


確信はないが、俺は突撃を敢行した。



******



勝負の結果はギリギリの勝利といったところだろう。俺たちは何とか魔導王国の内部に侵入した。


一番外部に侵入した。いや、一番外部にしか侵入できなかった。


それだけ『魔法障壁』が強固であった。侵入できずに墜落していても、おかしくなかった。


ともかく内部に侵入することができた。なら行うことは一つだけ。


殲滅だ。


内部には『魔法障壁』が感知できない。もしくは中心付近にはあるのかもしれないが、大部分には無い。


シズクが『魅了』を発動させる。俺たちは『結界』で身を守りながら、中心へと向かっていく。


途中で何人か、『魅了』で狂っている者たちがいた。それらを処分しながら、俺たちは進んでいった。



******



ある程度予想していたが、中心付近は『魔力障壁』によって守られていた。中には数名の魔法使いがいるのだろう。


「中に入ることは困難だな」


元の姿に戻った俺が、周りを見回しながら言う。


「……確かにこの奥を中心にして、球体上に『魔力障壁』が張られています。

 『魔力障壁』をどうにかしないと、中には入れませんね」


周辺を調査していたクズノハが断言する。


どうやらこの奥から半径5メートル前後の球状に『魔力障壁』が張られている。それを何とかしないと奥に入ることができない。


「……まず奥に入ることはあきらめよう。

 この『魔力障壁』を突破するのはまず無理だ」


かなりの勢いをつけて突っ込んで、外側にあった『魔力障壁』はギリギリで突破した。『魔力障壁』は大きさが大きくなるほど、脆くなるはずだ。


そのため目の前にある『魔力障壁』は、外側にあったものより強固なはずだ。そんなものを突破しようなんて、不可能に近いだろう。


ならあきらめるしかない。


「俺たちにできることをするしかない。

 まずは魔導王国のこの『魔力障壁』の外側を徹底的に破壊するぞ。

 全てを地上に落とすつもりで、徹底的に破壊しろ」


俺たちは今できることをする。そのため外側を破壊することにした。


鉄壁の守りによる籠城作戦。この作戦には致命的な欠点が存在する。


それは補給がないことだ。


魔導王国自体は自給自足を行っていた。作物なども魔力供給によって魔導王国内で行っている。


水の生成くらいは魔法使いなら出来て当然の技能だ。


しかし中心部で作物を作っているとは考えられない。水は何とかなるかもしれないが、食料はどうにもできない。


俺やシズクのように魔力を食らって生きているならともかく、そうでない者は食料がなければ生きていけない。


多少の蓄えくらいはあってもおかしくないが、食料の生産はまず無理と見て間違いない。なら俺たちの方針は兵糧攻めだ。


『魔力障壁』の外側を破壊することで、食料の供給を完全に断つ。そうすればいずれ外に出ざるを得ないだろう。


俺たちはそれを待てばいい。多少の長期戦も覚悟すれば、決して分が悪い勝負ではない。


少なくとも『魔力障壁』を破壊するよりは、現実的な手段といえる。


こうして俺たちは『魔力障壁』の外側を破壊して、気長に待つことにした。



******



どれくらいの時間が経ったのだろう。最初から数えていないため、その辺りは不明である。


カエデとターニャとクズノハは食料を調達するため、既にこの場から離れていた。外側の破壊も無事に終わっており、ここには『魔力障壁』と俺とシズクのみが存在するだけである。


今のところ特に動きはない。空に浮かぶ『魔力障壁』が風に流されているだけである。多少俺たちで調整して、現在地は神聖王国があった所の上空である。何かあってもここなら大丈夫だろう。


あとはこの中を破壊すればすべてが終わる。全てが終わり俺はこの世界の中でのんびりと生きていけばいいだけだ。


俺は既にこの世界の住人だし、エルフドワーフ連合国で受け入れられている。多少の不便はあるだろうが、問題なく生きていけるだろう。


「……もう面倒ですし、地中の奥深くに埋めますか?」


シズクが急にそんなことを言い出した。


「大地の奥深く、それこそマントル層まで埋めればもう出てこれないのではないですか?」


シズクの考えは一理あるが、却下である。


「もしもが起こった場合危険だ。諦めて見張ることにしよう。

 それかこの『魔力障壁』に干渉する術でも挑戦するか?」


俺は『魔力障壁』に干渉することを挑戦してみようと思った。他にすることがない。


なら新しいことに挑戦してみてもいいだろう。


それなりの時間をかけて、俺は干渉する術を作り上げた。そして『魔力障壁』を無力化して、奥に行けば複数のミイラ化した死体があるだけであった。


どうやら食料の取り分で揉めて殺しあったようだ。俺たちは動力源の魔石を回収して、残りを全て塵に変えた。


こうして全てを終えて、俺は地上へと戻った。





******



最後までお読みいただき、ありがとうございました。

申し訳ありませんが、自分の限界です。

途中でやめようと思いましたが、一応最後まで書き切ることが出来たつもりです。

内容は酷く、自分の力不足を痛感しております。

近々新作を投稿する予定です。

酷い内容かもしれませんが、そちらについても見ていただければ幸いです。


本当にありがとうございます。



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式神『鋼鉄』異世界記 ~担任とクラスメイトを犠牲にする異世界召喚~ 金剛石 @20240531start

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