第3話 『俺は、この世界の狂気を世界で一番理解した。1位らしい』

 目覚めると、俺は知らない天井を見上げていた。

(転生したのか──?)


 あたりを見てみると……あれ? 見れない──なんでっ? ていうか身体が思うように動かない。 首が全く動かん。


 まさか……さっきのは夢で、病院で動くことが出来ない今の俺が現実……? 

 まじかよ勘弁してくれっ──身体を動かせないのが一番つらいのに。


 最悪の事態を想定してうろたえていると、白髪の若い女性がのぞき込んできた。


(誰だ? ナース?)


「──ぁ──ぇ」

 

 女性が俺の方を見て微笑みながら何かを言っている。何を言っているのだろうか。

 

 聞き取りづらいし、全然分からない。

 

「──ぃ────」


 すると、女性が俺の方に両手を伸ばしてきた。なんだよ、なにするんだ。

 てか手……めっちゃでかくね?


 近づく程に視界は女性の手で埋め尽くされる。初めての異様な体験に恐怖すら覚える。

 と──思っていたら女性に抱きかかえられた。


 ……なる程。もう分かった。

 流石に分かりますともええ。


 俺は今──赤ちゃんなんだろ?



 半年の月日が流れた。



 どうやら本当に生まれ変わったらしい。転生直後は、赤ちゃんの身体に全く慣れずに不便過ぎてハゲそうだった。もうハゲてるが。


 記憶に関しては、前いた世界の記憶と俺が今いる世界の情報が混同して、必要な情報を上手く抜き出す事が出来なかった。


 だが最近はこの赤ちゃん脳も上手く使えるようになってきて、今いる世界の情報をある程度調べられるようになった。


 この世界は当然異世界。言語も違うし、服装もなんか違う。


 ただ、かなり違う所がある。それは文明が発達している事。農業、工業、建築、土木、電気、機械──全ての仕事が人間ではなく、ロボットが行っていること。

 

 どうやらここは超ロボット化社会らしい。


 仕事や家事も、もちろんロボットがやる。俺達人間がやれることは、せいぜい種を絶やさない為に子供を生むか、ロボットを動かす技術者になって働くか。


 つまり──ほぼニートってこと。

 だから、皆してゲームをやっている。ゲームしかやることが無いのだろう。

 

 異常も異常に、ゲームで順位を決める狂気の世界になってしまったのだから。


 カードゲーム、VRゲーム……何々ゲームと名付けられている物全てに、この世界の住人は順位を決める。


 順位を決めれば、必ず1位と最下位が存在することになる。勝者と敗者。


 複数人の場合は、ルールで変更可。


 狂気はここからだ。


 3年たった。もう歩き回っても大丈夫だろうと、母親に内緒に外へ出てみた。夜中だ。


 なにが狂気か……俺は自分の頭を疑ったよ。けど、現実でも見てしまった為に信じるしかない。


 路地裏で口喧嘩をしていた若者は、ゲームで白黒つけようや……と、この世界のヤンキー見たいな奴に言われていた。二人は何らかの理由で喧嘩をしていたらしい。


 ゲーム……その単語が出てくるなんて、かわいいじゃねぇか。


 なんて思っていた時期が俺にもありました。


 俺は最初から最後まで、やり取りを眺めていた。あまりにもゲームという意外な展開が面白かったからだ。


 若者も活発で、名前をフルネームで喋って「来るなら来いよ」と煽っていた。


 そしてヤンキーっぽい奴は、まるで詠唱のように言った。


『申請──アルダ・ヘルツに10の誓約に基づいて決闘を申し込む』


 続いてアルダ・ヘルツも詠唱っぽく言った。


『承諾──10の誓約に基づき決闘を受理する。内容はババ抜きだ』


 おいおいなんだこりゃ……ただの仲良しお遊びかよ。見る価値なくなったな。帰ろ。


 既にババ抜きがスタートして5分経過、つまんなくってきたので帰ろうと背を向いた瞬間──怒声が聞こえた。


 なんだ!? って振り向いたらヤンキーが両手を地面につけて土下座してるじゃありませんか。


 しかも、めっちゃ怒っている。負けてそんなに悔しいのだろうか。


 子供かよ。と、思っていたらその理由が明らかになって、俺は狂気を感じた。


 勝者──アルダ・ヘルツは、いきなりヤンキーの顔を掴んで殴りだした。


 気が済むまで、今までの鬱憤を晴らすかのように。ずっと──殴る蹴る。


 しかもヤンキーは逃げない。受け入れて、ただ時が過ぎるのを待っているようだった。


 彼は殴る前何かをボソボソと喋っていた。

 それがきっと今している事なのだろう。


 その勝者は、敗者をサンドバックにして、ある勝者は、敗者(女)を性処理道具にしていた。

 

 この世界で勝者は敗者に対して、何でも命令出来る。そして敗者は必ず命令に従わなければいけない。


 さらに悲しかったのは、ヤンキーは自分の娘が病気になり、治療費を誰かから奪うために、このような行為に及んだと。


 治療費なんて、この世界じゃ払ってくれない。だって税金を納めていないから。


 殆ど働いていないから、ろくな治療も受けられないし、食べ物だって配給制。


 一部の貴族らしき奴等しか、まともな医療機関を使えない。


 娯楽過多。ストレス過多。自由不可。


 一見、ロボットが何でもしてくれて、しかもゲームがやり放題の平和な世界。


 でも実際は他人から物を奪い、奪われる。


 弱肉強食のデスゲームの世界。


 俺は、この世界の狂気を世界で一番理解した。1位らしい。

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何事も順位を決める世界で、1位キラーになった俺。 ゆりゅ @yuryudayo

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