第2話 『異世界転生を果たす。人類初、1位らしい』
即死。だった、痛みも苦しみも感じない程に。それほどまでに──追い詰められていたのだろう。
地面を削りながら血で染める。俺は最後の願いを胸に秘めながら無様に死んでいった。
『もし生まれ変わったら、1位には絶対負けないような……天才に生まれたい』
『その願い、私が叶えましょう──』
意識が暗闇に落ちていく。その時、一筋の光が差し込み俺を照らした。
覚醒。はっと目を開ける……とあたり一面真っ白の異様な場所。
はっ……? ここ何処だよ。俺は確か、車に引かれて死んだはず。まさか、死後の世界ってやつか? まじかよ。
俺──死んだのか。
「パンパカパーン! おめでとうございますっ! あなたは異世界転生の加護を受けるちょー特別な人間になりました!」
受け入れ難い真実に呆然としていると、何者かが真っ白の所から突然現れる。そいつはアホっぽい子供の声で話しかけてきた。
「……誰だお前……幼女?」
「ムッ……違います。私は神様です! これでも私は万は生きているんですよ」
は、こいつ今なんつった? 神? 万は生きてるって……ていうか異世界転生って──
「あなたは死にました。そして──転生してもらいます」
短く無機質な声。彼女から突如として出てきた、異様なワード。俺は悟った……ここは普通じゃないと。
「どういう……意味だよ。転生って」
「あなたの人生は──とても可哀想。普通は善悪に基づいて、生まれ変わり。つまり第二の生を受けさせるのですが……あなたは特別です」
艶のある白髪。白色のワンピース。白色の天使の翼。真っ白のセカイで生きる神様。
彼女は、俺の人生を可哀想と述べた。
神様もそう思うんだな。思い返してみれば、確かに可哀想かもな。
生まれた時から英才教育を受けてきた俺は、どうやら才能があったらしく、ピアノや書道、数字や英語。習った全てにおいて天才と大人達にもてはやされた。
でも、そんな栄光も小学校卒業と同時に粉々に砕け散った。テストでは1位なんて取れたことが無いし、今まで習ってきたものだって俺より上が居た。
何をやっても1位を取れず、天才だと思っていた俺は──凡人だと痛感させられた。
両親は俺に期待してた。俺もそれに応えようと必死に努力した。時には殴られて──酷い時は半殺しだったり……でも、俺はその行動は愛情から来るものだと信じていたから、ずっと頑張った。
まぁ全て無意味になったけどな。
「あなたの願いを、私は転生という形で叶えてみせましょう!」
「へぇーそりゃ好待遇だな。俺の願ったセカイに送ってくれるってのか?」
「はい……あなたの望むセカイに、あなたの望む条件で叶える事をお約束しましょう!」
140くらいの幼女(?)は、胸を張って鼻高々に喋った。
「あなたの願いを思い浮かべて下さい。より具体的に詳細にお願いします」
「わかった」
目をつぶり視界は反転、真っ黒に。望む願いを、欲望を、ありったけの願いを思い浮かべる。
俺は──1位に勝ちたい。
もう負けたくなくない。
誰にも邪魔されずに生きたい。
普通に平凡に生きたい。
スキル──『1位キラー』を獲得。
戦争がない世界に行きたい。
なるべくライフラインは整ってる世界にして欲しい。
異世界での必要知識を覚えさせてから転生して欲しい。
基礎装備は身につけて欲しい。
このくらい……かな? ちょっと欲張り過ぎたか?
「あなたの望むセカイ、見つかりました」
無機質な機械音に疑問を持ちながら、俺は目をゆっくり開ける……と真っ白のセカイに合わないPCが空中に浮かんでいた。
はっ……PC? 随分と現実的な物が出てきたなおい。神様が──なにか調べてる。
「あの……何してるんですか?」
「……へっ!? ちょ、ちょっと何で目を開けてるんですか! まだ開けてなんて一言も」
集中してPCを見つめている幼女、もとい神様に短い文で話しかける。
すると一瞬きょとん顔を作り、状況に気がついたのか今度は焦り顔を浮かべる。
はは~ん、そういうことね。神様ともあろうお方が検索しないと、俺のセカイが分からないんだ。
俺はニヤニヤした顔で、神様とやらを見る。
「むっ……なんですかその顔。なにか問題でもあるんですかっ」
「いやぁ~べつに〜」
「なんですかっ! ぜったいっ! なにか! ありますよねっ!」
神とやらはリズミカルに地団駄を踏む。
本当に神かコイツ……見た目どうりガキだな。
「それで……俺の望むセカイは見つかったのか?」
「んんっ。はい見つかりましたよ。あなたが望むセカイが」
彼女は咳払いをして不服そうに答える。
「スキル──『1位キラー』は何事も順位が決まる世界において、1位にのみ必ず勝つ事が出来ます」
「1位のみか。無双ってわけじゃ無いな」
「願いは適応されました。あなたが望む世界で、あなたが思い描くストーリーをぜひ実現してみて下さい」
そう言うと神は言った。
『神秘レイ──何事も順位が決まる世界へ転生。世に秩序と平穏があらんことを』
神の威厳がひしひしと伝わる。俺は──見 惚れたのか目が離せなかった。
すると足元が虹色に光る。下を見ると、そこには魔法陣らしきものが。
「これは!?」
「転生用魔法陣です! 今から転生させます! 心の準備は良いですかっ!」
「えっちょっ、たんまたんま! まだ詳しく聞きたい事が──まぶぅ!」
眩しくて目が開けられない。そして身体が無重力のような浮いた感覚になる。
マジで転生するのか俺……でも、
そして俺は、無事に異世界転生を果たした。人類初、1位らしい。
何事も順位を決める世界で、1位キラーになった俺。 ゆりゅ @yuryudayo
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