どうぶつクッキー

雨世界

1 わたしたちはこれからどこにいくんですか?

 どうぶつクッキー


 わたしたちはこれからどこにいくんですか?


「わたしたちはこれからどこにいくんですか? お母さん」と小さな娘が言った。

「とっても楽しくて、わたしたちがしあわせになれるところだよ」と若いお母さんはにっこりと笑ってそう言った。

 二人は手をつないでゆっくりと道の上を歩いている。

 それは真っ白な道だった。とても長くて、まっすぐで、真っ白な道。そんな道を二人は手をつないで歩いている。

 二人の荷物はとても少なかった。小さな娘は背中にうさぎのような動物の顔の形をした小さなリュックサックを背負っているだけで、若いお母さんも大きな旅行鞄を一つだけ手に持っているだけだった。あとはなにももっていない。

 若いお母さんは頭に大きな白い帽子をかぶっている。ゆったりとした白いワンピースを着ていて、足元は麦で編んだサンダルだった。

 若いお母さんはその長くて美しい黒髪を赤いりぼんで結んでポニーテールの髪形にしている。(歩くたびにしっぽみたいにゆらゆらとゆれていた)

 小さな娘はやっぱり白い服を着ていて、ねこっぽい動物の顔が描いてある半そでの上着とスカートとその下にズボンをはいている。足元は白い運動靴だった。

 小さな娘は若いお母さんと同じように、おそろいの赤いりぼんで結んで、その(お母さんににている)美しい黒髪をみじかいポニーテールにしていて、小さな白い帽子をかぶってる。

 二人はもうずいぶんと長い間、その道の上を歩いていた。(ときどき、道の途中に白いベンチがあったから座って休憩していた)

「お腹がすきました。お母さん」と小さな娘が言った。

 若いお母さんは白いワンピースのポケットの中からチョコレートを二つ、取り出すと(きっと、お腹がすきましたというと思っていた)「はい。どうぞ」と言って優しい顔で笑って小さな娘に手渡した。

「どうもありがとう。お母さん」と嬉しそうな顔で笑うと、小さな娘はカラフルな色をした包み紙をとって、その木の実のようなチョコレートを一つ、口の中に放り込んだ。(包み紙はお母さんがポケットの中にしまった)

 もぐもぐと幸せそうな顔で小さな娘はチョコレートを食べる。

「お母さんもチョコレート食べますか?」と手のひらの上に残っているチョコレートを見せながら小さな娘は言った。

 若いお母さんは「わたしは大丈夫だよ」と言ったので、小さな娘はもう一つのチョコレートをさっきみたいに口の中に放り込んでもぐもぐと食べた。

 そんな小さな娘を見て、若いお母さんは幸せそうな顔でまたにっこりと笑った。(そのあとで、口元のチョコレートを白いハンカチでふいてあげた)

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