土埃

雛形 絢尊

第1話

一滴一滴と滴り落ちる水。

天井部分にある大きなパイプから

来ているだろう。

一滴、また一滴と。

ビーカーに水が溜まった。

水面が揺れる水平の波。


パイプ椅子に腰をかけた男は声をかけた。

「はい、ビーカーに水が溜まりました」

再び男はビーカーの水を床にこぼした。


ぽたぽたとまたビーカーに水が溜まっていく。

それはそれは速い速度で水が溜まっていく。


市営立体駐車場の4階、

西部劇で流れているような音楽が

孤独を彷彿するように流れている。

閑散としたその場所では吐き気を

催すような異臭が漂っている。


それでもぽたぽたと水は垂れてくる。

再び波を打つ水面。


一台のパトカーが静かに現れたのはその2分後。


「もう観念したぞ」

と立ち上がった男は両手を広げた。

それはそれはだらしない素振りで。

銃を向けた警察官は後ろから忍び寄る。

「重力によって加速していくが、

空気抵抗と釣り合えばそれ以上は

加速しなくなる」

「何を言ってるんだ」

「要するにここからは、抵抗するってこと」


いくつかの柱に隠された時限爆弾が炸裂した。

ほぼ同時に光を放った。

不間隔に崩れ落ちるコンクリート、

無造作にまた彼は銃をこちらに向ける。


揺れて波を打ったビーカーは

いつの間にか灰色になっていた。

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土埃 雛形 絢尊 @kensonhina

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