生け花日和
金森 怜香
第1話
ある秋の曇りの日。
私はホームセンターを訪れた。すっかり涼しくなってきたので、そろそろ夏は封印していた趣味を再開したいと思い、材料を買いに来たのである。
「さて、今日はこれとこれを」
選んだ花は青紫のリンドウに淡いピンクのスプレーカーネーションである。
夏の間は封印していた趣味は生け花で、夏の間は花がすぐに傷んでしまうので、生け花をするのは気が引ける。
その為、私は生け花をするのは決まって秋から春の間だけである。
そもそも、なぜ生け花を趣味にしたのかと言うと、学生時代に茶道部所属だった上に、高校三年生の時に茶華道の授業があったのである。
授業は隔週で茶道、華道のローテーションだったが、高校生の時はセンスがからっきしで余り楽しい授業とは言い辛かった。
しかし、やっていく間に何となく楽しい、器に生けられていく花の姿を見るのが楽しく、華道も好奇心に代わっていた。
高校を卒業し、専門を経て社会人になってから、本を買って本格的に独学で勉強を始めた。
独学をして、初めて生けたのは母の日に送った母へのブーケだった。
母の日だから、メインの花を真紅のカーネーションに決めた。カーネーションは他の花より少し短めに茎を切り、他の花や葉は長めに茎を切って、カーネーションに添えるように生けていた。
完成した花瓶を見て、母が驚いていたことはよく覚えている。
学生時代、学校祭で生け花を見た時はセンスがないと笑っていた母だが、しっかりと勉強し直して生け花を作ったら、別人が作ったかと思ったと大層驚き、出来を褒めてくれたものである。
春はとても色とりどりの花を生けるが、秋になるとリンドウが出回っている時はをよく選ぶ。
私自身、リンドウの花が好きなのである。
リンドウには、スプレーカーネーションや小菊、カスミソウなどといった小さめの花を添えるのがやはりバランスよく見えて気に入っている。
お目当ての花を買い、家で早速花を花瓶に生ける。
その花瓶は、以前日本酒が入っていたオシャレな瓶だ。
母に捨てないよう頼んで取っておいたお気に入りの瓶に水を入れ、花の茎を斜めに切ってゆっくりと花を挿す。
何度も微調整を繰り返して、ようやく花の位置が決まった。
小さな瓶にもリンドウの先を切ったものとカーネーションで避けたものを生ける。
生けた花は玄関とキッチンに置いてある。
バラのように香りの強い花ではなく、カーネーションもリンドウも、あまり香りがしないから食卓に飾っていても食事の邪魔にはならないだろう。
花はやはり、あるだけで空間を少し明るくしてくれる。
しかし、まだまだ改善の寄りの方が大きい。
改めて、もう少し勉強しつつセンスを高めて生け花を続けたいものだ。
生け花日和 金森 怜香 @asutai1119
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
香りに誘われて/金森 怜香
★0 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます