【恋愛短編小説】あの夏、君と読んだ最後の物語(約7,200字)

藍埜佑(あいのたすく)

【恋愛短編小説】あの夏、君と読んだ最後の物語(約7,200字)

●第1章:邂逅


 六月の雨は、どこまでも灰色だった。鉛色の空から降り注ぐ雨粒が、病院の白いコンクリートの壁を濡らしていく。その音は、まるで誰かが静かに泣いているようにも聞こえた。


 霜取り蒼空は、総合病院の屋上の手すりに両手をかけたまま、ぼんやりと遠くを見つめていた。十七階。この高さから身を投げれば、きっと一瞬で全てが終わるのだろう。そう考えると、不思議と心が落ち着いた。


 初夏の風が、蒼空そらの制服の襟元を揺らす。シャツは雨に濡れ、冷たく背中に張り付いていた。その感覚さえ、どこか遠くのことのように感じられた。


「どうせ、誰も気づかないさ」


 呟いた言葉は、すぐに雨音に飲み込まれた。まるで、この世界が自分の存在を否定するかのように。


 三年前、父は何の前触れもなく姿を消した。借金取りが家に押し寄せてきたのは、その一週間後のことだった。母は必死に夜の仕事を始め、昼は派遣社員として働き始めた。家にいる時間はますます少なくなり、小学生の弟の世話は全て蒼空の役目となっていった。


 今日も弟は学童保育に預けてある。いつもより遅く迎えに行くと伝えてある。これが最後のメッセージになるなんて、弟は知る由もない。


(ごめんな、翔太。でも、もう限界なんだ)


 学校でのいじめは、日に日にエスカレートしていった。SNSでの誹謗中傷、靴箱に入れられた画鋲、教科書に書かれた落書き。どれも一つ一つは取るに足らないことかもしれない。でも、それが毎日、毎日と積み重なっていくと……。


 蒼空は、濡れたコンクリートの縁に足をかけた。制服のズボンの裾が、雨水を吸って重くなっている。


「あの、危ないよ?」


 突然の声に、蒼空は思わず体を強張らせた。


 振り返ると、そこには一台の車椅子があった。白い傘を片手に持った少女が、薄いピンク色の病院着を着て座っている。長い黒髪が風に揺れ、透き通るような白い肌が印象的だった。まるで、日本人形のような整った顔立ちをしている。


「君は……誰?」


花巻はなまき陽茉莉ひまり。この病院の患者よ」


 少女は、驚くほど落ち着いた声で答えた。その瞳には、どこか諦めたような、しかし同時に強い意志の光が宿っているように見えた。


「邪魔しないでくれ」


 蒼空は、できるだけ冷たい声を出そうと努めた。でも、その声は予想以上に震えていた。


「邪魔? ああ、死のうとしてるんでしょ? でも、だめ。だってここは私の特等席なんだから」


 陽茉莉は、まるで天気の話でもするかのような口調で言った。その態度に、蒼空は思わず眉をひそめた。


「特等席?」


「ええ。夕陽がとてもきれいに見えるの。私の残りの時間で、あと何回見られるかな……って数えてるの」


 その言葉に、蒼空は思わず息を呑んだ。少女の表情には、不思議な穏やかさがあった。


「残りの時間って……」


「余命半年。難病なの」


 陽茉莉は、空を見上げながら言った。その仕草には、どこか儚さが感じられた。雨粒が、彼女の頬を伝って落ちていく。それは涙のようにも見えた。


 生きたいのに死ななければならない人間がいる。死にたいのに、その勇気すら持てない自分がいる。その矛盾に、蒼空は言葉を失った。


 気がつけば、足は既にコンクリートの縁から降りていた。雨は、いつの間にか小降りになっていた。病院の裏庭から、土の香りが風に乗って漂ってきた。


「ねぇ」


 陽茉莉が、静かに話しかけてきた。


「もし、よかったら……明日も会えないかな?」


 その言葉には、どこか切実なものが込められていた。蒼空は、黙ってうなずいた。


 東の空が、少しずつ明るくなってきていた。


◆第2章:交錯する想い


 それから一週間、蒼空は放課後になると病院の屋上に通うようになっていた。初夏の風が心地よく、遠くに見える街並みはかすかな靄に包まれている。今日も夕暮れ時、いつもの場所で陽茉莉は蒼空を待っていた。


「今日は何をしてきたの?」


 陽茉莉は、いつものように穏やかな笑顔を浮かべながら尋ねた。白いワンピースの裾が、そよ風に揺れている。


「……別に。学校行って、弟を迎えに行って……いつものくだらない毎日さ」


 蒼空は投げやりな口調で答えた。実際、今日も教室の机の中から上履きが消されていた。昼休みには、誰かが彼のロッカーに赤インクをこぼしていた。


「そう。私は今日、新しい治療を始めたわ。副作用がちょっときついけど……でも、一日一日を大切に生きたいから」


 陽茉莉の腕には、点滴の針を刺した跡が残っている。その周りには、わずかな青あざが浮かんでいた。それでも、彼女の声は明るく、力強かった。


「どうして……」


「どうして、って?」


「どうして、きみはそんなに普通でいられるんだよ? もうすぐ死ぬんだろ?」


 言ってしまってから蒼空は、自分の言ってしまった言葉の鋭さに切り裂かれそうになった。蒼空の声は、少し震えていた。怒りなのか、悲しみなのか、自分でもよく分からない感情が込み上げてくる。


 陽茉莉は、しばらく空を見つめていた。夕暮れの光が、彼女の横顔を優しく照らしている。病院の裏庭からは、夕暮れの合図のように、セミの鳴き声が聞こえてきた。


「ねぇ、蒼空くん。私ね、死ぬのが怖いの」


「……え?」


 予想もしない言葉に、蒼空は息を呑んだ。これまでの陽茉莉からは、想像もできない弱さが滲んでいた。


「でも、それ以上に……まだやりたいことがたくさんあるの。読みたい本も、見たい景色も、話したい人も、いっぱいあるの」


 陽茉莉は、車椅子のひざ掛けを握りしめた。その指先が、かすかに震えているのが見えた。


「だから、一日一日を大切にしたいの。たとえそれが、苦しい治療の日々でも」


 その言葉は、蒼空の胸に深く突き刺さった。自分は今まで、何を見ていたのだろう。何のために生きていたのだろう。何を目指して、前に進もうとしていたのだろう。


 風に乗って、病院の中庭に咲いているアジサイの香りが漂ってきた。その甘い香りは、どこか懐かしい気持ちを呼び起こす。


「私ね、死ぬ前に一つだけ、叶えたい願いがあるの」


「願い?」


「ええ。この病院の七階に、図書室があるの。そこで、私の好きな本を読んでくれる人を探してるんだ……最近、字がうまく読めなくなっちゃったから」


 陽茉莉は、少し照れたような表情を見せた。その仕草には、どこか儚さが感じられた。


「蒼空くん、よかったら……私に本を読んでくれない?」


 夕陽が沈みかける空の下で、その言葉は静かに響いた。オレンジ色に染まった雲の間から、最後の陽光が二人を包み込む。


 蒼空は、少し考えてから口を開いた。


「……どんな本が好きなの?」


 その問いかけに、陽茉莉の顔が明るく輝いた。


「ファンタジーが大好きなの! 特に、星や宇宙の物語が……」


 陽茉莉は熱心に語り始めた。その姿は、まるで病気など微塵も感じさせない、普通の女の子のようだった。


(死を意識しながら、それでも前を向いて生きている)


 その強さに、蒼空は言葉を失った。自分は死に向かって一直線だった。でも彼女は、死に向かいながらも必死に生きようとしている。その違いは、いったい何なのだろう。


「明日から、毎日来てもいい?」


 思わず、そんな言葉が口をついて出た。


 陽茉莉は、満面の笑顔で頷いた。その表情には、これまでに見たことのない生命の輝きがあった。


 遠くで、病院の夕食を知らせるチャイムが鳴り響いた。


「じゃあ、また明日」


 別れ際、陽茉莉はそっと手を振った。その仕草には、どこか儚い美しさがあった。


 帰り道、蒼空は久しぶりに空を見上げた。夕焼け空には、小さな星が一つ、瞬き始めていた。


◆第3章:響きあう言葉


図書室での読書会が、日課となっていた。七階の一番奥にある小さな部屋は、夕暮れ時になると温かな光に包まれる。古い本の匂いと、窓から差し込む柔らかな風が、どこか懐かしい雰囲気を醸し出していた。


「……そして、少女は星々の住む世界へと旅立っていった」


 蒼空が本を閉じると、陽茉莉は目を閉じたまましばらく余韻に浸っていた。その表情には、深い安らぎが浮かんでいる。窓辺に置かれた小さな観葉植物の葉が、そよ風に揺れて影を作っていた。


「素敵な物語ね」


「ああ」


 最近は、本を読むのが楽しみになってきていた。物語の中の登場人物たちの感情を声に乗せ、陽茉莉の反応を見るのが、密かな喜びだった。彼女が目を輝かせて聞き入る姿は、まるで宝物を見つめるかのようだった。


 図書室の本棚には、様々な物語が並んでいる。その一冊一冊に、無数の人生が詰まっているような気がした。陽茉莉は特に、星や宇宙を舞台にした物語を好んだ。


「ねぇ、蒼空くん」


 ある日、陽茉莉が静かな声で言った。


「私ね、小さい頃から星を見るのが大好きだったの。でも、入院してからは、窓からちらっと見える空の一部しか見られなくて……」


 その言葉には、どこか切なさが滲んでいた。蒼空は黙って耳を傾けた。


「でも、こうして物語の中で星空の下を旅する主人公たちの話を聞いていると、私も一緒に旅をしているような気がするの」


 陽茉莉の瞳が、かすかに潤んでいた。


 だが、そんな穏やかな日々は長くは続かなかった。彼女の体調は、日に日に悪化していった。


「ごめんね。今日は、ちょっと具合が……」


 読書の途中で、陽茉莉が急に咳き込み始めた。その咳は、以前より明らかに激しくなっていた。


「陽茉莉!」


 蒼空は慌てて、ナースコールを押した。胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われる。


 すぐに看護師が駆けつけ、陽茉莉は病室に戻された。その背中が、以前より一回り小さく見えた気がした。


 その夜、蒼空は眠れなかった。窓の外には、半月が静かに輝いている。


 なぜ、こんなにも胸が痛むのだろう。なぜ、彼女の笑顔が消えるのが、これほどまでに怖いのだろう。自分にとって、陽茉莉とはいったい何なのだろう。


(俺は……陽茉莉に、何を求めているんだろう)


 答えは出なかった。ただ、明日も会いたいという気持ちだけが、強くなっていった。


 夜更けになって、母が帰ってきた。化粧も薄れ、疲れた様子が見える。それでも、弟の翔太の制服を洗濯機に入れながら、母は小さく微笑んでいた。


「お兄ちゃん、最近元気になったね」


 翔太が、突然言った。


「え?」


「なんか、前より笑顔が増えたような気がする」


 その言葉に、蒼空は戸惑った。自分でも気づかないうちに、何かが変わっていたのかもしれない。


 枕元の机の上には、今日読んでいた本が置いてある。その本を手に取ると、陽茉莉の言葉が蘇ってきた。


「私ね、この物語が大好きなの。主人公が、どんなに辛いことがあっても、前を向いて歩いていくから」


 その時の彼女の笑顔が、まぶたの裏に浮かんだ。死と向き合いながらも、それでも必死に生きようとする彼女の姿。それは、自分に何かを伝えようとしているのかもしれない。


 窓の外で、遠くの街灯が小さな星のように瞬いていた。明日は、また新しい物語を読もう。そう決めて、蒼空はようやく目を閉じた。


◆第4章:虹色の約束


 九月に入り、夏の暑さが少しずつ和らぎ始めた頃のことだった。病室の窓から、うろこ雲が浮かぶ青空が見えている。陽茉莉は、その空を見上げながら、静かに言った。


「ねぇ、外に連れて行って」


 突然の言葉に、蒼空は本を読むのを中断した。


「でも、お医者さんが……」


「お願い。私、死ぬ前にもう一度この病院の外の世界を、見てみたいの……」


 陽茉莉の瞳には、これまで見たことのない切実な光が宿っていた。点滴の針が刺さった腕は、以前より細くなっている。それでも、その眼差しには強い意志が感じられた。


 蒼空は迷った。医師からは安静にするように言われているはずだ。でも……。


「外の世界って……どんなところに行きたいの?」


「どこでもいいの。ただ、普通の景色が見たいだけ。通学する人たち、買い物をする人たち、そんな日常の風景が……」


 その言葉に、蒼空の胸が痛んだ。当たり前のように過ごしていた日々が、彼女にとっては特別な願いになっているのだ。


 休日の午後、二人は秘密で病院を抜け出した。看護師の交代時間を見計らい、車椅子を押して裏口から外へ出る。緊張で手が震えていた。


 初秋の風が、二人の頬を優しく撫でていく。空気は澄んでいて、街路樹の葉がかすかに色づき始めていた。


 車椅子を押しながら、街を歩く。陽茉莉は、まるで小さな子供のように、すべてのものを新鮮な目で見つめていた。


「ねぇ、あのお花屋さん、すてきね」

「あ、向こうで子供たちが遊んでる!」

「あの雲、うさぎみたいな形してない?」


 陽茉莉の声には、純粋な喜びが溢れていた。その姿を見ていると、病院で見せる穏やかな表情とはまた違う、生き生きとした表情が浮かんでいる。


「ねぇ、あのカフェに入ってみない?」


 路地裏の小さなカフェは、古い洋館を改装したような趣のある建物だった。ドアを開けると、珈琲の香ばしい香りが漂ってくる。温かみのある照明が、木目を活かした内装を優しく照らしていた。


 二人はホットココアを注文した。陽茉莉は、両手でカップを包み込むようにして持っている。その仕草には、どこか儚さが感じられた。


「美味しい!」


 陽茉莉の笑顔が、店内を明るく照らしているようだった。泡立てたミルクの上に、ハート型のココアパウダーが振りかけられている。


「ありがとう、蒼空くん。あたしこのココアの味、一生忘れない」


 その言葉に、胸が締め付けられた。「一生」という言葉の重みが、これまでになく重く感じられる。


(思い出、か……)


 帰り道、突然の雨に見舞われた。九月の雨は、まだ夏の名残のような暖かさを含んでいた。


「大丈夫? 濡れちゃったね」


 蒼空が心配そうに尋ねると、陽茉莉は首を振った。


「平気よ。それより……見て」


 雨上がりの空に、大きな虹がかかっていた。七色の帯が、どこまでも続いているかのように見える。


「きれい……」


 陽茉莉の目には、涙が光っていた。それは雨のしずくなのか、感動の涙なのか、分からなかった。


「生きていてよかった。最後にこんな景色が見られて、本当によかった」


 その言葉は、蒼空の心に深く刻まれた。彼女にとって、この何気ない一日が、どれほどの意味を持っているのか。


 病院に戻る途中、陽茉莉は少し疲れた様子を見せ始めた。でも、その表情には充実感が満ちあふれていた。


「蒼空くん」


 エレベーターを待っている間、陽茉莉が静かに呼びかけた。


「今日は、私の人生で一番幸せな日だった」


 その言葉に、返す言葉が見つからなかった。ただ、車椅子のハンドルを強く握りしめることしかできなかった。


 窓の外では、夕暮れの空が赤く染まり始めていた。まるで、この特別な一日の終わりを惜しむように。


◆第五章:永遠の光へ


 秋が深まり、木々が色づき始めた頃。病院の窓から見える銀杏並木が、黄金色に輝いていた。


 陽茉莉の容態が、急激に悪化した。外出から数日後、高熱を出して意識が朦朧とするようになった。点滴の針が刺さった腕は、今では痛々しいほど細く、透き通るように白かった。


 モニターの規則正しい音が、静かな病室に響いている。蒼空は椅子に座ったまま、陽茉莉の横顔を見つめていた。


「ごめんね……約束の本、最後まで読んでもらえないかもしれない……」


 かすれた声で、陽茉莉が言った。その声は、風に揺れる木の葉のように儚かった。


「大丈夫だよ。また元気になったら……」


 言葉を途中で飲み込む。もうを、蒼空もよく分かっていた。


 陽茉莉は、微かに首を振った。


「でもいいの……私の息が絶える……最期まで……本を、読んで……」


 その言葉に、蒼空の視界が曇った。でも、彼は震える手で本を開いた。それは、二人が最初に読み始めた『星の航海者』。表紙には、無数の星が描かれている。


「第十章、永遠の光……」


 蒼空の声が、静かな病室に響く。物語は、主人公の少女が星々の導きによって、自分の進むべき道を見つける場面。陽茉莉が最も好きだった章だった。


 窓の外では、夕暮れの空が茜色に染まっていく。まるで、この瞬間を永遠に留めておきたいかのように。


 読み進めるうちに、不思議な静けさが部屋を包んでいった。心音を刻むモニターの音が、少しずつ弱々しくなっていく。


 最後の一文を読み終えた時、陽茉莉の唇が微かに動いた。


「蒼空くん、私ね、分かったの。生きる意味って、きっと一つじゃない。人それぞれの……小さな幸せの中にあるんだって」


 その言葉を最後に、陽茉莉は静かに目を閉じた。夕陽の最後の光が、彼女の頬を優しく照らしていた。


 モニターが、長い音を響かせる。


 看護師が駆けつけ、医師が呼ばれ、様々な処置が行われた。でも、もう陽茉莉は戻ってこなかった。


 その夜、蒼空は病院の屋上に立っていた。初めて陽茉莉と出会った場所。今では、星空が広がっている。


(生きる意味か……)


 陽茉莉の最期の言葉が、胸に響く。彼女は、限られた時間の中で、確かに生きた証を残していった。



 その日から一年。


 蒼空は、地域の図書館でボランティアとして本の読み聞かせを始めていた。白い壁に囲まれた子供向けの部屋は、いつも温かな光に満ちている。


「お兄ちゃん、次はどんなお話?」


 小さな声が、期待に満ちている。蒼空は、本棚から一冊の本を取り出した。『星の航海者』。表紙には、少し色褪せた星々が描かれている。


「今日は、とっておきのお話があるんだ。星を探して旅をする、ある女の子のお話」


 子供たちの目が、好奇心で輝く。その瞬間、蒼空は陽茉莉の笑顔を思い出していた。


 読み聞かせを終えると、窓の外では夕暮れが始まっていた。蒼空は、空を見上げた。


(そうだね、陽茉莉。人生の意味は、一つじゃない)


 それは、彼女が教えてくれた大切な真実だった。死を目前にしながらも、一瞬一瞬を大切に生きた彼女の姿が、今でも心に残っている。


 図書館を出ると、秋の風が頬を撫でていった。


 今日も、どこかで虹が架かっているに違いない。そう信じながら、蒼空は歩き始めた。陽茉莉が残してくれた光を、今度は自分が誰かに伝えていくために。


(了)

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