情報キャンセル界隈

白川津 中々

◾️

情報キャンセル界隈、爆誕。


風呂キャンセルや咀嚼キャンセルなど、何かと巷を賑わす◯◯キャンセル界隈において現在最もホットでトレンドなのが情報キャンセル界隈。通称、情キャン界隈である。

SNSやネット。ニュースに新聞ゴシップ紙。他人の不幸や不祥事をあげつらえて面白おかしく批判するコンテンツに嫌悪感と疲労感を覚える人間多数が声をあげた結果認知されるようになったこの界隈はあらゆる醜聞や風評などのネガティブ情報を封殺。代わりに動植物の動画などを観ているのだった。

この情キャン界隈について、最初メディアは面白おかしく報じていたのだが規模が拡大していくにつれ一切報じなくなくなる。売上に対して影響力が無視できなくなり、認識の風化、遮断に打って出たのだ。

だが伝播は止まらなかった。猫動画の中に活動内容を表示す普及活動やSNSへの定期投稿により多数の共感を獲得して支持を集める事に成功する。


こうして支持者多数となった情キャン界隈は自分達の村を作ろうという計画を立てた。外部情報から隔絶され、動物と植物と共に生きていく自給自足の理想郷を形にしようとしたのである。

彼らの中に新しき村や人民寺院の存在を知る者がどれだけいるかは知らないが、もはや趣旨と方向性が変わってきているのは明確だったし、迎える結末もおおよそ予想ができた。

その予想し得る最後を迎えた時、メディアは再び情キャン界隈について面白おかしくあげつらえるのだろう。そしてまた情報キャンセル界隈が生まれるのだ。不毛のように思えるがしかし、人の目も耳も口も、健全であれば閉じる事はできないのである。


情報は常に、止まらない。

人がいる限り、人である限り。

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