2度目の一度きり人生

総合

第1話 一度きりの人生終了

「はぁー」


そうため息を漏らし、しがないサラリーマンである俺はいつもどうり定時で上がれず残業を終え帰宅していた。


外はすでに真っ暗で、疲れた足取りで駅へ向かう。思えば、日々の変わらない生活に疲れ果て、自分の人生に何か物足りなさを感じていたのかもしれない。


それもこれも過去の自分のせいだろう。何かに一生懸命になる事もなく、自分の意思を持つ事もなく流れるように生きてきた。そのせいで幾つも後悔をしてきた。


心の中では常に分かっていた、変わらないといけない…と。まぁ、そんな事今更考えてももう遅い。そんな後悔を胸に俺はホームで電車を待っていた。



「もう一度人生やり直したいなぁ」



ふとそんな言葉が漏れる。そんな言葉をよそに無情な警笛が耳に響き、電車がホームに近づいてきた。


不意に視界の端で何かが動く。


その瞬間周囲の雑踏が一瞬静止したように感じた。驚いて振り向くと、ホームの端に立つ一人の男が目に入った。彼の表情は絶望に満ち、まるで何かを決意したかのように見えた。

次の瞬間、彼はホームの縁を越え、飛び降りようとしている。


「やめろ!」


声を上げたが、間に合わなかった。反射的に駆け寄ると、俺も足元が不安定になり、バランスを崩してしまった。結果的に男と入れ替わるように、俺はホームの縁から転落していった。


次の瞬間、周囲の世界が再び動き出す。人々の悲鳴が耳を刺し、冷たい風が頬を撫でた。足元が崩れ、意識が薄れていく感覚が全身を覆う。助けようとしたのに、自分が巻き込まれてしまったという現実が、徐々に心に重くのしかかる。


何かを叫ぼうとしたが、声が出ない。目の前の光景が歪み、視界が暗くなっていく。最後に見えたのは、驚愕の表情を浮かべた人々の顔だった。全てが崩れ去る中で

「俺は本当に何がしたかったんだろう」


そんな言葉が心に残り意識が遠のいていくのを感じたのだった

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