神童と言われていた僕

僕は前世の記憶を残して今世に生まれた。

生まれて言葉が喋れるようになる頃にはから文字も読めて計算もできたから周りからは神童ともてはやされた。


小学校の頃は苦手な英語もなく授業を聞いてなくても全て知ってる事だったから退屈だった。周りの小学生とは最新年齢が合わず自然と1人でいることが多かったが、たまに遊びに混ぜて貰えて、いじめられるということは無かった。


中学生になると仲良くしてくれてた子たちも別のグループができたのか誘われなくなり1人で本を読んでることが多くなった。相変わらず授業は退屈だったが、苦手だった英語だけは真剣に授業を聞いていた。前世では歳とってから英語の必要性に気づいた(ゲームのテキストが英語の時に読めなかった)から今世ではある程度読めるようになっておきたい。


高校に上がってからは、化学や地理、物理や数学などの理系科目が社会人になり忘れていたような高度な内容にっなってきて、知識欲がくすぐられよく授業を聞いたり興味があることを先生に質問するようになった。それ以外の教科も覚えている内容ではなくなってきたから人並みに授業をきくようになった。この頃から1人で本を読んでいるとたまに一人の女の子がはなしかけてくるようになった。


3年生になり受験をめざして授業のレベルが上がると、前世から引き継いだ知識は全く当てにならず成績が周りに追いつかれ始めた。読書中に話しかけてくる子とこの頃から一緒に勉強をするようになった。僕は理系科目を教えて彼女には文系科目を教えて貰っていた。


そんなふうに一緒に勉強をする日が続いていたある日、彼女はどこからか僕が進学ではなく就職することを聞いたみたいで、大学に行かない理由を聞いてきた。

「僕は勉強ができるだけで勉強が得意な訳では無いんだ。ずっと勉強を頑張れる君のような人にはいつかは越えられる平凡な人間なんだよ。」

そう答えた僕に対し彼女は、

「そんなことは無い!頑張ればやれるよ!」

と僕に言ったが、僕は前世でもそうだったが、机に向かって興味のないことを覚えるという作業が苦手なのだ。だから彼女のような努力できる人は本当にすごいと思う。同時に彼女が僕のことを目標にしているような気がし、理系科目だけでもそうであり続けれるように頑張ろうと思った。


しかし受験勉強が大詰めを迎える二学期後半になると、僕は努力を重ねる周りに置いていかれるようになった。理系科目だけは興味があって楽しく勉強できていたから、彼女に教えることもあったが、それも難しい応用問題になると一緒に考えることが増えた。彼女は僕に英語や国語を教えてくれようとしていたが、受験に向かって頑張っている彼女の邪魔をしたくなかった僕は、また1人で読書をすることが増えていった。


そうして、卒業の季節僕は地元に残り、実家の農業を次ぐことにし、彼女は目標の大学に合格し、進学のために他所に引っ越すことになった。卒業式の時に一緒に写真を撮り、こっちに帰ってくることがあればご飯でもいこう、と社交辞令のような言葉を交わしあった。彼女のような向上心のある人は僕のような学生の頃話しただけの人のことは直ぐに忘れるだろう。


それから月日がたち、成人式の時僕は日焼けしてすっかり農家のお兄さんという風貌になり、着慣れないスーツを着て会場の端っこに立っていた。小さい頃神童と呼ばれていた頃が懐かしいが、所詮前世の記憶があるだけの一般人だ。大人になれば一般人に戻るのが当たり前だろう。そう思っていたら女の人がこちらに手を振りながら駆け寄ってくるのがわかった。化粧もして、オシャレになってパッと見じゃ分からなかったが、話しかけてくれていたのは一人しかいなかったから、きっとあの時の彼女だろう。そう思い控えめに手を振り返した。

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神童と言われていた彼 @matunoko

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