山奥の滝にて怪異の応力と斥力の陌間に

山の奥に禁忌の滝壺がある。
白い小石を積み重ね、恰も『賽の河原』の
如く。或る種、この世とは隔絶したような
世界が広がっている。

曰く、その滝には河童が棲むという。
 曰く、その山には山姥が出るという。

恐れを知らぬ少年は又、畏れをも識らぬ。
人の命が幾つもの飛沫となって消えて
行った、その場所で。
           一瞬の、静寂。

 鏡面の様な水面に映る自分の姿が
招き寄せる。
       そして又、

真っ赤に染まりながら流れ落ちる瀑布、
いつの間にか、水面はまるで血の池の赫。

 無我夢中で逃げ果せるが。

河童なのか山姥なのか。人外の山の妖、
或いは神か、魔のものか。
 ソレ に人の理屈など、あろうものか。