おばけのオーケー
平 遊
ハッピー・ハロウィン!
「ばぁ!」
ボクはただ、みんなと遊びたいだけなんだ。
なのに。
「きゃぁぁっ!」
「わぁっ! おばけだっ! にげろーっ!」
みんな、ボクのことを見ただけで、
だからボクはいつも、ひとりぼっち。
もうずっと、ひとりぼっち。
いつからだったかな。
気づいたときには、ボクはひとりでここにいた。
まわりがゴツゴツした、暗いところに。
本当は、明るいおひさまの下でみんなと
だけど、ボクにはそれができない。
だからせめて、お月さまやお星さまのやさしい明かりの下で、みんなと
「ばぁ!」
たまに
「きゃぁぁぁっ!」
「おばけっ、おばけーっ!」
ボクはこのままずっと、ひとりぼっちなのかな。
さびしいな。
ボクはただ、みんなと
どうしたらボクは、みんなと
さびしくてかなしくて、ボクはお月さまやお星さまにお
みんなと
すると。
「あれ? キミも
白いフワフワしたものを
でも、その子には足があったから、人間の子だっていうのがすぐに分かった。
うれしくなって、ボクはその子に
「ばぁ!」
「キミ、すごいね。足が
「ばぁ?」
「ねぇ、キミなんていう名前? ここらへんの子? 僕ね、あきら。引っ越してきたばっかりで、まだ
あきらはちょっとはずかしそうにそう言った。
トモダチ。
なんだかとってもくすぐったくて、
だってボクにも、トモダチなんていなかったから。
「ばぁ!」
「それは、
「ばぁ! ばぁ!」
「ふふっ、おもしろいねキミ」
あきらはうれしそうに
ボクは
ボクもものすごくうれしくなった。ボクも
おばけのボクには、笑うことはできないけれど。
「ねぇ、それでキミの名前は?」
「……ばぁ?」
ボクには、名前なんて
だって、
「う~ん……じゃあ、僕がつけてもいいかな?」
そう言うと、あきらはちょっとだけ考えてから言った。
「うん。決めた。キミの名前は【オーケー】だ!」
「ばぁ?」
「キミは僕と同じでおばけの
オーケー。
それが、ボクが
ものすごくうれしくて、ボクは思わずあきらのまわりを
「ばぁっ! ばぁっ!」
「あははっ、気に入ってくれたのかな?」
「ばぁっ!」
「じゃあ、オーケー。そろそろ行こうか」
「ばぁ?」
「
あきらがボクの体にさわろうとした。
だからボクは急いで、その
ボクの体は力を入れないと、何もさわれないんだ。ただ、
あきらはボクを人間の子だと思っている。だからこんなボクと
あきらにボクがおばけだってバレたらきっと、あきらも他の子と同じように、こわがって
それがボクには、こわかった。
「ねぇ、オーケー。この町の
「……ばぁ?」
「うふふ……
「ばぁ!」
あきらがボクの体の一部をきゅっとにぎる。
きっと人間の子たちがやっている【手をつなぐ】っていうのなのかな。
ボクには【手】はないけれど、あきらがにぎっているところがなんだかほわんと
中には、前にボクを見て
「あ、あきら! お
「うん!」
「で、
人間の子が、ボクたちに近づいて来る。
どうしよう?
ボクがおばけって分かったら、みんなまた
あきらも……
ボクはあきらからそっとはなれようとしたのだけど、あきらはボクをにぎる手にぎゅっと力をこめて言ったんだ。
「この子はオーケー。僕の
トモダチ。
あきらははっきりそう言ってくれた。
ボクは
おばけのボクには、
もらったお菓子は、あきらと他の子たちみんなでわけた。
おばけのボクには、お菓子は食べられないから。
ボクはみんなから
「ねぇ、足が
「それは
「ばぁ!」
「フワフワ
「それも、
「ばぁ!」
「ねぇ、オーケーってどこに
「あっちの方だよ。今日は僕と
「ばぁ!」
あきらと
それは生まれて
「じゃあ僕、そろそろ
「ばぁ……」
あきらの
もうちょっとあきらと
だって、人間の子はもう、
「ねぇ、オーケーってさ」
「ばぁ?」
「ホンモノのおばけなんでしょ?」
「ばぁっ⁉」
急にあきらがそんなことを言うから、ボクはおどろいて
あわてるボクを見て、あきらがクスクスと
「やっぱり」
でも、あきらは
「ここはおばけが出るって
そんなの、
だって、ボクだっていつも、みんなと
「ばぁ!」
「そっか、よかった! ねぇ、オーケー。僕たちもう、
「……ばぁ?」
「
「ばぁ……?」
ボクはちょっと
みんなも本当に、ボクと
そんなことしたら、あきらまで、みんなから
「
ボクはまた、ひとりになった。
だけどなんだかうれしくて、お月さまとお星さまにありがとうをしながら、おひさまが出てくるまでの
それからのボクは、ひとりぼっちじゃなくなった。
おひさまが
そんな
だけど。
その
「あれっ? オーケー
いつも来てくれている子のうちのひとりが、
ボクはその子の目の前にいるのに。
「ばぁ!」
「オーケー! いないのか!」
「いや……オーケーいるよ? お前の
「えっ……」
そしてまたひとり。
ボクの
ボクは
ボクの
そして
だけどとうとう、あきらにもボクの
「オーケー。そこにいるんだよね?」
「ばぁ」
もう
「なんとなく、分かるよ。
「ばぁ……」
ボクはさびしかった。
またひとりぼっちになるんだと思って。
だけど、あきらは言ったんだ。
「見えなくなっちゃっても、オーケーは僕の
「ばぁ……」
あきらのやさしさで、ボクの
……おばけに
でも。
あきらの
見えなくても、トモダチ。
あきらはずっと、ボクのトモダチなんだ!
それからもたまに、あきらはボクのところに来てくれた。
ボクのことが見えないから、
ボクはあきらの
そんなある日。
ボクがひとりでゴツゴツした、暗いところにうずくまっていると、外から声がきこえてきた。
「ひかる。ここにはね、パパの
「おトモダチ?」
「そうだよ。オーケー、って言うだ。
「うん!」
「せーの」
「「オーケー!」」
ボクはうれしくなって、外に
おひさまが
「パパ―! しろい子がフワフワういてる! あの子がパパのおトモダチ?」
「そうだよ、ひかる」
「ばぁ!」
「『ばぁ!』って言ってる!」
「うん、オーケーはね、『ばぁ!』しか言わないんだけど、とっても
「はーい!」
「オーケー。この子は僕の子でね、ひかる、って言うんだ。どうか、
そんなの、あたりまえじゃないか!
ボクの大切なトモダチの子は、トモダチに決まってる!
「ばぁっ!」
「あははっ! また『ばぁっ!』って言ってるよ、パパ!」
「そうか。ありがとう、オーケー」
うれしくて
おばけのボクは、
「オーケー。今年もまた、ハロウィンの
「ばぁっ!」
「パパ! オーケーも出たいって言ってる!」
「そうか! じゃあまた、
「ばぁっ!」
ボクは、おばけのオーケー。
もう、ひとりぼっちなんかじゃない。だからもう、さびしくなんかない。
ハロウィンていうのがなんなのか、ボクにはよく分からないけど、でも、これだけはよくわかるよ。
ハッピー・ハロウィン!
そう。
ボクにとってハロウィンは、あきらと
とても
だから。
すべてのおばけと、すべての人間に。
ハッピー・ハロウィン!
【終】
おばけのオーケー 平 遊 @taira_yuu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
転べばいいのに最新/平 遊
★30 エッセイ・ノンフィクション 連載中 8話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます