Chapter6 アイドルに限らない「オタク」と「推し」①アニメ・漫画など

 取り敢えず完結したのだな……というのが丸分かりの状態で完結ボタンを押してしまいましたが、帰って参りました。月兎です。


 前回は「アイドルオタク」について話しました。今回は「なぜ、オタク文化は二次元の界隈にも広まったのか?」ということについて語っていきたいと思います。


 アニメの起源……にさかのぼるとですね、実に平安〜鎌倉時代に来てしまいます。

 アニメとは英語の「animation」が語源なので、勿論当時に「アニメ」などという言葉は存在しないのですが、文化はありました。


『源氏物語』は、平安時代半ば過ぎに、藤原道長の長女・藤原彰子しょうしの侍女である紫式部が書いた物語。


 現代向けに説明しますとね、宮中で、色恋話に飢えていた歳頃のガールたちに「うわああああ光源氏がめっちゃイケメンなんですけどおおお!?」って感じで受けました。冒頭の光源氏を見て「可愛え……」と思ったショタコンもいたはず(いたはず)。


鳥獣人物戯画ちょうじゅうじんぶつぎが』は『鳥獣戯画』とも呼ばれます。平安時代から鎌倉時代に描かれたと思わしき絵巻物です。


 その描写は、源氏物語絵巻のような、深くて物語的な世界よりは、コミカルで少し滑稽こっけいな感じがしますよね。兎とかわずが相撲を取り合っているのですから、当然ですね。戯画(風刺画の意味もある)ですから、当然ですね。


 んで、当時はあまり庶民には広まっていなかったのですが、これが江戸時代になると話が違います。

 江戸時代には、それを代表する文化が二つ。


 はい、歴史の授業で〜す(あの……そこの皆さま、ブラウザバックしないで下さい……難しくないので……)


■1「元禄文化げんろくぶんか


 元禄とは当時の元号、第五代将軍の徳川綱吉とくがわつなよしの頃です。

 主に上方かみがた(※京都・大阪)で開花しました。豊かになった町人が、学問や娯楽にいそしみ、絵画や文学、演芸などのジャンルで活躍を見せました。

 後で紹介する化政文化よりは、ややみやび……というイメージです。


 代表的な文学作品

 ・井原西鶴いはらさいかく世間胸算用せけんむなざんよう

 ・松尾芭蕉まつおばしょう「おくのほそ道」

 ・近松門左衛門ちかまつもんざえもん曽根崎心中そねざきしんじゅう

(・初代市川團十郎いちかわだんじゅうろうしばらく

 その他、浮世絵の始祖とも呼べる、菱川師宣ひしかわもろのぶ「見返り美人図」が流行しました)


 それこそ「曽根崎心中」とかって、愛し合う男女の心中事件がモデルの人形浄瑠璃にんぎょうじょうるりですから、感動ラブストーリーなことは間違いなく……。

 めっっっちゃ今でいうと「知らないカノジョ」とか……じゃないですか?


■2「化政文化かせいぶんか


 文化・文政の頃に流行った文化、略して「化政文化」です(ややこすぃやぁ)。

 主に江戸で開花しました。当時の情勢を反映・風刺した、ちょっぴり馬鹿っぽくて、滑稽なものや、庶民的なものが流行りました。


 代表的な文学作品

 ・十返舎一九じっぺんしゃいっく東海道中膝栗毛とうかいどうちゅうひざくりげ

 ・滝沢たきざわ曲亭きょくてい馬琴ばきん南総里見八犬伝なんそうさとみはっけんでん

(その他、美人画や風景画など様々なジャンルの浮世絵が流行しました)


「東海道中膝栗毛」はコメディものやギャグ本で「南総里見八犬伝」は、王道少年漫画ストーリー……というイメージ。

 本当、八犬伝について語り出すとキリがないんで、割愛しますけどね。


 この辺りに、現代のサブカルチャーに通ずるものが、庶民にも広まりました(江戸には絶対に腐女子がいた。絶対に)。


 そして、近世に入ると、新たな西洋の思想を取り入れたものが登場。文豪ぶんごうたちがたくさん登場し、大人向けの文学作品はさらに充実……どころか、子供向けの童話なども登場し始めました。宮沢賢治をはじめとし、大正時代には雑誌も登場しましたし。


 そして、太平洋戦争が始まると、流行りは文学から「戦争万歳、兵隊万歳、天皇陛下万歳」みたいな世界に変わっていき、語ることが出てくるのは、終戦後、それも二十年ほど後になります。


 一九六三年には「鉄腕てつわんアトム」が放送開始。まだ画面はモノクロ、テレビアニメという言葉さえ存在したか怪しい時代に登場したがゆえ、当時は「新しい」「斬新ざんしん」と思われたことでしょうね。


 そして、60年代の終わりから80年代にかけては、子供向けからやや成年向けまで、様々なテレビアニメが誕生。現代でも根強いファンが存在します。「日本のアニメ文化」の黎明期とも呼べます。この頃から「アニメオタク」たちの熱烈的な想いが顕著になってくるわけですが、当時は「熱狂的ファン」でしかなく。


 平成に入ると、ポケモンやデジモン、ドラゴンボールやワンピースが大流行。また、日本が海外との交流を「より」深めていったため、海外に日本のアニメ文化が伝わっていきました。


 そして、90年代。

 モー娘。さんのファンから「オタク」という言葉が広まったというくだりを、覚えていますよね?(覚えてるわけあるか)


 思えば、アイドルを推そうが、アニメを推そうが、その「愛」の深さには、想いっぷりには、優劣はないんです。

 吾輩わがはいの勝手な考察ですが……、


 A「なあ、アイドルオタクと俺らって、どっちが上とかある?」

 B「なくね?」

 A「じゃあ俺らもオタクだよ! 好きなものが違うだけだし!?」

 B「確かに!」


 という感じで「あっちがオタクなら、こっちもオタク」という思想に基づいているのではないか、と。

 吾輩も「え? 鬼滅推しは大体オタクだって? んじゃあ吾輩も……」って感じでオタクになりました。


 即ち、同じポップカルチャーを推しているのだから、名乗っちゃダメなんてルールはないよな! ってことです。


 そして、世紀が変わると、小説投稿サイト「小説家になろう」が誕生。これを原作とするアニメも登場しました(「ゼロの使い魔」とかですよね? え? 何で知ってるの? それは内藤さん(仮名)がオタクに目覚めたきっかけなので)。


 そして、アニメはビジュアルが進化。儚げなデザインから豪快なタッチまで、物語性に合わせて絵柄に個性が生まれてきました。また、単純にイラストの技術や、映像技術が向上しました。アニメの進化は止まることを知らず。


 そして、この頃には「アニメオタク」も、そこまでレアな存在じゃなくなったというか、割と世間に周知・可決されてきました。それでも、まだ八割……には届かないのですが、少なくとも自分の親の世代でも、認識はされています。


 時は現代。


 様々な小説投稿サイト、イラスト・漫画投稿サイトが当たり前に存在する世界になった日本にて、物語が生まれること、そこにファンが現れ、オタクになることは、ごくごく普通のことになりました。

 吾輩の小説にも読者さまがいて、そして吾輩も他のユーザーの読者の一人です。日本某所にいる、オタクです。


 二次元の界隈を好む人々は、一千年の時を経て「小説オタク」「漫画オタク」「アニメオタク」と名称され、世間に認められるようになりました。


 ……と、一筋縄でいかないのが、続いて語る「活動者オタク」ですが、これは次回。

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「推し」学 月兎アリス@KKG所属 @gj55gjmd

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