第19話 おい、見つけたぞ!エスケープ

 取り敢えず間一髪で凶暴かもしれないお客様をリトが吹っ飛ばした、ところまではいいが……一体神様とお話だとは、リトも疲れてるのか?地面の揺れは少しだけ収まり、普通に立てるくらいにはなっている。ヒスイちゃんはお得意のスキル、王立図書館で調べ物。


「ペレグリヌス王国の山間部に位置する小規模の街、バルクラ。一時期は変わった方法で製品を作っていた……こうじょう?のことかな。あ、民間伝承の自由の神。引用元は……これも破られてる……」


 これも読んでやがるのかよ……ふざけんな某冒険者!どうやら、その神様とのお話は出来ないようだ。よし、詰んだな!まるで詰まされる側の詰み将棋だな!


 噴火、水害、地震に見事なまでにコンボを決められてしまった。地方都市、都市と言える程でもない、恐らく救援物資が届くのも遅くなるだろう。あ〜、終わったな〜俺の旅。ありがとうございました。これでこの俺の人生は次こそ終わります。二回も死んでるんだ、これ以上生きるというのもそれこそ神様に失礼ってやつだ。


 魔物だったら倒してくれる人がいる。

 犯罪者だったら捕まえてくれる人間がいる。

 天災だったら、止めようがないじゃないか。

 どうすればいいんだか、はは……。




「おい、見つけたぞ!」

 悩んでいるとどこからかそんあ台詞が飛んでくる。なんだろうか?逃走手段だろうか?と考えているうちにその声の主たちが現れる。昼間っからはそう簡単に襲ってこないとか思ってたのに襲ってきたやつが人数増やして帰ってきやがった。最悪だ!!!


「……お客様ぁぁぁ!?!?!?」

 先ほど吹っ飛ばした(リトが)お客様方が再び俺達の前に立ちふさがる。さっきよりも人数を増して。本当に何をしたらあんなアブなそうな連中に追われるんだよ!オネエさん二人組と違って明らかに話の通じなさそうな連中だ。


「火魔法・炎球一式・炎射撃球ホップスフランマ!!!」

 ……あいつら、自助公助共助の精神が微塵もねえ!!


 黒尽くめの服装の人間達がこちらに向かって炎の弾を打ち放ってくる。殺す気、殺気、コロッケ十分なくらいに。こちらが反応できずにいるにも関わらずリトは普通のこととでも言うように反撃をする。


「木魔法・機関壱式の阿きかんいっしき・あ虚露媒体樹ウツロバイタイジュ

 木魔法による絡繰の体の生成。


「重ねて雷魔法・機関壱式の吽きかんいっしき・うん能源精神動ノウゲンセイシンドウ

 雷魔法による電力源バッテリーの作成。


「スキル発動、特質転換トゥルーエクスチェンジ変質型壱式ランクファースト電導木生金ライデンゴンヘンカ

 そして、固有スキルである特質転換トゥルーエクスチェンジによる電導化。そして彼は命ずる、敵を薙ぎ払え、と。


 彼の刀を持ったその絡繰はまるで、異世界にほんの侍の如く駆け抜け、そして眼の前に迫りくる炎の弾を掻き消していく。そして、しまいにはその黒尽くめの人間達を刀で木のように打ち付けていく。


「なんだこの化け物っ!アイツが契約者ディーラーがだなんて聞いてないぞ!」


 契約者ディーラー、ある程度の知性を持つ魔物や悪魔、妖精、神も例外でないそれらと契約し、強大な力を行使する者。だが、リトが今使っているのは純粋な魔法のみ。実際は契約をしている存在が居るか居ないかは兎も角として魔法だけで此処までの絡繰人形を作り出して実践で使えている、俺からしてみれば普通にバケモンだ。


 だが、相手は人数が多い。相手もそれを分かったうえで炎を様々な角度から飛ばしてくる。目的は多分ヒスイちゃんとリトのこと……。明らかに俺は関係無い。だがこの場から逃げ出す体力も薄情さも勇気も持ち合わせていない俺は辺りを警戒しつつヒスイちゃんの様子を見守る。


 今もまだひたすらにこれから起こる災害を止める方法を探すべく脳内に接続された何処ぞかの王立図書館の書棚を読み漁っているみたいだ。それでもこれと言った発見はなく、読み終わった様子を見せては落胆した顔を見せる。この状況下では止めるべきかも知れないがこの現状を打破するには知識が無ければどうしようもない。


 此処の地域をやたらと住みにくくした自由主義の気まぐれな神様なんぞこんな今を見たらさぞかし喜ぶんだろうなあ。マジで、性格悪いな……、でも此処の人たちのリトへの対応を見てればそのくらいで良いような気がしなくもないけど。このままだと俺達も巻き込まれて死ぬかも知れないし。そんなの絶対痛いし嫌だし。


「ぐはぁああ!!!」

「駄目だコイツ強すぎる!!」


 リトはリトで現在は何事もなく何かしらの組織の下っ端を返り討ちにしているようだ。そうしていると、少し離れたところからさっき予定があるからとか言って俺のメンタルを抉った同年代くらいの女の子が此方に走ってくる。


「こ、これ……リトの工場の合鍵」

 と、急に俺にそんなものを渡してまた逃げるように去っていく。工場の合鍵だって?そんなものをリトが街の人間に渡していたとは……。だが、この状況で俺達が今すべきことはもう確定した。


 リトの絡繰で相手をふっ飛ばしたタイミングを見計らって俺は少女から鍵を手に入入れたことを彼に伝える。これさえあれば、あの火山は止められるはずだ……きっと。する彼は戦うのを止めて俺の方を見てヒスイちゃんを一時停止する。


「へぅっ……。どされました?」

「いやあね、懐かしいものを貰ったからな!」

 リトはなんとも照れくさそうな顔を浮かべて躊躇なく俺をあの絡繰で殴ろうとしてくる。


「ああ、分かったよ!!やればいいんだな!!逃走者エスケープ通常型弐式レベルセカンド遠方回避劇ロング・アヴォイド!」

 最早移動手段と化している回避スキル、速度上昇は伊達じゃない。そんな俺は二人の手を取って危険なお客様達を背に再びあの火山目掛けて駆け抜ける!

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回避スキル使いは現世から帰ってきても現実逃避をするようです。〜旅は道連れとは言えど、本物の逃亡者の道連れは!?〜 玄花 @Y-fuula

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