これもまた、出版されるべきレベルの名作サスペンス・ミステリです!
「三十六人めの被害者:The Untold Story of SERIAL KILLER Jonny Sogard [Complete edition]」の続編ですが、作者様もおっしゃっているとおり、こちらのみでも十分楽しめます。もっとも、こちらを読んだら絶対に前作も読みたくなってしまうにちがいないのですが……。
70年代のアメリカが舞台ですが、舞台とキャラクターのリアリティときたら、本当にその時代その場所を生きた方が友人のことを書いたのかと思うほど。
もちろん、地道に調査を進め、犯人を絞りこみ、ときには手に汗握る追跡劇を繰り広げ……という、サスペンス・ミステリの醍醐味もたっぷり味わえますし、マイノリティへのあたたかいまなざしには胸が熱くなります。
そして待ち受けるラストは、感動と苦さと切なさが絶妙に調和した、「これしかない!」と思わせるもの。
ミステリ好きな方、古き良き(実際は『良き』とはいえない部分も多いわけですが)アメリカの雰囲気が好きな方、渋くてデキる主人公が好きな方、バディものが好きな方……最高の読書体験ができること請け合いですよ!
『三十六人めの被害者』の続編ですが、本作から読んでも楽しめました。
主人公サムは舞い込む様々な案件を紐解きながら、かつての相棒と〝魅惑の殺人鬼〟を彷彿とさせる連続殺人事件を追ってサンフランシスコを駆け巡ります。
時にはグルメも外せません。腹が減っては捜査もできぬのです。
そしてその事件の捜査が大筋ではありますが、本作の肝は「それぞれの人が抱えているもの」が随所で浮き彫りになるところのように思えました。
日々忙殺され、淡々と仕事に邁進しているように見えるあの人もその人も、心の深い部分では自分の弱いところにモヤモヤとしたり、過去の過ちを悔やみきれなかったり、己の趣向に思い悩んだり、途方のない焦燥や不安を抱えていたり。
それらが垣間見えた時に感じる人の深みが、ホンモノの人同士の関係を作り上げていくのだろうな、と流れるような文章の中に爽快な読み応えを感じました
あの傑作ミステリー『三十六人めの被害者』の続編。
ジョニー・ソガートはオハイオ川に身を投げて死んだはず。
それなのに全米を恐怖に陥れたあの『魅惑の殺人鬼』の凶行が再び。
サンフランシスコで繰り返される連続殺人は本当に舞い戻ったソガードが始めたものなのか、それとも手口を真似た模倣犯の仕業なのか。
FBIを退職後、私立探偵になったサムとシスコに派遣されたネッドのコンビが復活。
サムは事件の真相を探りながら、探偵として依頼された失踪した少年の行方も追う。
そしてある日、この二つの事件が接点を持つことに気付く。
流麗な筆致、意識せずとも情景が目に浮かび上がる描写能力、そして巧みに練り上げられたストーリー展開。そのどれもが烏丸千弦氏の作品を他に類を見ない高みに昇華させている。
読み始めたら止めることは不可能。
手に汗握り、知らずその秀逸なミステリーの虜になることは必至。
この冬、貴方もそんな烏丸作品に触れてみませんか。