第15話 いよいよ無双が始まるぞ!

『リークリア帝国軍所属らしき部隊を捕捉。地竜が27、搭乗している竜士が同数、歩兵が40あまり。船長、どうしますか?』


大通りに展開した20機のMMSは両腕をリークリア帝国軍の地竜部隊に向けた。


「銀河司法機関の基本法は関係ないんだよね?」


一般のAIには思考制限装置リミッターが装着されていて違法行為はできないようになっている。武力行使も場合によっては違法行為の一部だ。


『はい、既に制限装置の類はクラッキングしてあります。問題ありません』


だが、クインは当の昔に全てをクラッキングして解除していたようだ。正直分からないことだらけだが、今は目の前の脅威が優先だ。


「よし...リークリア帝国軍を危険組織と認定。射撃を許可、撃っちゃっていいよ!」


リークリア軍は村人の家を関係なく火炎放射で焼き払っていた。敵と認めるには十分だった。


『了解、全兵器戦闘態勢オール・ウエポン・コンバット・モードに移行。MMSによる試射を開始』


20機のMMSは計80丁のコイルガンを地竜に向かって撃つ。射撃音は一切しない。弾種は小惑星採掘の時に大量に余った鋼鉄だ。鉛を芯にしている。鋼鉄なのはコイルガンの特性上、発射物が磁性体である必要があるからだ。


鋼鉄だと質量は小さいが、コイルガンの初速は毎秒5000mだ。


地竜が一瞬で引き裂かれて数十の肉塊に分解された。


「わぉ!」

「うぇー...」


コフィにはあまり良くなさそうなグロ映像だった。


『敵地竜、生命活動反応なし、全滅を確認。歩兵の掃討を開始』


5.56㎜機銃コイルガンの初速は5000m/s、重量は4グラム、マズルエネルギーに換算すると5万ジュールだ。


(21世紀の君らのために分かりやすく言うと、陸自の20式5.56mm小銃の使用弾、5.56x45mm NATO弾の初速が930m/s、マズルエネルギーが約1700ジュール、そのおよそ30倍の威力。21世紀では戦車砲でも1700m/sが限界)


クインは地竜の防御魔法を気にして最大初速で撃ったようだが、威力がありすぎたようだ。それでも、戦闘AIによって完璧に計算された射撃は地竜一体に1発づつしか撃っていなかった。


「流石に人は殺したらね...こんな理不尽未来技術に殺されるとか可哀想だし」


『はい、船長。人間については腕で強打させて気絶させます』


「なら、いいけど」


ゴム弾とか催涙ガスとか、睡眠弾とか必要なのかもな。


AMSは地竜がやられたことで唖然としている兵士達を片っ端からぶん殴っていく。ちゃんと計算して急所を狙っているので、敵は一発でノックアウトだ。剣はコイルガンで事前に撃って折ってある。


逃げようとする兵士の先にはAMSやMMSが先回りしているから、他のリークリア兵に情報が伝わるなんてことは無い。3分で70人もいたリークリア兵は皆、気絶して倒れていた。


MMSが道の端っこに並べて寝かせて、睡眠剤を打つ。いろいろこの星の人間についても調査したいから、後で回収して、被験体にするつもりだ。


「この通りに沢山いる...!」

コフィはホログラム上の赤い点がいっぱい集まっているところをさした。赤いのは敵個体だ。


「ほんとだ、主力部隊かな」

『はい、司令官らしき人物も確認されていることから本部だと考えられます』


地竜が60騎に歩兵が500名ほどいる。かなり多そうだ。


「空爆できたら一網打尽なんだけどなあ」

「殺しちゃだめって自分で言ってたじゃん...」


爆撃機や戦闘機なんていったものはレシピには無い。そもそも大気圏内で戦闘が起こることは稀だし、軌道爆撃艦で吹き飛ばせばいいからだ。


「いや、うん、そうだね。クイン、全員捕虜にできる?」

『はい、地竜の火球攻撃を除けば脅威に値しません、制圧を開始します』


味方を現す青アイコンが集合し、リークリア本隊に向けて動き始めた。




☆☆☆


(side 師団長)


第7機動師団は着々と敵兵を排除しソルトを制圧しつつあった。


「お、俺はただ、落ちていたものを取っただけです!」

「ちっ、俺は蛮族を調教したでけでっせ。何が悪いんですか?」


軍隊である以上、戦地で略奪や強姦が発生するのは仕方がないものなのかもしれない。それでも俺はそのようなことを許すつもりはなかった。


「貴様らがやってることはな、盗賊と同じことなんだよお!勝手にリークリアの名を汚すな!そのような行為は万死に値する!」


陛下から賜ったこの軍、そして名、それを一端の兵士の独行で汚されてしまっては、師団長として陛下に向ける顔がない。


「ひっ」

「で、ですが!」


「せめてもの酌量だ、汚れるのは俺の手だけでいい。死ね!」


「ゔっ」

「ま、まってく」


既にロープで縛られていた2人はなすすべもなく首を切断された。


「全く、ゴミどもが...。見せしめとして吊るしておけ!」


「は!」


ペルラシオへの侵攻、はっきり言って俺は乗り気じゃあなかった。元々は一つの国だったんだ、親族や友達も多く住んでいた。


だが、陛下がお決めになったことだ。文句は言えない。


それならせめても、占領地の民を貶すような真似はしないと決めた。自分の罪悪感を埋めるためのことなのかもしれない。罪滅ぼしのつもりになっているだけかもしれない。


でも、師団内のクズどもを合法的に掃除できるのはいい機会だった。最近は腐敗がひどい師団もあるという、そんなふうにはなりたくなかった。


「きょ、巨人だ!」

「ぐふぇっ」


「何事だ!?」


隊列の先頭で人がぶっ飛ぶのが見えた。馬鹿みたいな速度で人よりはふた周りも多きい鋼鉄の巨人達が兵士をぶん殴っていた。


「て、敵襲かと...」


巨人達は次々と兵士をぶっ倒していた。


「あんな巨人がペルラシオにいるなど聞いた事ないぞ...」

「しかし、現にそこにいるのですよ」

「そうだな...インダクンドが開発と噂されている魔法強化兵か?」

「だとしたらペルラシオがなぜ」

「とにかく、いいから迎撃だ!」


クロスボウ部隊が準備を整え、地竜が前方に布陣する。次の瞬間、視界が真っ赤にそまった。


「「!?」」


70騎もいた地竜は全て地に突っ伏していた。頭部が無くなっていた。


「な、なにが!?」

「地竜がやられただと!?」


「まずいぞ!奴らは遠距離魔法を使えるのかもしっ」


剣を構えようとした俺は何かにぶん殴られた。鋼鉄の巨人が横に立っていたのを見たのを堺に俺は気を失った。



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2024年11月17日 19:00 隔週 日・木 19:00

コスモ・オブ・ドーナツ 波斗 @3710minat

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