歪む煙

柊 こころ

one love


結婚して13年

デキ婚な訳では無いけど

セックスレスが12年と長い。


もう飽き飽きして

セフレを何度か作っては捨ててみて

その繰り返しをする

自傷行為みたいな毎日だった私。


「行ってくるね、まゆ」


「気をつけてね、悠介」


悠介は私の旦那だ。

日常での会話はあるが

セックスでの会話は無い。



なぜセックス出来ないのか?

それは心因性EDだから。

だから本人に問い詰める事も出来ない。

結婚する前から浮気されたりしたから

私もやり返したりしたけど

その結果、ただの仲良し夫婦みたいな形。


謝って土下座しながら泣いた悠介を見て

捨ててはいけないって錯覚も起こしたし

浮気した私もいけないわけで。


どっちもどっちになっていた。




でも、刺激がほしい。


初めて友達に勧められた

マッチングアプリを試した。


ほんの出来心で知り合った

唯という男に

狂わされていった。






「初めまして」

「初めまして!見た目ちょー若いね、唯です」


あまり嬉しくない、褒め言葉。

ぎこちない笑顔のまま

真っ直ぐホテルへ向かう。




事が終わると

唯は子供の様に笑って笑顔になり

「またしたいな、ていうかしようね」


なんて事を言ってきた。


避妊具は付けてくれていた。

念の為に私もピルを飲んでいた。

生理痛が重いのもあったから。



何度も何度も重ねる身体

そしてたまたま同じ煙草。


パーラメントのロング。


「昔は高級煙草だったよね」

なんて話ながら。



悠介と会う時間も大事だし

唯と会う時間も大事にして


私はただのクズだ。




そんなクズにも、やはり

クズにふさわしい事が起こった。



「陽性反応か…」


妊娠検査薬を使った。

ピルを辞めていたのもあったし


何より避妊しなくなった唯。


「中の方が気持ちいいでしょー?」


とんだクズに惚れたクズ女な私だった。




悠介には妊娠した、なんて言えなくて

どうしたら良いかを試す毎日。



でも、もう限界だったのかもしれないね。






仲良しごっこが

悲鳴になる。




もう、いっその事

2つの命を落とそう。



私はマトモでは無い。


惨劇の夜になった。

練炭自殺をして。



後先なんて考えず

私はAIDSにもなっていて

死ぬ事しか頭になく



この世を勝手に去る

クズ女なんだ。





でも、悠介は

この唯との関係を知っていたんだ。


その理由は簡単で

2人は

血の繋がってない兄弟で



情報を交換していた。


なんて惨めな私でしょう?


さっさと唯のクズっぷりに

気づけば良かったし

悠介に言えば良かったのに


この世を去ってしまった。



30歳だった。



惰性という言葉は言い訳で

ちゃんと向き合って居なかったのは

私の方だったんだよね。




ごめんなさい。

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歪む煙 柊 こころ @viola666

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