第10話 魔王は右腕をもがれた

「ガビエルがヤラレタ……」


 青天の霹靂とはまさにこのことであった。兄弟の様に過ごしていたガビエルが死んだというのだ。


 私はブリエル。魔王城の結界維持を任されている唯一の魔王様腹心だ。


 はっきり言って私や腹心らは人類を圧倒するような力は無い。我が君が魔王になれた理由もインキュバス達の人海戦術の賜物である。


 私は大至急、下々な奴らと魔王様で会議を行う事とした。



        ◇



 通夜ムードだった。


 魔王様が重い口を開く。


「ガビエルは今際の際、なんと言っておったのだ……?」


「『我が主人、魔王様はインキュバスの中で一番聡明なお方だ。時期に貴様らを始末しにくるだろう……』と言っていた様です」


「……そうか」


 再び長い沈黙がこの場を支配した。


 数刻した後、一人の悪魔が口を開いた。


「あたし、ガビエルの仇討てるかもよ。ほらだって、ラフィはサキュバスだもん!」


 彼女は我らインキュバスと親戚に当たるサキュバスである。美少女が苦手な魔王様が唯一お気に召した方でもある。


「ラフィがユウキ•タケウチの首を取ると? 大見切りもいいとこだ。フン、勝手にしろ」


 こんなのでも美少女嫌いな魔王様の最大限なコミュニケーションである。彼女はそれを分かってるのか、『うん! ラフィ頑張る!』と元気な返事で返していた。


 こうしてはおられない。私も何か打倒ユウキのアイデアを……


 いや、それより確実な方法がある。寿命が来るのを待つ方法だ。


「我が左腕ブリエルは妙案がございます」



         ◇



「次に狙われるのは現状唯一結界の維持を任されているこの私ブリエルでしょう。そこで道連れの呪いです」


「ほう。所謂絶命の縛りとやらだな」


「今から私が死ねば眷属に成り果てた美少女らも同時に死ぬという情報を人類側に流しましょう。奴らの動揺を誘うのです!」


「やってることエグいよねーブリエル!」


 私を殺して美少女犠牲に魔王討伐するか、私を生かして魔王様の政治を維持するか。どちらの地獄を人類は選択するのだろう。


 密かに私は楽しみであった。

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インキュバスから聖女様を守るんだ!〜美少女が絶滅危惧種 片山大雅byまちゃかり @macyakari

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