デパートに登場生首

 俺は生首。その名の通り、頭だけの存在だ。普通の人間だったら生きているわけがない。

 そんなわけで、俺は幽霊とか、怪異って存在なわけだ。

 成仏できずに、あの世へ行けずに、この世をさ迷っている、怪異。


 俺だってそろそろ成仏してもいいかな、と思っていなくもないんだ。けど一人でお行儀よく、誰にも知られず成仏っていうのもしゃくなんだよな。

 怪異っていうのは恐ろしくて、危険な存在じゃないといけない気がする。

 そんな気がする。

 だから誰かを道連れに、俺は成仏するんだ。



 ここは都会のデパート。

 都会のデパートに生首が登場するなんて大騒ぎになるに違いない。

 まずは、おいしそうなものがたくさん売っているデパ地下だな。

 大勢の人間たちがパニックを起こし、逃げまどい、誰か一人くらいは滑って転んでお陀仏するだろう。俺はそれを眺めつつ、うまいもんたらふく食いながら成仏。

 我ながらいい作戦だ。腹も膨れる。

 あ、そうそう、俺は怪異だけど、なぜだか食べることができるんだ。なんでだろうな。まあいいか。どうでもいいことだ。


 まだ開店前か。あそこに警備員がいる。あ、俺に気がついたぞ。こっちに来る。手始めに驚かしてやるか。


「よお警備員さん、驚け生首だ!」


「シャベルアタマ。フシンシャカクニン」


「なんだ、お前人間じゃないのか、ロボット? このデパートはロボット警備員を使ってるのか」


「アナタナンノヨウデスカ」


「俺は生首。人間を道連れに成仏するんだ」


「キケンナシャベルアタマ、ハイジョシマス」


 グシャ。



 終。



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俺は生首 ふさふさしっぽ @69903

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