そうだ、一揆しよう

鳥頭三忘

第1話 はぁー帰りたくねぇー 

東京都都内某大学某キャンパスにて夕刻、久保研究室にて久保教授ゼミ生が愚痴を垂れていた。


「はあー、帰りたくねぇ。

 あんな何もねぇ、ド田舎。」 二坂田吾作は腕を組み頭を抱え机に突っ伏しながら覇気の無い声と伴にため息をつき続ける。


二坂は来年大学五年生で卒業である。

単位を取ってしまった。

ああ、取らなければ良かったとふて腐れながら、後悔を続ける。


「そんなに暗くなるなよ。田舎生活だって捨てたもんじゃないだろ。

 こんなごみごみした堅苦しい、暑苦しい都会よりも自由で開けたのびのびした暮らしじゃねーか。

 好きな事できるじゃん。こっちじゃ、少しの音で近所トラブルの元でもん。

 お前の故郷だってスーパーもないわけじゃないし、通販もあるんだから何が問題なんだよ。」


後輩兼同期の東京生まれ東京育ちのシティーボーイは俺を慰める。

いや、慰めているつもりなんだろうが、死体蹴りをされた気分だ。

(はぁー、この気持ちは言っても伝わんねーよな

 なんせ、都会には都会の悩みがあるんだからなんて分かってる。理解はしてるが納得したくない。

 配達がここなら、明日か遅くとも明後日には届く。俺の故郷じゃ早くても三日からだし

 大音量で音を聞いてもトラブルにはならない。むしろ、クマよけの効果があるくらいだし。

 でもなー、、人はいないから店なんてそれこそスーパーだけだし

 こっちみたいに歩けば居酒屋だカラオケだマッサージだということもない。

 

 それだけ、山の奥まったところにあるし、仕事も基本的に農業を主とした肉体労働で休みなんて存在しない。

 そのくせ食品だから、人の為になる仕事だから、日本を支えてるからって値上げをできず、貧乏なままだ。)


駄弁っていても解決の糸口にすらない。





ゼミが終わり一人になっても愚痴を垂れ流し続ける。

秋はつるべ落としと言うがまもなく日が完全に落ちる頃


久保教授が彼の肩を叩きながら


「日も落ちたしもう帰りたまえ。

 君は帰る事に決めたんだろう。


 職もきまっているんだし、そんなに悲観すること無いよ。

 さあ、私も帰りたい。出るんだ。」


言葉は優しいが背を押す手は力強く、反論もできない。


はぁーと息を吐き、席を立ち、かばんを持ってドアまで行き、お決まりの挨拶を言おうとしてさらにため息を落とす。


顔を上げ、教授を見ると夕日の光が室内から消え掛けた時


「君も参加するかい。」


その言葉を言われて二十五年。

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