第4話 

「お客様にご連絡いたします。

 お客様のご要望により、今から十五分後に緊急の会議を行います。

 なお、会場は食堂でございます。

 各代表全てのご参加との事ですので

 突然の連絡となりますが、対応よろしくお願いします。」


同じ内容が反芻される。


熊本の上絵が言った通りになった。

嘘は言ってなかったのだとの安心、どうなっているのかの困惑が混ざる。


会議が開催されるのであれば、自分の役割はもう終わりだろう。

伸ばした手を下げ、右を向き自らの県の部屋へと戻った。


ノックをし、扉を開ければ椅子に座る我が県の上絵である時之様、傍らには世話役が控えている。

愚息は未だに戻って来てはいない。



「戻ったか。ご苦労。

 いきなり走らせて悪かったな。

 聞きたい事もあるだろうが、後にしてくれ。

 会議中に教えられる事もある。

 時間ならこの会が終わった後にいくらでも作る。

 だから、今は少し落ち着かせてくれ。

 十分前になったら、会場に向かうぞ。」

そう言うと、背もたれに深くよりかかり上を向く。



「素焼達が無謀な行動に出ませんか。

 時間を与えれば余計に危険では。」

気がかりだったそれだけを伝える。



「問題ない。」

重く言い放つと黙った。






「十分前になりました。」世話役の男が告げる。



「分かった。向かうぞ。

 田吾作、済まないがこれを一緒に持ってきてくれないか。」

杖を手にし、危なっかし気に立ち上がる。



テーブルの上にあるミシンを、持ち

ドアを押え、開きっぱなしにし

自らの脚で杖をついて部屋を出るまで押えながら見守る。。






世話役と共に少し後方から見守りながら会場に向かう。

他の代表らも同じように部屋から出始めてる。

「手を貸しましょうか。

 人が増えてきていますので。

 私が嫌であれば世話役の彼にでも。」



時之様は顔を前を向きながら

「見てて危なっかしいだろうが。

 俺だけの脚で歩く。今だけは歩かねばならない。

 駄目だと思ったら言う。

 それまでは、周りへの気遣いを頼む。」

歩くことだけに集中していた。



食堂までは、無事についた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る