俺の戦いはまだまだ続く。続くったら続く。

 結局、オヤジは(何も注文しないということはできない性分であるから)スモーキーチキンをテイクアウトで買い、俺のアップルパイを食べた。


 話によると、俺の予想通り、早めに仕事が終わり家路を急いでいたら駅前でギャルに捕まったらしい。流れるようにスタバに連行され、新しいフラペチーノを飲んで、次はゲーセンに連れ込まれそうになっていたところでバーガーキングの前を通りかかり、バーガーキングに入って行ったのだとか。


 バーガーキングの吸引力のおかげだな。


「おかえり、あなた。と、奏音かなとくん」

「ただいま。これ、お土産」

「ただいまです!」

「あら、バーガーキング?」

「の、チキンだ。ビールに合いそうだから、買ってみた」

「ちょうど、近所のスーパーでビールフェスタをやっていたわね……」

「そうかそうか。なら、チキンはあとで温め直すとしよう」


 うーん、ふたりの空間。俺の元気な挨拶は聞こえていないようだ。


 いいんですけどね。おふたりにはほどよく、離れないぐらいに、仲良しでいていただいて……(仲良しすぎるのもよくないため)。


「おかえり、パパ!」


 その声はセンパイじゃあないですかぁー!

 ……って、あれ、センパイ、今日はバイトだったんじゃ?


「何?」


 俺が疑いの目を向けていることに気付いたのか、センパイはにらみつけてきた。


 確か、昨日の夜。オヤジが休日出勤の話をしたときに、センパイもバイトだって言っていたような。


「いちゃ悪いみたいな顔してんじゃん」

「そんなことないです。もしかして、センパイ、体調悪いんすか?」

「はあ?」


 いつもよりご機嫌斜めだ。でも、俺も体調が悪いと当たり散らしたくなるからわかる。


「最近、寒暖差も大きいですしね。休めるときに休みましょう」

「元気なんだけど。……それより、パパ!」


 センパイがオヤジにくっつく。なんだか既視感。


「お買い物しに行こうよ! その、チキンに合うビール? は買ってあるわけじゃないんでしょう?」

「ええ、まあ、そうね。お買い物なら、わたしが」

「ええー!? ウチ、服も見に行きたいんだよねー! パパ、新しいワイシャツほしいなって言っていたじゃない? ウチが選んであげるよー」


 オヤジが助けを求めるような目でこちらを見てきた。


 うるせー!

 知らねー!!!!!!!!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

宣誓! 息子の俺、父親を寝取ろうとしている相手と戦い抜くことを誓います! 秋乃晃 @EM_Akino

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画