第6話 <魔力>

 

               (アドルフ•ヒトラー)


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  魔術というものはなんであろうか。

 前世の経験を含めても想像がつく代物ではなかった。

 午前の訓練を終え、飯を食い、午後になった。


 魔術を学ぶ場所は、訓練所のように魔力で満ちていた。


 おそらく魔術担当の教官なのだろうか、ローブを被り派手なネックレスやイヤリングをつけている男が皆に話を始めた。


 「新しい子も来たことですし、改めて話しましょうか。私はカエラスと言います、『魔術師』であり。」


 「古き呼び名では『神の寵愛を受けし者』とも呼ばれております。」


 「魔術というものは、神がさずけた神秘でありこの世の真理そのものです。」


 「その者の思いで術は変わり、千里万別の結果をもたらしてくれるでしょう。」


 「しかし、誰もが使えるわけではありません。魔術が使えるかどうかは、本人の魔力の量、そして知恵の深さできまります。」


 「さしずめ簡単にいうとしたら、魔術に必要なのは『才能』です。」


  「皆、魔術がどれだけ素晴らしいと感じており、学びたいと思っていたとしても、一朝一夕で学べる物というわけではありません。」


 「魔術の訓練を選択する人は大変多いです。そして、自分の才能に気づき挫折しやめていく人も多いです。」


 「それでもなお、魔術の真理を学びたいという者は、私が貴方を魔術師への道へ導いてあげましょう。」


 魔術という者の魅力がすごいのか皆息を飲んで話を聞いている様だった。


 そして俺も魔術に魅せられている感覚に陥った。


 神がもたらしてくれる力、欲しくないわけがないだろう。

 

 カエラスは続けて行った。


 「じゃあ今日の訓練を始めましょうか、魔力を感じ取れる人は僕の所に、感じ取れない人は知覚できるまで頑張りましょう。」


 皆その発言に違和感がないのか、8割はその場に残り、2割は教官の方へ歩いて行った。


 そして俺も教官の方へ歩いて行った。。


 子供達がざわざわと騒いでいた。


 「おい、あいつ魔術訓練きて初日だろ。」


 「魔力がもう感じ取れるなんてありえない。。。」

 

 「どうせ、嘘をついてるだけだよ。」


 所詮ただの妬みだと思い無視をした。


  教官の前についた。


 「普段から魔力を感じ取れるんですか?」

 

 そう言いながら教官が何かをしたのだろうか、周りの魔力が不規則に動いてることを感じた。


 「はい。」


 俺は動いてる魔力につられ目線を動かした。


 「魔術師になるためには、0から1を作り出すこと必要です。それが正に魔力に対する知覚であり、才能が必要だとされる所以です。」

 

 「アルテ君、『魔術の世界』にようこそ。」


 体が熱を帯びていく、才能という言葉が脳に響いてくる。

 味覚で感じ取れるのだとしたら、それはおそらく、砂糖よりも甘く甘美なものであろう。


 だが、忘れてはいけない事実は、俺には魔核があり、それを得た時から魔力を知覚できる様になったということだ。


 俺に才能があるという事実を、俺自身が否定してはいけないだろう。それでも、人よりも何かが優れているということが自分自身を壊すのではないかと思ってしまった。


 才能という不明確なものに惑わされてしまったら、俺はそこで死んでしまうのではないだろうか。


 頭の中で己を戒めるために、意味のない考えがまとわりついてきている。


  今ある事実は、俺には客観的に見て、才能があり、俺はそれに酔っている。。。

 

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