第5話 <派閥>
多くの愚者を友とするより、一人の知者を友とするべきである。
(デモクリトス)
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訓練場に入って最初に感じたのは、鋭い視線だった。
派閥争いの影響なのだろうか。それとも俺が嫌われているのか。
ここにきてからは、ちゃんとした話というものもをサラとしかしたことがなかったので、周りの顔を見た時わからない人の方が多く感じた。
訓練場は十分大きく。66人が全員で使ったとしても十分だろう。
持ち出し厳禁のようだが魔術についての本も置いてある。
そしてここの場所が他と違う1番の特徴は心地良さだろうか。
もちろんこの言葉に比喩などはなく、体が軽くなり、お腹の奥が熱くなり力がみなぎってくる。
皆がこれを感じとっているかはわからないが、魔核の影響で俺が魔力に敏感になってるいるかも知れない。
一番魔力が濃いエリアから男が歩いてくるのが見えた。
「おい、狐やろう。キース様がお前のことを仲間にいれてくれるそうだ。ついてこい。」
腕は細く逃げ足が早そうな、恐らくキースの腰巾着である男が話しかけに来た。
狐やろうという言葉は気になったが、おそらく裏で呼ばれていた名前なんだろうと予想した。
この男の子と早く知らないが、キースという男には覚えがあった。
体力訓練や対人訓練で、好成績を取り何度も紅コインを貰っているのをみたことがある。
おそらく種族は人間、そして、キースという男の周りの人物の様子を伺うに人間しか派閥に入れていないことが分かる。
性格はダンツのように、おそらく傲慢であるとみてとれる。
誰かの下につくことは癪に触るが、派閥に入ることで得られるメリットは今の俺にはよだれが出るほどに美味そうに見える。
そして俺は少し考えた後に返事を返した。
「光栄だよ、よろしくね。」
腰巾着の後ろを歩き、キースとやらの派閥のテリトリーである場所まで進んで行った。
キースという男が喋りかけてくる。
「来たっていうことは、俺たちの仲間になるってことだよな?」
体格は大きく、威圧感が強い男だと感じた。
少なくとも派閥のリーダーになるにふさわしい実力はあるだろう。
しかし、人数は多く力があるのに本を占拠していない点。
メンバーがこれで全員かわからないが、他の好成績を取る人族がいない点から、頭はそれほど良くなく、人望もない男だと見てとれた。
まぁ馬鹿ほど扱いやすいからありがたいな。
おそらくキースは人族しか仲間に入れない理由は他の種族を嫌っているか、もしくは少数派をあえて省いているか。
まぁ、恐らく前者であると感じた。
そしてアルテはキースに好かれる様に発言をした。
「同じ人族同士で仲間が組めて嬉しいよ!よろしくね。」
キースは驚きながら答えた。
「お前もあの汚ねぇ亜人どもが嫌いなのか?これは愉快だな!何か困ったことがあったら頼ってくれ!」
予想通りの答えつまらないな、つかみは良かったみたいだ。
俺が強くなるまではお山の大将を務めてもらおうか。
俺は軽い会釈をして、ここで訓練をすることにした、体術の型を取り、体を酷使する。
不思議といつもよりキレが出る。これが魔力の効果なのだろうか?
訓練を続けていると、腰巾着の男が静かに喋りかけてきた。
「おい狐やろう、キース様に気に入られたぐらいで調子に乗るなよ!舐めた様な態度を取ったら分かってるだろうな!」
無視するかどうか悩んだが、ここは大人しくしておこうと思った。
「そう見えたならごめん、君も何か困ったらことがあったら俺にいってくれ。」
腰巾着は悪態をついて答えた。
「お前の助けなんかいらねぇよ!」
そう言いながら去っていった。
これ以上長居しても面倒が起きそうなので魔法の本を読んでから帰ろうとしたが、先客がいたのでそのまま帰った。
部屋に戻る途中で亜人達が話しながら歩いているのを目撃した。
人とは違い猫や犬、トカゲや狐の特徴を受け継いでいる者たちだった。
耳や尻尾を触りたいと思った。
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