第4話 <熱望>
成功とは、失敗を重ねても、やる気を失わないでいられる才能である
(ウィンストン•チャーチル)
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体力訓練の日、教官から特別訓練についての話があった。
「10日後に特別訓練を行う。今回の訓練は各々怪異と戦ってもらう。」
説明が足りないのではないかとアルテは思った。
怪奇という存在は知識として持っているが、実際にどのような生物なのか把握することができていなかった。
情報収集と行こうかな。
午後の訓練が終わり自由時間となった。
この施設に来た最初の日に話しかけてくれた女の子が部屋にいた。
ちょうどいいと思った。
「サラ、ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「なにー?」
話しかけられたのが困惑したのか戸惑ったように答えた。
「怪奇と特別訓練について聞きたいんだけど大丈夫かい?」
そういいながら紅コインを一枚渡した。
ここで1ヶ月近く過ごしてわかったことは、ここには派閥があり、コインが外の世界の通貨の様に使われているということだ。
「一枚だけー?まぁいいっか!怪異っていうのはーーーー。」
サラが言うには、怪異というのはある程度の知性を持つ生物の負の感情が生み出す集合体のような者といっていた。
見た目は黒い靄が掛かっており人の形を取る、黒い靄が晴れて人の形をくっきり取る怪異ほど強くなるようだ。
人を殺せば殺すほど靄は晴れていく、そして知能も人に近づいていく、怪異を専門に倒す人が外にいると聞いたが、この施設で集めた情報によるとおそらく俺たちは暗殺者になるために育てられている、怪異を倒すための訓練は果たして必要なのだろうかと気になった。
そして特別訓練では少なくとも10~50%近くの者が亡くなると聞いた、生き残ったもの達は力を得て、死んだ者たちは補充される。いつも亡くなるのは補充されている者達と下位の怠けている者たちのようで、この施設で実力が上位とされる者たちが死ぬことは稀のようだった。
そして施設の人数は、きっかり66人になるように調整されているようだ。
聞けば聞くほど吐きそうになってくる。
死が一歩一歩近づいてくる。
1ヶ月程度死ぬ気で頑張ったがおそらく、今俺は体力という面だけで見ても、この施設の平均ほどしかないだろう。
時間が足りない、基礎訓練だけでどうにかなるのか?、体術で怪異は倒せるのか?、魔術を学んだところで今からじゃ遅いのではないか?。
頭の中で無意味なことを考えてしまう、選択はいつでも一つしかない、後退してはいけないと、俺には止まっている時間はないと、どうなるかわからないが魔核を融合できた俺は魔術を人並みに以上に使えるようになるのではないかと。
いま体術を続けても、今から剣術を始めても怪奇というものには到底叶う未来が見えない、ならば、この世の神秘とも言える魔術しかないのではないだろうか。
考えがまとまってきた。本当にそれが正しいかアルテはわからなかったが。
進む道しか残っていない。
物思いに耽っているサラはアルテに話してかけてきた。
「だいじょぶー?まだなんか気になることあるの?」
長く考えすぎていたのだろうか、不思議そうに尋ねていた。
「大丈夫、ありがと。」
簡潔にそういいアルテは立ち去っていった。
この施設に来た時から行ったことがない、訓練場にいこうという考えがふと浮かんできた。
なぜ避けてきたのかというと、力が足りなかったからだ。
効率的に訓練することができるが派閥の争いが顕著にでており、絡まれたら面倒くさいことになると確信していたので避けていた。
だか時間がなく、そんなことを言っている暇は俺にはもうない。
初日に命を代償にするという言葉にもう少し引っかかっていれば、情報をしっかりと集めていればよかったと後悔した。
俺はただ焦燥の気持ちもったまま訓練場の中に入って行った。
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