誘女

パンチ太郎

第1話

 衛星放送のとある番組に、父親である、増野忠弘は、応募した。それは、男と女の欲望を観察するという内容であった。

 忠弘は、息子である、恵三に家にいるように伝えた。

 この番組では、主に浮気性の男や、自堕落な男が、相談相手である主に女性が、誘惑の達人である、”誘女”に色仕掛けをさせてそれを楽しむという番組であった。

 修羅場の回数だけで言ったら、数えきれないほどあった。時には男性が暴走してお蔵入りになることもあったが、それでも、この番組は続いていた。

 恵三は緊張していた。もうすぐ女がやってくるからであった。恵三は幼いころに母親を失っていた。そこから父である忠弘が男手一つで育てた。

 恵三はしきりに母親を求めて泣いていたが、どうしようもない事だった。そもそも、忠弘が結婚できたこと自体が奇跡だったので、同じことは2度も起こらなかった。

 早速女がやってきた。ロングの髪の毛に、短パン、Tシャツに薄い羽織を着ていた。

 恵三は女を知らなかった。まともに女を見た。早速女が手を触れてきた。心拍数が上がっていくのが分かる。のども乾燥していった。

「はじめまして、みなみです。」親しげな声をしていた。右上の歯が八重歯だった。そこもチャーミングに思えた。

 女は早速キッチンに向かった。そういう段取りであった。そして、料理が終わると、2人は食事を共にした。

 そして、女は、人差し指を咥え、男の膝に乗った。距離は狭まっていた。

「お兄ちゃん。みなみかわいい?」と耳元でささやいた。男は興奮していた。向かい合っている目の前にの貌は、幼い顔ながらも、大人の雰囲気を醸し出していた。


 その番組を見ているひとりの少年がいた。左腕に何かを巻いていた。

「ゆうたくん。数値を見ていきましょうか。」

「はい。」

 白い壁に、白い照明。そして、白い腕時計のようなものをはめていた。そこには時刻が表示されておらず、心拍数が書いてあった。

 ”76”と言う数字から、あまり変わっていなかった。

 ゆうたくんは年頃の少年であった。しかし、彼には全く情緒的なモノには興味はなかった。正確に言うと、男にも興味ないのであった。

 ゆうたは、不思議であった。どうしてこのようなものに人間は興奮するのか。

 ”猥褻物陳列法”が厳罰化され、少年たちは性的な意欲を亡くしていた。そこでポルノ業界はそこに食い込むため、このような番組を制作しているのである。

「性犯罪がなくなったのはいいことだけど、青少年の性欲がなくなるのはあんまりいことじゃないな」

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誘女 パンチ太郎 @panchitaro

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