地下へ

 目を覚ました時、薄暗く独特の臭いのする部屋で縛られ、身動きが取れないでいた。


「なっ……くそっ!?」


 強く身を揺するが拘束は全く緩む気配がない。


 賞金稼ぎに捕まったのかとも思ったが、明らかに何かがおかしい、何かが違うんだ。


 服は剥ぎ取られ、うつぶせの姿勢であん馬のような器具に縛り付けられている。


 普通に考えて賞金稼ぎがこんな格好で俺を拘束するのはおかしい。


 逃げられないように服を奪うのはまだわかるが、なぜこんな状態で拘束されているんだ?


 動けないなりに自分の身体を確認する。


 ベルトのような物でキツく拘束されてはいるが、新しい傷がつけられた様子はない。


 それどころか顔の髭がが剃られ、髪も短く刈られ、体すら洗われた感じがする。


 一体何故こんな事になっている。


 一体誰がこんな事を?


 いや、誰かはわかる。


 アイツしかいない。


 でも、本当にどうして……


「おはよう?ご機嫌いかがかな?」


 背後から聞こえてきたは予想通りの声だった。


「てめぇこのっ……放しやがれ!!」


 きつく拘束されているせいで、振り返りその正体を確かめる事は出来ないが、この声間違いなくあの男だ。


 僅かに後方から光が差してくる。おそらく後ろに扉があるのだろう。


 パチンと音がして周囲が明るくなった。


 黒ずんだコンクリートが打ちっぱなしされた床と壁、視界に窓は確認できず前方には排水用の穴、おそらくそう大きな部屋ではなさそうだ。


 凄く嫌な空気がする。


「お、お前は一体何なんだよぉおっ!!」


 自分の声が震えている事に嫌でも気づく。


「お仲間だよ」


 奴の声は弾みそうなほどに楽しそうだった。


 顔なんて見えないはずなのに、奴がどんな顔をしているか俺にははっきりわかった。


 いや、嫌だ。そんなのはごめんだ!


「実は貴方のファンでね。貴方の事をもっとよく知りたいんだよ」


「ふ、ふざけんな!男のファンなんていらねぇよ!!」


「いやいや、私も最初は戸惑ったけど試してみると凄くイイ、体にあってね?特に──」


 やめろやめろやめろ。


 それ以上言うな!


「──貴方みたいなタイプは特に好みでもう辛抱たまらないんだ」


 ペタペタと素足で近づく音がする。


「貴方は凄くイイ。顔も体も好みだし、何より貴方の活躍を知って私は目覚めたんだ」


 カチャカチャと音がする。


 それが何の音かなんて考えたくない。


「止めろっ!止めてくれっ!」


「貴方は今まで何人楽しんだんです?一体どうやって?どんな風に?是非色々教えて、試させて欲しいなぁ」


 ふざけんな。


 ふざけるんじゃあない!


 こんな部屋を用意していて、それにこの匂い思い出した。


 思い出したぞ!


 こんなに部屋中にこびり付くほどに!!!


「お前は俺以上に楽しんできたはずだろっ!!」


 ペタンっと奴の手が俺のケツに置かれた。


「頼む。止めてくれぇ、許してくれよぉ」


 奴はとても楽しそうな声で言った。


「楽しませてくださいねっ」






 

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平和喪失刑 名久井悟朗 @gorounakuoi00

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