忍者が好きである。
木山喬鳥
ー 忍者が大好きである ー
忍者が好きなのです。
子どものころからです。
とはいえ、物語で描かれた忍者のことです。
実在した忍者への関心は普通です。
好きと言っても、私が忍者になりたいわけではないし、憧れとも違う感情です。
架空でこしらえた忍者というキャラクターに興味が
特に
ちなみに私の次回作の長編は忍者の話です。
すでに書き終えてあります。
忍者活劇、憧れますねえ。忍法帖とか書きたいです。
〝木山忍法帖〟
……なんか、弱そう。ショボいし。
いやいや、待ってください。
山田風太郎大先生の〝山田忍法帖〟だって名前は相当弱そうだけど、
というか〝山田忍法帖〟なんて言ってる人、いませんし。検索しても出ないです。
『~忍法帖』の〝~〟の部分には作者名ではなく、忍者集団の名称が付くのが普通なのです。甲賀忍法帖とかの。なんだ山田忍法帖て。
話を戻します。
私はなぜ、そんなにも物語の中の忍者が好きなのでしょう。
外見でしょうか?
超人的で特殊な能力?
よく考えると、どれも違いました。
私の興味を惹きつける要素。
忍者の特異性とは────
命をなんとも思ってないこと。
その思考です。
あの人らは、自分の命も他人の命も取り扱いが軽いのです。
忍者は人間の命を、山盛りの〝ちりめんじゃこ〟一匹の命くらいに扱います。
人間にとって、一番大事なもの。
そのたった一つしかない命を軽く扱う。
その精神性が理解できず、それゆえに惹かれるのです。
私は命乞いするタイプなので、生き死にの土壇場では〝
まあ、まだそんな土壇場には
そういう次第で、忍者が理解できないのです。
命の価値といえば、こういう話があります。
先輩が話してくれた明治期に北九州の炭鉱であった話です。
北九州の
荒くれ者の鉱夫たちは、何しろお金を
早く下の坑道に行って石炭のよく採れる割の良い場所を取りたい。
そう考えて朝から
ジブリアニメくらいてんこ盛りで押し合うらしいのです。マジで。
地下の坑道へ降りるための手段は、
アレです。天空の城なにがしとかのアニメで主人公が乗っていた雑な鉄の
安全性なんてありません。すでに満員の籠。乗っている人の上に人が乗ります。マジで。
「満員ちゃッ降りんかぁ!」
※すでに籠は満員です。降りてください。
「なんちか! 乗んなてかッ、
※何を言うのです。乗るなとは、どういうことですか? あなた声が大きいですよ。
と怒号が飛び交います。
押し問答です。さっぱり話になりません。
だから少しぐらい人が籠からはみ出してもそのまま降下するのが日常だったそうです。
で、結果、落ちます。
はみ出した人はすぐに力尽きて、ひんぱんに下の坑道に落ちます。
その時に言うセリフの多くが────
「しもたぁ!」
※失敗しました。
とか、そんな簡単な言葉らしくて。
〝いや、それで済むことかな? 死にますよね? 落ちたら〟
と、その先輩に聞いたものです。
命への執着が軽すぎますよね?
しかし話の舞台が北九州市なので、ありうる事とも思います。
北九州では、親しい人に会った時の
「きさん、なんしょん、くらすぞ?」
※アナタ、なにをしているのですか? 殴りますよ?
そんなです。
なので、しかたないかな? とも思います。
あの地域は、なにかというと〝くらすぞ〟と言います。
会話のなかで、打撃予告をし続ける地域なのですから。人死にも、ままありましょう(偏見です)
そういうわけで、命を軽く扱う者たちについつい
いや現実では命を大切にしないとダメですよ。
それはわかっています。私も本当にはバカではないのです。
架空の人物造形だから
でもですよ。架空の人物を造るときに、サイコパスだとか、頭が完全におかしいとか、乱暴の度合いがレベチすぎるとかではない。
完全に自覚して価値観として、自分の生存の価値を認めない人間の集団。
書くの難しくないですか?
物語の武士にも、そんな要素はあります。
ただし武士には名誉や意地や忠節、義理や人情、栄達や
物語のなかの忍者は、なにもないのです。
名誉とか身分も最初からないし、義理と人情もないし家族も持ち家もないし、出世もしないし、お金も儲かりません。
じゃなんで忍者は、そんな命がけの任務に行って、まんまと死んだりするのか?
まったく意味がわかりません。
時代劇作家の方々は、よく物語として成り立たせたものです。
しかし、さらに考えるに。
むしろ不可解だからこそ、物語性は増すのかもしれません。
その動機を描けた作品には、抜群の吸引力が生まれると思うのです。
気のせいかもしれませんけど。
そんなわけで、私は忍者が好きだ。
という話でした。
忍者が好きである。 木山喬鳥 @0kiyama
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