異世界刀鍛冶の地下大迷宮攻略記 ー刀匠の血を継いだ俺、この世界で最高の名刀を打つー
ピコ丸太郎
プロローグ
『大迷宮都市ユグドラシル』
ダンジョンと称し、壮大な地下大迷宮を有する巨大都市である。
『
それは、この巨大都市の真下、地下に存在する。
別名『世界の中心』。
ここではモンスターや魔獣が発生、生息し、そこに人々は集まりロマンを追い求め、一攫千金、名声を求める。
そんな人々を、人は『
---
ここは『
そこに、1人の青年がつい最近『
「……はぁはぁ、助かりました。こんなところに『
『
本来なら『
洞窟のような空間に『
躯体を真っ二つに破られた死骸、首を落とされた死骸などがあちこちに散乱する。
「……まぁな。そんな事より、まだ油断しない方が良い! まだヤツらはいる――ハァッ!!」
青年の背後を狙った『
粉々になって消滅した『
魔石が転がった音が、薄暗い洞窟を木霊した。
「……あの一撃、早い。そして美しい。あんな剣技見た事ない。……それにあの武器――」
女性はなにやら独り言を呟いているが、それは青年には届いていないようだ。
青年から放たれたひと太刀の鮮やかさに、見惚れながら呆然とする女性の姿。
「おい! 歩けるなら早いうちに出た方がいい。こいつらは仲間を呼ぶ。そうなりゃあ、俺もここで命を落としかねないからな」
青年は横たわる女性に向けてそう言って、今討ち取った『
そして、散乱した『
女性はそんな青年の様子をただ眺めている。
何やら脚を痛めてるようだ。
何度か立とうと試みるが、立てずにうずくまる。
「……すみません……歩けそうにもないです」
女性の声は洞窟を木霊した。
青年は弱々しい声を発した女性に視線を向けて、立てないでいる女性の下に歩き出す。
「…………仕方ない」
と言い、青年は女性を軽々しく肩に担ぎ上げると、『
まるでレスキュー隊が救助するかのような担ぎ方であった。まさに『ファイヤーマンズキャリー』といった姿だ。
「……本当にありがとうございます。一時はどうなるかと……このご恩はきっと――」
「…………」
「あっ、あのっ……さっきの斬撃、それにあなたの武器……そんなの見たこと――」
女性はこれで助かったと安心し切った様子で、声を張り上げて青年に問い出した。
「あまり喋るな! 声に反応してまたモンスターが来る」
「…………すいません。でも……、どう見ても最近『
「いや!……俺はつい最近『
先ほどの青年の斬撃を見てしまうと、まるでつい最近『
それほど目を疑ってしまうほど早くて、鮮やかなひと太刀だったのだ。
怖気つく気配すらも見せず、慣れているような堂々とした立ち振る舞いに驚きを隠せないでいる。
その上、青年からは落ち着いた紳士的と言ってもいいくらいの答えが返ってくるのだ。
「えっ? それって、どういう事ですか? さっきの斬撃と言い――」
「今は『
「かっ、刀鍛冶……ですか?」
「……あぁ」
「鍛治の人って『
鍛治とは、『
だから、地下に潜る事は全く無い。あるとしても、武具のメンテナンスの為に同行する場合だけ。
それも長期に渡って潜る時に限るのだ。
だが、この青年はまるで違う。
「……まぁ。本来ならな」
「……じゃあ、どうして――」
「人には事情ってもんがあるんだよ! それ以上質問続けると、ここに置いてくぞ!?」
「……あわわわっ、すっ、すいません。置いてかないで下さい」
女性はそう言い残して、大人しく青年の肩に担ぎ上げられている。
斬られてはいるが、『
とどめを刺した『
「……あんたのせいで、今日の稼ぎが減った」
担ぎ上げられて天下が逆になる視界の中に、拾わず置き去りにされて行く魔石に気付いた女性が、慌てた様子で脚をバタバタと揺らす。
「はわわわわっ、ほんとごめんなさい!……その分いつかお返しさせて下さい」
「……いやいい! ちなみに、もう出口に着く頃だ。ここからは流石にひとりで帰れるだろ? 回復薬やるから、それで手当てして今日のところは帰るんだな!」
次第に『
今まで薄暗い中で青年の姿をはっきりとは確認出来ていなかったが、夕陽に照らさせた青年の顔ははっきりと眺める事が出来た。
そんな青年の姿を見るなり、女性は目が点となり呆然としている。
黒髪に短髪、良い具合に鍛え上げられた身体に、凛々し過ぎる顔立ち。だが、どこかこの世界の人間とは異なる雰囲気であった。
防具はこれといって軽装。
あまり『
いかにも未熟な駆け出しの『
腰に携えている武器だけが、どこか違和感を感じるのである。普段見掛けるような『ショートソード』『ロングソード』などでは無いようだ。
女性はそれに相まってか、青年の姿を見るなり安堵した様子を浮かべながら、顔を赤く染める。
---
がやがやと、夕暮れのギルド本部は
この時間から夜に掛けて、だだだっ広いロビーでは『
群がった『
生産系や商業系ギルドらによる新製品の情報や、『
抜かりが無い。
その群がる『
その青年に慣れたような口調で話し掛けるのは、『
「お疲れ様です、マサムネさん。今日は確か7階層まで潜るって話でしたよね? 無事にお帰りなされて安心しました!」
猫に似た立ち耳に、八重歯ば目立つ半獣ハーフのミーシャだ。毛色は黒と灰色の間、髪は灰色で首までのショートヘアーである。
無事の帰還を祝うような笑顔を青年に向けている。
「えぇ、そうです。……ミーシャさんこれ、買い取りお願いします」
照れ隠しのようなポーカーフェイスを浮かべて、魔石が入った袋をカウンターの上に置く。
そして、もう慣れたかのような手際の良さで、ミーシャは袋から魔石を取り出して確認を始める。
確認しながら、マサムネに目を向けて切り出す。
ミーシャの手つきはなかなか器用だった。
魔石を確認しながら、チラチラと何度かマサムネに目を向けては、魔石の重量を測ったり、その魔石の重量をメモに記載して行く。
「……では、明日は8階層に行かれるんですか?」
「いえ、明日は本職の方が……」
「あぁ、なるほどですねぇ。うーん、もうそろそろパーティを組むか、サポーターを雇ってみる事を考えてみて下さい。今よりもずっと効率が上がりますから」
言い終えると同時に、マサムネが提出した魔石の確認が終わったらしい。
そして、ミーシャはそれに見合うだけのコインを袋に入れてカウンターに置いた。
「……パーティですか。俺は他人と組むのはあまり向かないと思う。……ところでサポーターって言うのは?」
マサムネがそう言うと、ミーシャがカウンターに置いた袋を受け取り、バックパックに仕舞い込む。
「今日の分の買い取りは……、2万4千コルになります。って、確認しなくても大丈夫ですか?」
「……あぁ、信用してるんで大丈夫です!……で、サポーターと言うのは?」
マサムネからそう聞かれると、ミーシャは慌てながらカウンター下から教本を取り出して、サポーターについて記載されている箇所を指差して音読を始める。
「サポーターと言うのは、『
ミーシャの言うことに、マサムネは聞き耳を立てながら聞いていた。
そんなミーシャの説明を邪魔するかのように、隣の『
『
マサムネはその女性に視線が奪われる。
それに気付いたミーシャがマサムネを呼ぶ。
「……あの、マサムネさん?」
ミーシャの声に反応した瞬間だった。
隣の窓口で口論している女性がマサムネの方に向けて視線を送った。
「…………今、マサムネって言った? マサムネって、あの『
そう言うと、その女性は先ほどまでカウンター窓口で口論していたのを忘れたように、マサムネの方へずかずかと向かって来た。
「なんだ……あんたはさっきの。7階層で死にそうだった――」
マサムネはそう言い捨てて、向かって来た女性に背を向けてミーシャに小声で「ミーシャさんありがとう。また――」と言うなり、ギルド本部を足早にして去って行く。
そんな颯爽としたマサムネの行動を眺めながら、ただ呆然と立ちすくすしか出来ないでいた。
ふと、そわそわしながら、その女性は『
「あっ、あの! さっきの人って『
ミーシャはその言葉に困惑の色を示した顔をしながら、その女性を落ち着かせるように落ち着いた口調で答えた。
「…………マサムネさんと何かありましたか?……私はマサムネさんの『
まるで聖女らしいミーシャの声に反応して、次第に冷静さを取り戻す女性。
再び、ミーシャに問い詰める。
「……何かあったと言うか……助けられたと言うか……。あの人がどこに住んでるか教えて下さい!…………会いたいなぁなんて……あっ、いえ。助けて頂いたお礼がしたくて――」
ミーシャの表情は困惑から一変された。
顔を歪めながら意味深な微笑みとウィンクを見せて、たじたじになって、顔を夕暮れと同じ紅色に頬を染めた女性に優しく答えた。
「マサムネさんは結構、私たちの間で人気があるんですよ!? えーとっ……確か、12地区で鍛治工房を開いてると聞きました。それに明日は『
そう言い終えると、ミーシャは少しだけ首を傾けて、さらに微笑みを作って返した。
「…………ライバルって……!?」
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