第2話
学校をサボったところで暇だな。
良和はゲームでもしようかと思った、その時だった。
太ももにチクッと針で刺すような痛みが走った。
「あ、痛たた」
良和は思わずしゃがみこんだ。
痛みがあるのは、さっき痒かったところだ。
良和はズボンを降ろして見てみた。すると、太ももの中に、黒っぽい筋が走っていた。
「なんだこれ?」
筋の幅は五ミリぐらいか。長さは十センチぐらいだ。
良和はその筋を指で押してみた。
「ギャァァァ」
押すとまたさっき以上の強い痛みが走った。
しかし、その痛みはすぐに収まった。だが、違和感が残っている。太ももの中になにかがあるような異物感だ。
「病院に行ったほうがいいのかな」
良和はちょっと考えたが、痛みは収まったし、とりあえず両親が帰ってきたら相談したらいいかと思った。
結局その日、良和はゲームをして一日過ごした。
その夜、良和は両親が帰ってきた時に、昼間、太ももにおかしな痛みがあったことを話そうと思ったが、学校をサボったことにも話が行きそうだったので、やめることにした。
自室にいると、また山本から電話があった。
「やっぱり寄生虫じゃないかって話だよ」
「それって、お前の友達の姉ちゃんの話か?」
「そうだよ。なんでも、その姉ちゃんは彼氏が釣ってきた魚を食べたとかで、そこの変な寄生虫がいたんじゃないかって言うんだよ」
「へえ、でも、それに喰い殺されるってちょっと考えられないよな」
「まあ、そうなんだけど、でもそれぐらいしか思いつかないってことなんじゃないの」
なんだかよくわからない話である。
「ところでそれはどこの情報だよ?」
「え、それはその中学の友達との共通の友達」
「なんだよそれ」
そんな当てにならない話かよ。
良和はあきれた。警察からの話かと思ったら、友達の友達の話とは。
「だいたい、魚に寄生虫はいるにしても、そんな人を喰い殺すようなのはさすがにいないだろう」
「確かにそうだよな。だったらお前はなんだと思うんだよ?」
「わからないよ。と言うか、なんでそんなにその話に興味を持つんだよ?」
良和はイライラし始めた。
「なんでって言われても、知り合いの姉ちゃんだからだろうな。そいつの家に行った時に何回か顔も見ているし」
「ああ、そういうことか。わかったよ。でも、俺はそういう話はあまり興味ないから、そろそろ切るぞ」
そう言って、良和は電話を切った。
時間を確認するとそろそろ深夜十二時だ。今日は昼近くまで寝ていたのでまったく眠気が来ない。
良和はそのままゲームを始めた。
そして、一時間ぐらい経った時だった。
良和の太ももにまた針で刺されたような痛みが走った。
「痛っ!」
良和は飛び上がった。昼間よりも数倍痛かった。
そして、今度は痛みが治まるどころか、そのまま痛みが太ももから膝の裏へと移動して行く。
良和はさすがにただ事ではないと思い、両親の寝室へ行こうとした。しかし、脚が動かない。
仕方なく大声で助けを求めようとしたが、今度は喉に激しい痛みが来た。
「ウゴッ」
口からスーッと血が流れ出した。痛みは激しいが、声が出ない。
脚の痛みは膝の裏から、さらにふくらはぎへと移っていた。
良和は片手でふくらはぎの痛い部分を押さえると、グニュグニュと動く感触があった。
もう片方の手は喉を押さえていたが、その手にも同じような感触がある。グニュグニュとなにか生き物が動いているようだ。
良和は痛みに悶えた。両親に助けを求めようとしたが、身動きができず、声も出せなかった。
膝裏の痛みは足の裏に移動し、その部分を見ていると、皮膚を突き破ってミミズのようなものが顔を出した。
そのミミズのような生き物は、クネクネと激しく動きながら、次への行き場を求めているようだった。
な、なんだこれは?!
良和はその光景を現実とは思えなかった。
やがて、喉の痛みが鼻の奥へと来たかと思うと、鼻の穴から、足の裏から出てきた生き物と同じものが鼻血とともに飛び出してきた。
そこで良和の意識はなくなった。
翌日、良和の両親がその異変に気づいたのは、夜仕事を終えて帰宅してきてからだった。
良和の遺体は、あちこちが長い針で刺されたような状態で、穴だらけだった。目玉や唇はなくなっているが、着ている衣服は血では汚れているものの、破れたりしている様子はなかった。
そんなことがあって数か月後、良和の両親はショックのあまり、このままこの町に住めないと引っ越した。
父親の趣味である釣りができるような海岸沿いの田舎町であった。
恐怖!謎の寄生虫に喰われる 散々人 @sanzanjin
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