恐怖!謎の寄生虫に喰われる

散々人

第1話

 ミミズを食べた。

 味は特になかった。

 だから、おいしいとかまずいとか、そういう感想はない。


 良和は目が覚めると、ボリボリと腹を掻いた。

 月曜日。

 高校生だから今日は学校なのだが、昨日からサボることに決めていた。

 時計を見ると十一時だった。

 腹が減っていた。

 起き上がると、トイレに行き、キッチンに行った。

 両親はいない。共働きで二人とも良和が学校に行くよりも早く出かけて、日が暮れるまで帰ってくることはない。

 だから、学校をサボっていてもバレることはなかった。


 ポットで湯を沸かし、カップ麺を作った。

 それをズルズルとすする。


 変な夢だったなぁ。

 ミミズを食べるなんて。

 それにしてもやけにリアルだった。


 良和は腹の辺りを擦った。なんだかカップ麺がミミズのように思えたのだ。

 三分の二ぐらい食べたところで、食べるのをやめて捨てることにした。


 部屋に戻り、ベッドに寝転がった。

 スマホでSNSを見た。すると、友達があるニュースについてつぶやいていた。


 怖えよ。

 

 なんだと思い、良和はリンク先を開いた。

 すると、ニュースサイトに行った。


 謎の生き物? 食べられて死亡

 

 とある。

 良和は、内容を読んだ。


 記事によると、会社員の女性が自宅で死んでいた。ただ、その死体がなにかに食べられていて、無残な状態で見つかったということだ。

 死因も食べられたことによるものらしい。


 なんとも不気味であるが、文章だけで読んでいても、いまいち状況がわからない。

 良和のイメージとしては、ライオンとかクマのような猛獣にやられたものだった。

 そして次に浮かんだのは、大蛇のような生き物に丸呑みされたものだが、それだったら死体はないだろう。


 ふーん。


 確かに怖いと言えば怖いが、自分の家にそんな生き物が入ってくるわけもないし、どうでも良いと思った。

 良和の自宅はマンションの八階だ。そんなところに人を食べるような生き物が出るわけがない。


 良和はスマホを置いた。そして、伸びをしもう一度寝ようかと思った。

 ボーっとしていると、腹の辺りがむず痒い。

 良和は腹を掻いた。

 しかし、痒いのは表面ではなく、中のようだ。

 良和は力を入れて、腹を揉むように押した。

 グルグルと腹が鳴る。

 さっき食べたカップ麺が消化不良でも起こしているのかもしれない。

 良和はしばらく腹を揉んだ。そうしていると、痒みは収まってきた。


 そして、ウトウトとまどろんできた。

 すると、今度は太ももの辺りが痒くなる。

 良和は手を伸ばして、太ももを掻いた。しかし、今度も表面ではなく中のようだ。

 だから、力を入れてまた揉むように掻いた。すると、痒みは収まった。


 なんなんだいったい?


 良和はこれまでにあまり経験したことがない感覚に不思議に思ったが、だからと言って、それほど不快と言うほどでもない。

 痛いわけでもない。


 結局、良和はそのまま眠った。


 次に目を覚ましたのは、スマホの音でだった。電話だった。着信音ではなくバイブの音だ。

 画面には友達の山本の名前が出ている。

 時間は昼過ぎだった。


「もしもし」

「ああ、良和か? 今日は学校サボりか?」

「まあな。ところでなに?」

「なにということでもないけど、どうしてるのかと思ってな」

 

 そんなことで電話をしてくるなと思ったが、それは言わなかった。


「昼休みなのか?」

「そうだよ。ところで、あのニュース知ってるか?」

「なに?」

「人が喰い殺されたってやつよ」

「ああ、あれ、知ってるよ。それがどうかしたのか?」


 まったく暇な奴だよ。

 良和はあきれ気味だ。


「あれなんだけど、なんか、身体の中から喰い殺されたみたいなんだよ」

「へえ」

 

 そんなことどうでもいいよ。


「それで、なんでそれがわかったかって言うと、あの被害者が俺の中学の時の友達に姉ちゃんなんだよ」

「へえ、そうだったの」

「なんか、ミミズかウジ虫かそういうものに喰われたんじゃないかって話なんだよ」

「それって、要は寄生虫かなにかってことか?」

「まあ、そういうことなんだと思うよ」


 良和はミミズという言葉に少し興味が出た。

 今朝見た夢を思い出したのだ。


「寄生虫って、そんな種類のやついるのか?」

「さあ、それは俺もわからないけどさ、でも、警察ではそういう風に考えているらしいよ」

「ふーん」

「あ、そろそろ昼休み終わるから切るわ」


 そう言うと、勝手に山本は電話を切った。


「なんなんだよ。気持ち悪い話だけして切りやがった」


 良和はムッとした。

 スマホを置いて、また寝ようかと思ったが、さすがにすっかり目が冴えてしまった。

 ベッドから起き上がり、なんとなく外を眺めた。

 昼過ぎの街は静かだった。

 奇妙な死に方をした人がいたなんて、とても思えないようだ。

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