第13話 コミュ障、その強みを生かす
「『
エルミーとバッツを連れ、夜恵はいつもの森に討伐依頼に来ていた。
さっそくペタウルフが目の前に出てきたのだが、夜恵は周囲の植物から毒を取り出すためにアインツを使用、そして抽出した毒をさらに地面に置き、街で適当に貰った捨てられるだけだったクズ鉄鉱とそこいらから持ってきた木の枝を一緒に置いた。
そしてそれらに足踏みをするのだが、その様はどう見ても男児であった。
『
ふみふみと素材と特性を踏んでいくと、それらはすべて合わさって加工され、小さなナイフへと変わる。
手投げナイフ毒Lv3というアイテムに変わり、夜恵はおもむろにそれをペタウルフへ向かって放り投げた。
山なりに放物線を描くナイフはペタウルフの脳天に刺さり、それに驚いた魔物がじたばたするのだが、数歩進むと同時に泡を吹いてぶっ倒れた。
「おわりっ」
「いやいやいやいや!」
「え? ヤエちゃん、今の何?」
首を傾げる夜恵だが、エルミーとバッツの驚きも当然だろう。
「なんで?」
……一体夜恵は先ほどの話をどう聞いていたのだろうか。
この世界には魔法がある。しかしそれは魔力が何かに変換されて行なわれる術だ。
しかし今の夜恵がやったアインツやアンドゥトロワは魔力を変換ではなく、そのものの物質に対して干渉した。
魔法ではないものを突然見せられ、驚かないはずがないのである。
「あ~……うん」
およそ説明を放棄した、否、面倒になった夜恵はエミリーたちにふり返ることなく、ペタウルフにアインツらをかけ、いつも通り毒の肉と毛皮、その他素材を分けていく。
「ヤエさ~ん、説明を面倒くさがっていますね?」
「ん~……」
エルミーの言うとおりである。
しかし夜恵は口をぎゅっと閉じ、徹底抗戦の構えをとっている。
そんな夜恵が空に顔を上げ、頬を膨らましてじっと見つめてブンブンと胸前で拳を振っている。
……簡単に物質干渉とでも言っておけばいいだろう。
しかし夜恵は横に振り、エルミーたちを指差したのだが、大前提に彼女たちには夜恵以外の声は届かない。
「む~……」
「あのヤエさん? もしかしてまた私たちには聞こえない声と会話中ですか? ころころとか表情が変わって可愛い――ではなく、出来ればこちらとも情報の共有を……」
だが、振り返る夜恵のたっぷり涙を含んだ瞳に、エルミーは口をつぐんだ。
「……ヤエさんズルいですよ」
「む~」
「わかりました、わかりましたって。これ以上聞きませんから機嫌を直してください」
頷く夜恵だったが、思い出したようにペタウルフだった素材に目をやり、空に向かって手を伸ばし、勝利のVサイン。
「ぶいっ」
「……あんなの反則でしょ」
「え、どっち? あの特殊能力? それとも可愛さ?」
「どっちも」
この調子では、エルミーたちの苦悩はまだまだ続きそうである。
コミュ障は異世界で声を聞く 筆々 @koropenn
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