第6話 何も無い合成師

 決死隊の数は三十人ほどだった。

 皆一様に生気のない顔をしている。


 生きて帰れる見込みが無いのだから当然だ。


「こんにちは」

「ちょ! お前! なんで居るんだよ! お前にとっちゃ恨んでも恨みきれない場所だろうが!」


「僕の命を助けてくれた人が望みのない戦いに出るの我慢出来なかったんですよ」

「バカやろう……あれは、そんなんじゃねぇんだよ……それに、ここで死んじまったら同じじゃねぇか」


「ちょっと作戦考えてたんです! みんなと話しさせて貰えませんか?」

「あぁ、構わないぞ、どうせ皆んな死ぬだけだって思ってるからな、少しでも何か出来るなら聞いてくれるだろうよ、おーい隊長! こいつがちょっと話があるってよ!」


 そう呼ばれて大柄な男がこっちを向いた。


「お前……なんでここに居るんだ?」

「その話は俺がした。 なんか作戦があるんだとよ」

「作戦か、突っ込んで死ぬ以外の作戦ならなんでもやって良いぞ。

 それしか出来ねぇと思ってたしな」


 全員を集めて僕の考えていた作戦『皆んなで逃げる』の説明をする。


「おい、本当に俺たちは何もしなくて良いのか?」

「はい、貴方達の代わりを僕の合成したモンスターにやらせます!」

 そう言って、この三ヶ月合成してきたゴブリン達を出す。


「ひゃー凄い数だな」

「はい! 全然大丈夫です! だから安心して逃げてください!」

 嘘である。


 ここまで散々巣を潰してきたからこそ分かる。

 相手は絶望的に数が多い。


 そもそも、三十人ほどが戦ったところでどうにもならないのだ。

 唯一可能性があるとすれば……。


 僕だけだ……。


 合成を使い続けたおかげで、熟練度が上がって射程距離がものすごく伸びている。

 相手が接近してくる前に合成出来るものは合成して、出来るだけ遠距離で仕留めたい。


 少し小高い丘に登る。

 そこから遠くを見下ろす。


「さてと、やるかな」

 不思議と心は冷静だ。

 なんか頭がすごい冴えてる気がする。


 そこから見えるのは、こちらに向かってくるゴブリンの群、群、群。

「まずはこいつらからだな」


『マイト』を身に纏ったゴブリン三十体を突撃させる。

 何匹かを倒した後に爆発する。

 倒せなくても気絶さえしてしまえば、合成して戦力にできる。


 SRピクシーモスは四体に増えてる。

 彼女らが痺れさせたのも次々合成していく。


 減った戦力の補充をその場でしていく。


 UCのゴブリンでも、ゴブリン二体分以上の強さがある。

 体感的には合成した数の五割増しくらいの強さだと思う。


 UCで三体分くらいの強さ。

 Rで十二体、SRだと九十六体って感じだ。


 SRゴブリンリーダーに率いられた主力部隊が出撃する。

 RとUCゴブリンが壁役となり、アーチャー、メイジが主力の舞台だ。


 そこにソルジャーで構成された突撃部隊が相手の陣形を崩していく。

 もの凄い勢いで敵を駆逐していった。


「思ってたより順調だなぁ、これはもしかして勝てるかも?」


 僕自身のレベルも、もの凄い勢いで上がっていくし。


 ー半日後ー

 日が暮れ始めた時にそれは起きた。


「嘘だろ……」


 明らかに体格が違う奴らが現れた。

 ゴブリンが束になっても敵わないオーガと呼ばれる奴らだ。


 それが数えきれないほど居る。


「ゴブリンだけじゃ無かったのかよ……」


 どうする……どうすれば良い?

 …

 …

 …

「これに賭けるしか無い……」

 レベルアップにより手に入れた新たなスキル。


 創神合成・天神地祇

 手持ちの全てのカードを合成して、一時的に神を創り出す。

 神の力はその時使ったカードの総力による


 ほとんどゴブリンしか居ないのに、勝てる程の力を持ったものが現れるのだろうか?

 だけど! まさに今は神に縋るしか方法がない……。

 クソッ!


「『創神合成・天神地祇』発動! 神様! お願いしまぁぁぁす!」


 一瞬世界が暗転した。


『須佐之男命見参』

 僕の元の世界の最強の武神だ!

 勝った! そう確信しながらスキルの反動で僕は意識を失った。


「ん、んん」

 目が覚めるとすっかり夜が更けていた。


「あーあ、あんなに苦労して集めたカードが皆んな無くなっちゃったな」

 目の前ではピクシーモスが何やら争っていた。


「君たちはいっつもそんな事してるんだね」

 二匹が同士討ちで気絶して転がる。


「合成っと……あ! そうだ! お酒奢って貰う約束だった!」


 僕は満月を見上げながら、ゆっくりと歩き出した。



【後書き】

 お読み頂き、ありがとうございます。

 この作品はカクヨムコン参加作品です。

 カクヨムコンは星の獲得が非常に重要になりますので、少しでも入れて頂ければ作者は泣いて喜びます。

 長編も書いているので良ければ見てください!

 https://kakuyomu.jp/works/16818093081579462826


 この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と少しでも思ってくださった方は↓の『☆☆☆』を『★★★』に評価して下さると本当に助かります。

 よろしくお願いします。

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何も合成出来ない合成師、追放されてから本当の能力を知る 山親爺大将 @yamaoyajitaisho

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