第7.5話 五番隊副隊長――八重柔造
「ほんで、何かわかったか?」
部屋の中に無数にあるモニターに顔を照らされた柔造が、モニターに向かって座る白衣を着た男に尋ねた。
男はキーボードを叩く手を止めて、丸椅子を回転させて柔造の方に体を向ける。
男は無造作に伸びたボサボサの髪と髭を撫でながら、しわしわと困ったような表情を浮かべた。
「なーんもわからん。まぁ一つ言えるのは、彼がただの人間じゃないことは間違いないね」
「やっぱりそうなんか……」
モニターに映し出された顔写真と、名前や生年月日、そのほかの基本情報を二人は見る。
男はマウスを操作して画面を切り替えた。
何やら数値が映し出されるが、医学に疎い柔造には内容は理解できない。
「半分は人間の血液成分で間違いないんだけど、もう半分は僕らの持つデータのいずれとも一致しない。だからこれ以上調べようがない」
「未知の半魔、か……」
「今のところわかってる情報も、怪我の治りが異常に早いってことと、麗隊長の変身時間が長くなるってことくらいだしね。それは半魔なら出てきそうな平凡な特徴でしかない」
最近自分の所属する部隊に入ってきた新人、石原蓮。
彼はただの人ではないと、検査の結果わかった。
しかし彼の今までの言動から察するに、彼自身もそのことに気づいていないのではないか、と言うのが柔造の見立てであった。
「今のところ怪しい行動は見られん。このまま俺が監視を続ける」
「上には報告しなくていいの?」
「当然や。まだわかっとらんことだらけやし、伝えたらおそらく上は何としてでも蓮を武器にしようとするやろうからな」
「そうだね……。今はまだ黙っておこう。彼自身が交渉材料として彼を守れるくらいにまで君が見ていてあげた方がいい」
「はぁ……。なんで俺んとこにはそんな厄介話ばかり舞い込んでくるんや」
「マタイ全体を見ても、君ほどの適任はいないだろうけど、君自身の人柄も面倒ごとを吸い寄せてると思うけどね」
柔造は男の座る椅子の脚をガシッと蹴った。
蹴られた勢いに任せて回転する男はバカにするように笑った。
「あいつらはあいつらでなんか仲悪いし、もうハゲてまいそうや」
柔造はそう言って頭をさすり、モニターと男に背を向けた。
「あ、明日は君んとこに顔出すから、よろしくね〜」
「邪魔せんようにしてくれよ」
「大丈夫大丈夫」
笑う男は完全にマッドサイエンティストだが。
柔造は残っていた書類のことを思い出し、頭を悩ませながら部屋を後にした。
魔生物対策本部討伐課五番隊――石原蓮はヒーローになる 遠坂 青 @s4xt
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