第10話

 突然に現れた少女の春がいなくなり、俺はエリに聞いてみた。


「もしダンジョンを公開したら、ああいう子供が入ってくる危険性はあるのかな?」


 エリは首を傾げる。何も問題などないと言いたげでもあった。


「それは、モンスターとの関係性を危険視しているのでしょうか」

「さっきは非公開のままのほうがいいって言ってたじゃないか」

「その通りです。私の考えは今でも変わりはありません。モンスターのマニュアルを差し上げるので、こちらをお読みください」


 エリはどこからともなく一枚の紙を差し出した。A4くらいの大きなサイズの紙だった。そこに、モンスターの説明書が書かれていた。俺はさっと目を通すが、種類などは書かれておらず、ステータスの項目に注意点が書かれていた。気になったのは『やる気』と『生意気』という項目だった。他にも『レベル』『力』『体力』『魔力』とあったのだが、やる気と生意気という言葉はモンスターにどのような仕組みがあるのか気になったのだ。やる気の補足を読んでみる。


 やる気は戦闘や仕事、クラスチェンジにおいて影響を及ぼし、高ければ高いほど、戦闘に強くなるが、一概に言えることではない。

 一方で生意気は、戦闘や仕事、クラスチェンジに影響を及ぼすが、高ければ高いほど恐怖心がなくなる。また高いと高いなりに弊害もある。


「大雑把だな」


 俺は紙を読んで感想を呟いた。


「そちらに書かれているのは詳細ではありません。私の口から詳細を述べるようにプログラムされていませんので井上さん、ご自身でお調べください」

「はああ、そんな法則性って言うのか。俺そういうの得意じゃないんだよな」


 俺はそう言って、ダンジョンのほうに足を踏み出した。振り返り、エリに念を入れる。


「誰かが来ても穏便に頼むぞ」

「承知しました」


 エリを置いて俺はダンジョン内に入っていった。真っ白部屋に立つと、コントローラーを召喚し、ショップからモンスターを選択した。


 モンスターを次の二つからお選びください。


 ゴブリン

 グレーウルフ


 俺は拍子抜けした。たかだか二つの中からしか、モンスターを選べないのか。俺はとりあえずゴブリンを選択してみた。10mp消費し、残り990mpになる。緑色の体長1.5mほどの人型のモンスターが目の前に現れる。手足は短く、頭は上に尖っていた。耳は魔女のように鋭角で、鼻は逆に潰れていた。ショップから離れ、ショップの上にあるステータスを覗くと、ゴブリンの項目が浮かんでいる。


 ゴブリン


 レベル 1

 力  2

 体力 10

 魔力 5


 やる気 0

 生意気 5


 俺はステータスを見てこんなものかと思ったが、始めだから仕方のないかもしれない。もう一匹のグレーウルフもショップからモンスターに飛び、召喚してみた。目の前に、紺色の狼が出現したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

荒廃した世界で、ダンジョンマスターやることにしました。 みやもとはるき @fox9378

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ