第8話

 「そんなに畏まらなくていいですよ」


神宮司は椅子に座ったまま笑顔で話しかけた


 「ではお言葉に甘えさせてもらうとしよう

単刀直入に言う、橙悟を攻略局に入れるのはやめてくれ」


 青山は頭を下げて神宮司の言葉を待っていた

 その様子を見ていた神宮司は少し何かを考えた後、口を開き始めた


 「なぜ橙悟くんを攻略局に入れるのを反対してるのでしょうか?」


 青山はそんなわかりきったことを…と考えたがすぐに答えた


 「貴方は知らないかもしれないが一年ほど前に出来たBクラスダンジョンで攻略局の大半が殉職しました、そんな所に橙悟が行けば死んでしまうだろう」


 「大丈夫ですよ、強くなるまで僕が育てますから」


 しばらく話は平行線をたどり、青山は腹が立ったのか声を荒げた


 「あなたは橙悟が強くなるまでと言いましたが、彼が攻略局に入って生き残れるほど強くはなれません!」


 その言葉を聞いた神宮司は声をあげて笑い始めた


 「何がおかしい!」


 青山は椅子から立ち、机を叩いたがそんな様子見てもしばらく神宮司は笑い質問に答えた


 「失礼、あまりに面白かったもので」


 「何がおかしい!人をバカにするのも」


 青山が言葉を言い切る前に神宮司は言葉を被せた


 「彼は弱くなんかありませんよ、いやがないんです」

 

 「どういうことだ?」


 「まぁこの話は置いといて彼が実力を発揮出来ていない理由なら見当がついてますよ」


 さっきからこの男は何を言っているんだ?

橙悟が弱いはずがない?実力を発揮出来ていない理由?だめだ考えてもわからない


 「その理由を教えてくれ」


 「いいですよ、理由は様々ありますが…

まず魔法出力を強くする方法は筋肉と同じで魔力回路を壊して強くする所から始まるのはご存知ですね?」


 「それくらいはしってるさ」


 「橙悟くんは元々の出力はかなり高いですが栄養が足りていないせいで魔力回路が壊れる前に彼の体力がなくなります、もし回路が壊れたとしても栄養が足りていないので強くはならないでしょう」


 「栄養が足りていない?」


 「気づきませんでしたか?彼、大きめな制服で隠しているだけでだいぶ痩せていますよ」


 火宮家が橙悟を冷遇していることはわかっていたが…ご飯も食べさせてもらえないほどとは思わなかった、気づいてやれなくてすまない橙悟…


「話を続けますね、さっきも言った通り橙悟くんは体力が出力に追いついていない状況ですが、出力自体は高いので体力が無くなる前に一気に魔法を打てばCクラスまでは倒せるはずです、Cクラスモンスターの魔石なら10万ぐらいで売れるでしょう」


 「そんなことしたら打った後は動けなくなるだろう」


 こいつは何を考えているんだ?ダンジョンで動けなくなったりすれば命の危険があるというのに無責任なことをほざきやがって


 「そこは貴方が見守っているので大丈夫でしょう?」


 「何故部外者がその事を知っている?」


 青山は声を荒げて神宮司に詰め寄った


「僕の職業の事忘れていませんか?誰がいつダンジョンに行ったのかなんて履歴を見ればわかりますよ」


 神宮司は「そんなことより」と話を続けた


 「出力を調整すればCランクはいきませんがDランクぐらいなら歩けるぐらいの体力は残せるでしょう」


 「何が言いたい?」


 「貴方、橙悟くんを怪我させないために雑魚としか戦わせてませんね?」


 「生徒の怪我を防ぐのも教師の役目でしょう!」


 「ここ冒険者養成学校ですよね?怪我なんて百も承知じゃないですか?」


 「そんなことわかっている!でもあいつを怪我なんてさせたくないんだ…死ぬ確率がほとんどの攻略局なんてもってのほかだ!」


 神宮司は笑顔を顔から消して真剣な表情で尋ねた


 「それは、貴方が橙悟くんと弟さんを重ねているからですか」


 


 


 

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落ちこぼれの俺、幼馴染に彼氏が出来て失うものがなくなる @tjmgw

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