柚餅子製作記
大甘桂箜
たかが柚餅子、されど……
くるみ柚餅子はお好きですか?
私は大好きです。
もちもちしたお餅だけでも甘くて美味しいのですが、くるみが入っているので食感が変わり、餅の甘さにくるみの風味が加わってまろやかな味わいが広がります。
一個でも腹持ちの良い柚餅子は、暑さも落ち着いてお腹が空くと体温が下がるような気になる今日この頃に、売っていると何となく手を伸ばして買い物かごに入れたくなる存在です。
ちょっとした理由から、その柚餅子を作ることになった顛末をここに記します。
まず、これは拙作『偏食家、塩大福はコーヒーと』というエッセイの『第114話 柚餅子』での後日談を別作品にするにあたり、当該話回をこちらにも再掲載します。
既にお読みいただいている方は前半部分はスクロールしていただいて構いません。
予めご了承ください。
以下、『第114話 柚餅子』1108文字、再掲載分です。
夏前に買ったミックスナッツが賞味期限切れになっていました。
シリアルバーを作るために買ったのですが、猛暑だったので製作は中断し、数ヶ月手付かずで冷蔵後の中に放置していました。
まだ期限一ヶ月くらいしか過ぎてないし、変な匂いも見た目もしてないので使うことにしました。
まずはシリアルバーを作ったですが、それでもまだミックスナッツは残っているので、家にある材料でできる料理をネットで調べました。
用意するものは、白玉粉、素焚糖、お湯、ミックスナッツ、醤油、片栗粉です。
1.ミックスナッツを中火で1〜2分空炒りし
ます。
皿にあけて、粗熱が取れたらざっくり刻
みます。
2.耐熱ボウルに白玉粉、素焚糖を入れてよ
く混ぜ、ぬるま湯を2〜3回くらいに分け
て注いで混ぜ合わせ、最後に醤油も入れ
て混ぜます。
3.バットに片栗粉をまぶします。
4.ボウルにラップをして600wで2分レンチ
ンします。
終わったら一度取り出してよくかき混ぜ
ます。
再度ラップをして今度は1分30秒。終わっ
たら取り出して、1.を加えて混ぜ合わ
せます。
そしてまたラップをして1分30秒。
5.バットに移し替えて、片栗粉を満遍なく
塗して、粗熱が取れたらお好みのサイズ
に切り分けます。
ミックスナッツ
最初に申し上げますが、今回は失敗です。
3.の工程の時からほぼ混ぜ合わせることができませんでした。
少しでも冷めるとヘラにまとわりつくし、ゴムみたいに弾力があるので、よくかき混ぜるなんてとてもできませんでした。
食べるとやっぱり硬い。
ゴムを噛んでいるような食感です。
ですが、噛んでいるうちに素焚糖の甘さとアーモンドの香ばしさやカシューナッツのまろやかさ、胡桃の風味がしてきて、洋風の柚餅子みたいでした。
そう感じるまで、顎が疲れるくらい噛みましたけど。
これはとてもじゃないけど人様に出せるものではないと思い、自分で食べることにしましたが、果たして食べきれるか不安です。
久し振りに負の遺産を作り出してしまいました。
今更気づいたのですが、今回は初めて作るので、ネットで調べた分量の半量で作りました。
それなのに、全量のレンチン時間でかけてしまったので、必要以上に加熱が進み弾性が出てしまったのかもしれません。
次回はこの失敗を踏まえて……と思うのですが、その前にまずは今作を片付けないといけません。
どうしたもんかと悩ましいところです。
*
白玉粉 : 50g (全量 : 100g)
素焚糖 : 50g(全量 : 100g)
お湯 : 65ml (全量 : 130ml)
醤油 : 小さじ1(全量 : 大さじ1/2)
ミックスナッツ : 大さじ1
片栗粉 : 適宜
初めて作る料理は変にアレンジせず、まずはネットのレシピ通りに作ることを強くお勧めします。
以上、『第114話 柚餅子』でした。
この後、時間が経てば経つ程硬くなっていった柚餅子を再度レンチンして、口の中を火傷しそうになりながら何とか食べきりました。
食感は、味覚のように一番最初にスポットライトが当たるようなことはあまりありませんが、食事においては大事な一要因であるとまざまざと再認しました。
そしてその硬いくせに粘りのある餅のせいで、後片付けも耐熱ボウルやヘラにもこびりついて落とすのに一苦労しました。
ですが、がしがしと餅を削ぎ落としながら、
「絶対次は成功させて、他人に食べさせて美味しいと言わせたい」
と、なぜか自尊心と変な自己顕示欲に着火してしまったのです。
折しも10月の三連休だったので、次の日にリベンジを誓いました。
用意するものは、昨日と同じです。
工程もほぼ同じですが、違う所は【】で記しています。
1.ミックスナッツを中火で1〜2分空炒りし
ます。
皿にあけて、粗熱が取れたらざっくり刻
みます。
2.耐熱ボウルに白玉粉【もし固まっている
白玉粉なら最初に指で潰すか、スプーン
の裏で押して粉々にしておくと混ぜやす
いです】、
素焚糖を入れてよく混ぜ、ぬるま湯を2〜
3回くらいに分けて注いで混ぜ合わせ、最
後に醤油も入れて混ぜます。
3.バットに片栗粉をまぶします。
4.ボウルにラップをして【500wで1分】レ
ンチンします。
終わったら一度取り出してよくかき混ぜ
ます。
【固まっている部分と液体のままの部分
がありますので、ここでよく混ぜておき
ます】
再度ラップをして今度は【40秒】。終わ
ったら取り出して、1.を加えて混ぜ合
わせます。
そしてまたラップをして【30秒】。
5.バットに移し替えて、片栗粉を満遍なく
塗して、粗熱が取れたらお好みのサイズ
に切り分けます。
*
白玉粉 : 50g
素焚糖 : 50g
お湯 : 65ml
醤油 : 大さじ1/2
ミックスナッツ : 大さじ1
片栗粉 : 適宜
粗熱が取れてからナイフで切れ目を入れたのですが、ぷりんと刃先が入り、簡単に切ることができました。
味見のために端の一切れを摘んでみると、バター餅のような触り心地でくにゃりと曲がります。
食べると、市販のくるみ柚餅子よりも柔らかめで、むちむちした甘じょっぱいお餅の中に三種のナッツの風味が効いてとても美味しいです。
家族も美味しいと食べ進んでいました。
勝った、と思いました。
昨日の自分に勝ちました。
昨日の失敗の原因はわかっていましたので、レンチン時間を注意すればいいだけのことでした。
初めて作る料理なのに、勝手にアレンジして細部の工程の確認を怠った詰めの甘さが昨日の失敗に繋がったのです。
『第114話』の最後にも書きましたが、
「初めて作る料理は変にアレンジせず、まずはネットのレシピ通りに作ること」
に、限ると思います。
ケチって半量にしたのに結局はレシピ通りの分量を使うことになりましたので、最初は倣って(真似る)習う(覚える、身につける)のが一番の近道なのかもしれません。
同じエッセイの中で別の回に書けばいいと思われるかもしれませんが、どうしても一貫して書き上げたくてこういう形を取りました。
こうして再挑戦して別作品にまで仕上げたのは、失敗して悔しい思いをして自尊心が萎んだので、二度目は成功させて自尊心を取り戻し、自分だけじゃなく他の人にも食べてもらって賞賛されたいという自己顕示欲からです。
何て浅ましい欲に火がついてしまったのかと、書いておきながら身震いします。
ですが、私自身としては、再挑戦が成功したことと一作品書き上げたことで、ある種の浄化ができたような気がします。
いわゆるカタルシスというものかもしれません。
カタルシス効果とは、心理学の用語で心の中にある悩みや葛藤をなんらかの方法で表現し、それによって問題が軽減すること、なんだそうです。
悲恋ドラマを観て一緒に泣いたり(涙活)してすっきりするというのも、それにあたるそうです。
方法は様々あると思いますが、できれば他人や周囲に迷惑をかけないような形で発散して、溜まっていたものを解放または浄化できれば、本人にとっても周りにとっても好影響なのではないかと思います。
秋晴れの空のようにすっきりとした気持ちになれたらいいですね。
☆
ここまで長々とくだらない我欲の表出にお付き合いいただいて本当にすみません。
そして、ここまでお読みいただきありがとうございます。
こんなぐだぐたを見せた後でなんですが、もしご興味引かれたのであれば、柚餅子作ってみてください。
美味しいですよ。
END.
柚餅子製作記 大甘桂箜 @moccakrapfen
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