トートロジーが、意味を伴って響く

昨今では小泉進次郎氏が巧みに使いこなす同義語反復ですが(それが政治の世界で適切であるかどうかは別として)、人間の唯一性が崩れた世界では、「私は私だ」が無意味でなくなる場合がある、ということに気づかされました。

人間というのは多面的で、その面には、過去や歴史、一緒に過ごした時間なんかも含まれます。見た目と記憶をコピーした別個体は、結局のところ、似て非なる存在でしかありません。

突如現れた夫とは似て非なる存在を、彼女がどう受け入れて行くのかが、軽妙なやりとりと共に描かれます。それはまた、もういない夫の存在を、夫と一緒に受け止め直す過程でもあるのです(何を言っているのかわからないかもしれませんが、そういうことなのです)。

その他のおすすめレビュー

緑色のドロドロした液体さんの他のおすすめレビュー830