第24話 拠点づくり
その頃、俺達は、天国の階段と名付けた娼館に併設した宿屋に逗留していた。
ネグロの村で手に入れた金貨が2万枚以上あったので、売りに出でいた商人の大きな家を買って、娼館に増築・改築し、ついでに、宿屋も増築したのだ。
この娼館も高級宿屋も俺がオーナーだから、宿泊費なしで、最高級のスィートルームで暮らしている。
もっとも娼館も高級宿屋も、表向きのオーナーは、ジェノサイドスライムのベルドボルグにやらせている。
街にやって来たばかりの新顔が、闇社会の一部である娼館なんか経営したら、地元のギャングの妨害が激しい。殴り込みだけでも毎日何件もあった。
その他にも、放火や、出入り業者への妨害や脅迫、路上で待ち伏せての客への暴行や通行妨害、娼婦たちへの嫌がらせや脅迫、数え上げるときりがないほどの妨害があったが、数日で無くなった。何百体もいるベルドボルグの分身達が、この街の裏社会を制圧したからだ。
娼館の経営は、ネグロの村で奴隷を解放したときに、「奴隷に戻してほしいわ」と言ってきた気の強い金髪美女のキャサリンに丸投げした。
娼館をつくると決めたときに、キャサリンの身の上話を聞いた。
「私は伯爵家の娘として生まれました。とはいえ正室の子ではなく、母上が田舎の百姓の娘だったため屋敷では使用人からも馬鹿にされていました。そんな私ですから、母の実家を訪問した帰りに、盗賊に襲われて行方不明になっても真剣に捜索されなかったのでしょう。盗賊たちは私を奴隷商に売り、性奴隷として富豪に売り渡された挙句、この村に連れて来られました。ここでご主人様に助けて頂いたのは、きっと神様の思し召しです」と話してくれた。
「しかし、貴族の令嬢なら、家に帰らないといけないだろう?」
「いえ、何年も盗賊の相手をさせられてきたので、もう元には戻れません」と涙を流しながら、気丈にも首を振る。
ネグロの村からモンデールの街までの移動の間に、リーダーシップを発揮していた3人の女を、キャサリンの補佐とすることにして、彼女達の身の上話も聞いた。
3人のうちで最初に聞いたのは、マリアーヌという女だった。
「私は行商人の娘でした。息子ができなかった父は、私に行商を覚えさせて仕事を手伝わせたいというのが口癖でした。それで私が13歳になったとき、見習いとして父と一緒に行商の旅に出ました。父はいつもは単独で馬車を走らせるそうですが、その日は私を連れていたということで、あるキャラバンにお金を払って加えてもらったそうです。そのキャラバンが実は奴隷商と手を組んでいるとは知らずに。3日目の野営地で、突然馬車が襲われました。父は私が地面に寝ずに済むように荷馬車に私専用のハンモックを作ってくれていました。父が私をゆり起こしたとき、父に胸から何かが突き出して。それが剣の先だとわかるのに暫くかかりました。その夜、私は何もかも失って奴隷にされたのです」
ここまで一気に語るとマリアーヌはがっくりと項垂れて泣き出した。
『聞くだけでも涙がこぼれる話だ。目の前で父親がそんな殺され方をするなんて。なんという恐ろしい運命をこの女性は耐えて来たのだろう』
俺は、「分かった、お前の面倒は俺が見る」と言ってマリアーヌを安心させた。
次に話を聞いた女は、リサと言う名前だった。
「私は、洗濯女でした。ある日、川で洗濯をしているところを覆面をした男達に攫われたんです。目隠しをされて連れていかれ、目隠しを外されたのは檻の中でした。手足を縛られたまま、奴隷の首輪を嵌められました。その後は毎晩、いろんな相手の夜伽をさせられる性奴隷の日が続いていました。ある日、目隠しをされてこの村に連れて来られたのです」
「リサも酷い目に合ったんだな」
「こんなところで解放されても、私には行くところがありません。どうぞ、お傍に置いてください」
3番目の女は、ラムラといった。
「私は孤児でした。10歳で孤児院から出されましたが就ける仕事もなく、残飯を漁ってなんとか生き残ろうとしていましたが、あるパン屋の店先に、パンが山盛りに出されているのを見て、誰も見ていないと思って思わず盗んでしまいました。周りから、あのパン屋にだけは手を出すなと言われていたのに。そのすぐ後、パン屋に捕まって奴隷に売られたんですが、同じように奴隷にされた人から、そのパン屋はわざとパンが盗まれるようにしておき、パンを盗んだ子どもを捕まえては奴隷商に売って金を儲けていると聞きました。」
「酷い話だ。なんという極悪人だ。そのパン屋はどこにある?そいつは今も同じことをしているのか?」
ラムラは悲しそうに首を横に振って、
「どこの街かさえ分かりません。私が奴隷に売られたのはまだ小さかった頃ですし、今はこの通り大人になっていますから、何年も前のことです。奴隷商人に連れられて移動しましたから、どこの街だったのかもわかりません。」
そのパン屋のしていることは絶対に止めさせなければならない。いつか、そいつを見つけて止めさせてやる。と俺は心に誓った。
「その後、奴隷商人の檻に入れられて運ばれてこの村に連れて来られました。ここで、また売られると聞いて、もう死のうと思いましたが死ぬ勇気がありませんでした。ご主人様のすることならどのようなことでも受け入れます。ぜひ、ここに置いてください」と、ラムラは床に泣き崩れた。
この4人の女達には、娼館と宿屋の経営者として働いてもらわないといけないのと、ギャングに命を狙われたりする危険に対処できるように、ステータス上昇(極大)、経験値獲得上昇(極大)、超再生(極大)、不老不死化(極大)、全属性耐性(極大)、全属性魔法適正(極大)、身体強化(極大)、気配察知(極大)、危機感知(極大)の魔法陣をつくって身体に貼り付けておいた。その為、4人とも、数日のうちに超人になった。
皇帝像の右腕、女神像の左腕 肩ぐるま @razania6
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。皇帝像の右腕、女神像の左腕の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます