第60話 販売初日
シルフィードの帰宅を待った後、俺たちは早速行動を始めた。
まずは役割分担だ。
シェリアは下ごしらえを担当する。
地上で肉やちょっとした野菜、魚介系の下ごしらえを整えて、後は焼くだけの状態にしたら完成だ。
そしてシルフィードは現地スタッフ。
俺と一緒に販売したり、焼いたりとまあ色々やらせる。
たぶん一番大変になるのはこいつだ。
俺は当然、運搬係。
【神出鬼没】もそこまで万能ではないので何度も往復をしなければいけない。
あらかじめポイントにしていた少し離れの森の中にワープし、地道にクーラーボックスを運び続け、機材のセッティングも行う。
かれこれ1時間近く作業をしただろうか。
そこそこいい感じに準備もできて来たし、そろそろ商売を始めよう。
「よし、シルフィード。バーベキューやるぞ。」
「え!?」
俺の突然のバーベキュー宣言にシルフィードは驚いた表情をするが、別にこれは遊びだとかそういう意味ではない。
乾パン、木の実、携帯食糧を食ってる奴らの目の前で盛大に宴を行い、食欲を掻き立ててやるという作戦だ。
まあ、簡単に言えば飯テロ。
これに耐えられるやつが、果たして何人いるかな。
そして俺たちは、バーベキューを始めた。
わざわざ大勢の冒険者に注目される様に、広場のど真ん中で。
冒険者が好む様な、バカでかい漫画肉を焼き、出来る限り豪快に頬張る。
異変を嗅ぎつけ、「なんだなんだ」と人がどんどん集まって来た。
よしよし、いいぞ。この調子だ。
ゴクリと唾を飲み、恨めしそうにこちらを眺める視線が、いくつも突き刺さる。
強奪されそうで少し怖いが、まあ神出鬼没でいつでも逃げられるから平気だろう。
あっという間に俺たちは、15階層の注目の的になっていた。
よし、ここらでトドメの一撃といこう。
俺は近くに置いていた、クーラーボックスの中から、キンッキンに冷えたビールを取り出し、一気に飲み干した。
「カアーーーー……美味いっ!!やっぱ一日の終わりは、肉とビールだよなあ!」
「そ……そうですねえ。」
わざとらしいセリフだが、効果はあった。
一人の男が、俺の元に近づいて来る。
「な、なあ。俺にも少しだけ分けてくれないか?」
よし、来た!
「ん?いいけど、代わりに何くれんの?」
「は!?金取るのかよ?」
「物々交換でもいいぞ。当たり前だけど、無償で貰えるなんて思うなよ。お前らも、欲しかったらやるけど対価を寄越せ。話しはそれからだ。」
場の空気が一気にざわつく。
パーティメンバーとどうするか話し合っている様子だが、そんな時間は与えない。
少し我慢したらいいだけとバレてしまっては終わりだ。
ここで一気に畳み掛けさせて貰う。
「あーーー!肉が残り1個だ!今日はもうお開きかなーーーー!!」
わざとらしく、周囲に呼びかける様に声を上げる。
全員の視線が俺を捉え、どうするどうすると慌てている中、さっき俺に声をかけたあの男が、再び手を上げた。
「ぶ、物々交換だ。ゴブリンの両耳10セットと交換してくれ!」
「ダメだ。安すぎる。」
1セット500円で5,000円。
まあ決して安くはないし原価は余裕で超えているが、ぼったくらせて貰う。
「な!?たかが肉だろ?十分じゃねえか!」
「高いと思うなら諦めろ。物々交換ってのは双方の納得が大事だろ?」
ぐぬぬぬと男は唸る。
暫く考えた後、苦渋の決断で一つのツノを渡して来た。
「ユニコーンのツノ。レアドロップだ。これなら文句ねえだろ!」
「毎度あり。サービスでビールも付けとくよ。」
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