第59話 再会
1週間後、習慣となった金川・星川とのダンジョン探索を終えて時刻は20時。
日も完全に沈んだ夜の時間に、俺はシルフィードの家へとやって来た。
そこは、俺の家よりも多少は広いが、それでも2人で住むには少し小さな2階建のアパート。
そこの103号室がシルフィード、シェリア兄妹の家であり、本当に金が無くなったんだなと改めて認識した。
インターホンすらなく、俺はそのドアを2回ノックする。
「はーい。」
中から、女性の声。
聞き覚えは当然ある。
何故ならそれは、数ヶ月前に俺を襲ったあの女だから。
ガチャっとドアが開く音と共に顔を見せたのはシェリアだった。
「やっほ。久しぶり。」
「そっちこそ。少し太ったか?」
「うっわ。デリカシーないんだあ。ま、入って入って。特に何もないけどね。」
謹慎前と比べて少しだけおとなしくなった、牙を抜かれた獣の様な姿のシェリアがそこにはいた。
気まずさは特に感じられない。
まあ、俺も特に引き摺る方でもないし、そもそも今回はこっちから協力を頼んでいる。
元はシルフィードだけの予定だったが、この家を使わせて貰うのだからシェリアに話しを通さない訳にもいかない。
シェリアの案内で部屋の中に入って行く。
短い廊下を抜けて、部屋は二つだけ。
リビングと寝室。
寝室はカーテンで区切られているだけで、いくら兄妹といえどこういう状況が長く続くと耐え難いこともあるだろう。
まあ、だから金儲けに利用させて貰うんだが。
「一応言われた物買い揃えたけど、ほんとにいいの?これ買うだけで100万くれるって。50万くらいしかかかってないよ。」
「頭金みたいなもんだよ。一旦これで試して、儲かれば継続。ダメなら打ち切る。」
「でもこれってお肉とかビールでしょ?セーフティゾーンで地上の物を高値で売り捌くってのはいいと思うけど、これって売れるかなあ?」
「ばーか。他の誰かがやってる事しても意味ないだろ。ワープ持ちの俺だからこそできる事をやらないとな。」
だからこその、肉やビールなのだ。
ダンジョンの中というのは魔物しかいない。
まあ、食えない事はないかもしれないが、どんな病気になるかわからないので好んで食べるやつはいないだろう。
だが、ダンジョンに生肉や缶ビールを持ち込めるだろうか?
答えは否。
腐るし、緩いし、炭酸も抜ける。
だが、俺が【神出鬼没】で直送すれば、これらの問題は全てクリア。
セーフティゾーンに未だ存在していない、飲食店もどきが出来るという訳だ。
まあ、資格云々言われると法に触れるかもしれないので、仲間内でバーベキューをしてただけという設定で行くが。
ものは試し。
シルフィードが帰って来たら、早速行動に移そう。
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