第58話 セーフティゾーン
15階層に俺たちが到着してまもなく、金川たちは星川はテントなどの野営器材、金川は薪や木の実などの食料を持って帰って来た。
先に戻って来た星川が、俺を見つけるなり手を振りながら駆け寄って来る。
「おかえり〜。大丈夫だった?」
「割と楽に撒けたよ。それより、その器材ってどうやって手に入れたんだ?」
「ああ、これ?15階層って冒険者は多いけどお店とかはないから物々交換で取引するシステムなんだって。だから魔物の素材幾つかと交換して来た。ここら辺、洞窟とかもなさそうだし、テントはあった方がいいでしょ?」
簡易な寝袋程度の道具は常備しているが、確かにその辺の凸凹した地面の上で寝るよりも、テントで寝た方が楽だ。
森の中とかなら視界が悪くなるので避けたいが、あいにくとここには他の冒険者が多くいるから索敵の目には困らない。
こういう時くらいは、少しくらい楽してもいいかもしれない。
「ああ、そうだな。ありがとう。」
俺は星川にお礼を言った。
「金川、その木の実とかも売ってたのか?」
「いや、これはその辺で採って来たやつ。物々交換って言っても、ダンジョン内ってだけで相場より高いから。余計な物まで買わない方がいいわよ。」
なるほどなるほど。
競合店舗とかがない分、少し高めの価格設定にされているということか。
まあ、冒険者なんて金を稼ぐためにその身を危険に晒す様な連中だ。
もちろん、俺を含めて。
ここで物々交換を望むということは、相当切羽詰まってる連中に違いない。
賢いやつは事前に外から持って来るし、必要ないなら買わなければいい。
それでもここで交換するのは、今この時に必要で、多少高くても仕方ないと考える連中。
少し汚いが、賢い商売。
名目上は物々交換だし、営業許可証なんかも必要ない。
俺も今度来る時は何か売れそうな物でも持って来るか。
そこまで考えた時、俺は閃いてしまった。
とある金儲けの手段を。
仲間が欲しいが……星川と金川はこういうの嫌いそうだな。
斗真は……頼りにならん。
ちょっと小賢しくて多少の悪行には目を潰れそうな人間が好ましいが……
そこまで考えた時、シルフィードと目が合った。
小賢しくて、妹の悪行に目を瞑り続けて、しかも今は少し金に困ってる男が。
しかも少し更生したおかげで俺への罪悪感も多少は芽生えていそうだ。
こいつは使えるな。
俺は迷わずシルフィードを選ぶと、彼の耳元で呟いた。
「シルフィード。ちょっとした金儲けの話しがあるんだが……もちろん乗るよな。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます