第57話 脅威の成長③
雨太の力は、水だ。
それは前に出会った時から判明していたが、肝心なのはその力を雨太自身が使いこなせていないという事。
水のスキルを自在に使えさえすれば、肉体が同じ晴太にも劣らない力を、雨太は発揮できると俺は推測していた。
そして今、あの気弱だった雨太が魔物の群れの前に立ち、戦う姿勢を見せている。
それだけでも大した成長だと思ってしまうが、雨太の成長はその程度では止まってはいなかった。
「スキル【千山万水】」
【千山万水】
それが雨太の持つ水を司るスキルの名称。
足元から溢れ出た水は少しずつその量を増やしていく。
「
水は勢いを増し、まるで津波のような勢いで魔物の群れを正面から押し返した。
これは以前に自分の身を守る為に発動されたあの時のスキルと同一のものだ。
雨太のやつ……遂に自分のものにしたのか。
水流の圧倒的な質量のおかげで、魔物の群れの足は止まるどころか、逆に押し返されている。これはまたとない好機だ!
俺は二人に向かって大声で叫んだ。
「シルフィード!雨太!撤退だ!こっちに来い!」
「「はい!!」」
2人は俺の指示通り、一目散にこちらへ駆け寄って来た。
初めて会った時は、なかなかに面倒なやつらだったが、こうも強くなって指示にも従ってくれるとやりやすい事この上ない。
別に俺が育て上げた訳でもないけど、妙な嬉しさを感じる。
駆け寄って来た二人の肩に手を置く。
魔物は……よし、まだ距離がある。
これならワープに巻き込む心配もない。
「飛ぶぞ。」
【神出鬼没】を発動する。
転移先は、ついさっき金川に渡したナイフの位置だ。
景色が一変する。
森に囲まれた大きな広場に、数多のテント。
冒険者も数多く出歩いていて、まるで地上の露店街と変わらない活気で満ちていた。
「ここが15階層のセーフティゾーンか…」
「凄いですねー。ダンジョンの中とは思えません。」
ダンジョンの中だというのに魔物の姿は一切見られず、冒険者たちが物々交換に情報交換、武器の手入れなどをして思い思いに過ごしている。
さて、俺たちも金川と合流を……
周囲を見渡すがどうにも金川と星川、どちらの姿も見当たらない。
その代わりといってはなんだが、俺が渡したナイフが足元に突き刺さっていた。
これは俺たちが15階層に飛べるように金川が刺していった物だ。
だとするとここから動かない方がいいかもしれない。
野営の準備とかしてるかもしれないし、まあ何にせよ、同じ階層にいるのは確かだ。
その内戻って来るだろう。
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