最終話:アナザー・エピソード

 一人の男性が、ある祠にいた。「いえーい! 祠壊しちゃうよーん!」と頭の悪そうなことを言って、祠をバールで破壊している。

 そこに、白い着物に白いジャケットを羽織った男性と巫女服を着た女性が歩み寄る。


「お主、その祠……壊してしまったのか」

「あーあ、死ぬよ? 君ぃー」


 祠を壊した男性は顔を引き攣らせながら、「は、はぁ? なわけねえだろ」と笑い、去っていく。

 残された二人は、顔を見合わせて笑った。この祠には、別に何も祀られていない。なんとなく、通りがかりでからかってみただけなんだろう。


「おじさん、これからどうするの?」

「祖母の跡を継ぐ」

「おー、いいじゃんいいじゃん」

「それが、これまで悪戯に壊してきた祠の主や奴に喰われた霊に対する罪滅ぼしになるかはわからぬがな」


 巫女服の女性が、彼の脇腹を小突く。「なるよ、私が保証する」と。


「まずは修行からだな」

「もう行くの? こんな夜中に」

「ああ」


 彼が歩き出す。その顔は、晴れやかだった。


「たまに茶化しに行くね」


 その声に振り返り、笑みを向ける。久しぶりに見る彼の笑顔。ようやく、憑き物が取れたんだ。


 良かったわね、レイジくん。


   完

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祠の破壊者レイジ 鴻上ヒロ @asamesikaijumedamayaki

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