第3章 第3話「フードコートの罠と予期せぬ影」
フードコートは、その半円型の設計と、海を望む眺めが売りの人気スポットだった。飲食店が外周に並び、カウンター風の座席やソファ席、小さな子供用の椅子まで完備されている。その中央には仕切り用のガードが設置され、落ち着いた空間が広がっていた。しかし、今やその場所が戦場となりつつある。
「このガードを使えば、安全圏から操作できる。」
優斗は作戦の概要を我如古に伝えた。我如古は警備員たちを左右に分け、「それ」を挟み込む形で動かす準備を進めていた。優斗たち清掃チームは、滑りやすい床を作るためにWAXと洗剤を用意。さらに自洗機を使って均一に塗布する計画だ。
「直接触れるのは絶対に避ける。モップや棒状の道具で押さえ込むんだ。」
我如古の的確な指示が警備員たちに響き渡る。緊張した表情の中にも、統率された動きが見られた。
一方、優斗たち清掃チームも準備を進めていた。優斗はWAXを、島袋は洗剤を撒き、美香は自洗機でそれらを均一に広げる担当だ。
「これ、汚水を回収しちゃったら意味ないですよね。」
美香が確認すると、島袋は「スクイジーは下ろさない。水を広げるだけでいい」と応じた。
「やるしかない。これで動きを封じられるはずだ。」
優斗は自分に言い聞かせるように呟き、作業を続けた。
準備が整い、優斗は我如古に向かって大きく手を振り、合図を送った。我如古は警備員たちに指示を出し、「それ」を滑りやすいエリアへ追いやるべく動き始める。勢いよく押し込まれた「それ」たちは、足元の感覚を失い、次々と滑っていった。
「効いてる!これはいけるぞ!」
優斗が歓声を上げる。
だが、その時だった。突然、フードコートの天井が揺れ、一部のパネルが崩れ落ちた。その音に一同が目を見開く。
「何だ!?天井が落ちたのか?」
我如古が叫ぶ。
天井から落ちてきたのは黒い影だった。動きは速く、異様な存在感を放つ。「それ」の一種であることは一目瞭然だったが、これまでのものとは明らかに違う。
「新しい…いや、もっと強い奴だ。」
優斗は唇を噛みしめた。
その新たな「それ」は、滑りやすい床にも影響されず、堂々とフードコートの中央に立った。周囲の空気が変わり、張り詰めた緊張感が一層高まる。
「これは…まずいぞ。」
我如古が低く呟いた。
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月下の屍宴(げっかのしいん) @zpa
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