第3話 テスト ※句読点なし
始めと言われて子どもたちは問題用紙をめくり始めるが頭から解き始める子も全部軽く目を通す子も得意な問題から始める子もいてしばらくは集中させるために私は黙って教卓の前から見ているが五分もしたら机間巡視をして彼らの手元を見て回り想定通りの早さで解いているかどこでつまずいているかどう粘るのかを観察し彼らの三ヶ月前を思い出して比較してはその変わりようつまりテストに対する向き合い方の変化たとえば開始三十分で解ける問題がなくなり鉛筆を投げ出しテスト終了まで突っ伏して寝ていた子が問題文に線を引いたり空白にメモを取ったり解けない問題に見切りをつけて次に行こうと割り切る時の目つきとかそういう自分の人生を決めてしまう本来避けたいはずのテストでしかもたった三カ月前まではフルボッコにされていたにも関わらず今や気持ちでは負けていないしこの機会を自分のモノにしてやろうという野心溢れる態度に変わっていることに私はいつも胸を打たれる。
『文体の舵をとれ』練習帳 千織 @katokaikou
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