第8話 向日葵 討伐戦 2

俺は、お嬢様が指定した、薄暗い体育倉庫内で向日葵を待っていた、体育館に居るクラスメイト達は、教室に戻り始めていた、体操マットに座ると光に照らされた微細な埃達は、キラキラと宙を舞い、体育倉庫特有の匂いが漂っていた。そして、ドアからヒョッコリと顔を覗かせていたのは、陽だまりの笑顔をした、向日葵の姿だった。

「来ちゃったっ!えへっ」

「おっおう」

 スタスタと近づき俺の隣に座った。作戦とはいえ密室に女の子と二人きりとか緊張するもんだな。さっきまでカビと埃の匂いしか匂わなかったってのに向日葵が来てから…くぅ〜いい匂いがしやがる。

「こんなに…暗くて…狭くて…人気の無い所に…呼び出して…何するのかな?…」

「ちっ近いって向日葵!」

「やっと名前呼んでくれた〜嬉しいっ、これから…向日葵…お•し•お•き…されちゃうのかな?…」

 おいっ!おいっ!ジリジリ近寄ってくるんじゃねぇ!うわっ唇プルプル、゛あー胸元が…胸元から未成熟なちっぱいが…ちっぱいで…ちっぱい…いっぱい…ちっぱい…゛う゛わー

「いいよ…純くん…なら…」

 あれ?これ俺のちっぱいだっけか?いいんだよね…いいんですよねっ…

 「………………ゴクリンコッ………………………………」

「あらっ意外だったわね、てっきり巨乳好きのエロ犬だと思ったのだけれどっ」

 そのお嬢様の声は、脳内に響いた後、バタンッとドアが突然しまったのだ、俺と向日葵は、ドアに目をやる。

「おいっどういう事だよ!これじゃ出れねぇじゃねぇか!」

「吊り橋効果よ、ルダスの特性は、遊びの恋愛、ゲームや映画の様に非現実な危機的状況を二人で打破する事によって一時的に心拍数を上げるのよ後は、貴方次第よ!」

「貴方は、貴方次第よって、恋愛経験皆無の俺に丸投げされたんですけど!」

「何も心拍数を上げる方法は、恋愛感情だけでは、ないわ、人間には、喜怒哀楽、悲喜交々という四文字熟語があるでしょう」

「そんな言われてもよう」

「ラヴポイントが上昇しているよっラヴポイントが上昇しているよっ」

「………ハメたんだ………」

「向日葵…さん…」

「向日葵をハメたんだ!どうせあんたの仲間かなんかがドア閉めたんでしょっ!もうっあんためんどくさいっ!またポイント奪えると思ったのによっ!」

「こんなん知らなぇって!たぶん先生か誰かが閉めちまったんだって!」

 まぁ本当は、知ってるけど。

「そんなの信じられる訳ねぇだろ!さっきから目がエロいんだよ!」

「だっ誰がお前なんかエロい目なんかで見るかよ」

「はぁ?向日葵の胸見てたの気が付かないとでも思ってんの?」

 バレてた…

「ポイントの為だったらキスぐらい、いいかと思ったのによ…まっまさかっ!キス以上をしようと…」

 キスは、良かったんだ…そして、向日葵は、身体を守る様に、両手で両肩を掴んだ。

「誰かー!童貞が御乱心よー!ピーされて!ピーされちゃうー!」

 ん?…俺は、ある違和感に気が付いていた、向日葵がこんな簡単に二度目の正体を表した事、声が所々上擦っている事、ラヴウォッチがポイントの上昇を告げている事、そして向日葵の手が震えている事、俺は、見逃さなかった。そして、俺は、向日葵の震える手を包んだ。

「………………………」

「ギィャー!何気安く触ってんのよ!離せ!マジで叫ぶぞ!」

「お前…怖いんだろ?」

「へっ」

 向日葵は、一瞬虚をつかれたという顔をして顔を逸らした。

「この歳になって暗闇が怖いとかありえないから…」

「こんな暗闇であんま見えなくてもよ、こうしとけば、誰かが居るって実感出来るだろ?まぁ

だからなんだ…俺が近くに居るから安心しろって話だ」

「……ふふっ何それ正義の味方?ガラじゃ無いってのっ」

「うっうるせぇな…俺だってちったぁ気を遣ってんだぜ?」

「わかってるよ…ありがとね、少し気が紛れたよ」

「おっおう、なら良かったけどよ」

「てかさ…最初からごめんね…」

「なんだよいきなり、らしくねぇだろ」

「ふふっ向日葵だって反省する時は、あるよ、怖い時に助けてくれた人を嫌うほど腐ってないよ」

「そっそう?」

「そうだよっ今まで助けてくれる人居なかったし…」

「そうだっ!ネグレクト!大丈夫なのかよ!」

「あーあれね、もう産まれて十六年同じ生活してるからね、両親のあしらい方も知ってんのよ、だから大丈夫、純くんに言ったのは、ただ単に同情を引く為だよ」

「本当に大丈夫なんだな?」

「ふふっ本当にお人好しだね…でも…ありがとね」

「そうか?普通だと思うけどな」

「…もしさ…もう一度…向日葵と…」

 ガチャッと鍵が開く音が倉庫内に響く。

「あれっドア開いたんじゃね?」

 俺は、ドアへと駆け寄り取手に手を掛けた。

「友達になってって言ったら…」

 俺は、振り返り満面の笑顔でこう言った。

「なるかブゥワーカ!」

「へっ⁈」

「俺が何度も同じ手に引っかかるかっての!童貞の純情弄んだ罪は、重めぇんだよ!俺とお前は、敵同士!悔しかったらポイント奪ってみやがれ!」

と俺は、向日葵に、そう言い放ち走り出した。

「…ろす…」

「殺す!」

 向日葵は、罵詈雑言を撒き散らしながら俺を追いかけて回し始めたのだった。

「クソ純!あんたは、絶対、向日葵が殺す!」

「やれるもんならやってみな!へへーん!」

「待て!この粗チン野郎!」

「おい!俺のビッグマグナムに向かってなんて事を!」

「何がビッグマグナムじゃあんたのは、輪ゴム銃で十分じゃ!」

「はぁ?見た事ねぇだろが!」

「見なくても分かるわボケッ」

「ラヴポイントが上昇しているよっラヴポイントが上昇しているよっ」

「まぁ今回は、及第点っいう所ね…まずは、一つ…」

 俺とお嬢様の戦いは、まだまだ続く…

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